第二話 新たな体
改造の説明回です。
なんとか投稿できましたね。
フルマラソン走り切って両足ガクガクな鈴兎です。
今回初参加だったんですがやばいですねアレ、30㎞地点は魔境ですよ。
一応サブフォー目指してたんですが4時間半という結果に終わりました。
次はもっと鍛えてからじゃないと足がもちませんねあれは。
「あ、貴方が……私の製作者……」
「そう、だから私は君の事なら大体分かる。修理した時に魔核も少々弄らせもらったからそれで確信を得たよ」
セフィーナさんという人物が漸く見えてきた気がする。
まず生産組合、これはこの世界の大半の国で認められる冒険者組合、商業組合、生産組合の三大組合の一つで、生産組合は主に魔導器具や武器、防具、生活雑貨に至るまで各部門に分かれて活動している組合のはず。それの魔導部門筆頭取締役員?生産組合名誉会長?魔導人形の生みの親?肩書き多過ぎてもうどれだけ凄いのか分からんわ!
だがそう考えると更に分からなくなる事がある。魔導人形の生みの親という事は魔導人形を最初に作った人と考えるのが妥当であろう。
ではこの人は今一体何歳となるのだ?
魔導人形の始まりは確か500年は遡る筈で、そこから考えるとこの人はエルフの平均寿命を軽く超えている事になる。
長寿と言われるエルフでさえ平均200年で寿命を迎えるのだから。
「この世界には私の知る限り多くの異世界人が来訪してきた。その多くは英雄譚に名を残すような活躍をする者やこの世界の常識を覆すような発明を数多く残す者と様々だった。確か電化製品だったか?この世界には魔法で電気を生み出す事が可能であったが、それを使用した製品より魔力をそのまま使った方が効率が良いと、そちらの方面での発展はあまりしていないから君が一発何かをと期待する気持ちも分かるが、諦めろ。おそらく君の場合なら高位の冒険者を目指した方がまだ希望がある」
「……はい」
流石にここまで言われるだなんて考えてもいなかった。まさか異世界の住人、しかもファンタジーの代表選手であるエルフから電化製品何て言葉を聞く事になろうとは誰が考えたであろう。
この話通りであればこの世界で私は所謂異世界知識チートなるものの実現は不可能に近そうだ。
そしてもう一方の冒険者をしての成り上がり路線、こう言ったものも魔導人形として生まれ特にこれといった力も持たない私には少々厳しいというのも確かなのだろう。
自らの思考によって落ち込むというのも馬鹿な話だが、私はどうやら夢と希望に溢れた異世界生活というものを満喫出来るようにするには数多くの苦難が待ち受けているようだ。
「さてさて、夢の無い話はこれくらいにしてそろそろ私に君の新しい体について説明させてくれないか!これでも魔導人形の第一人者だからね!最新の……と言っても私の独自理論による実験段階のだけど、技術が君にはテンコ盛りなんだよ!」
「は、はぁ……」
今最新のと言った後に小声で何か呟いているようだったが、何かあったのだろうか。
そこはかとなく嫌な予感を感じ取りながらも私自身自分の体については詳しく知りたいのは尤もな事なので黙って話を聞く事にする。
先程見た限りでは所有可能技能数の上限が200になっていることと、『七変加速』が表示されない……つまりは壊れて修復不可能だったのか、と考えられる程度の違いしか見当たらなかった。
それ以外にはセフィーナさんの言うような最新技術がテンコ盛りに使われているようにはとても思えないのだが。
「まずは何処を説明しようかなー、やっぱり体全体からかなー」
自分の技術を説明出来るのが嬉しいのか先程までの雰囲気とは異なり、人差し指で私の各部を指差しながら説明する部分を迷っている。
その姿は何百年も生きる年寄りなどと誰が分かるのであろう詐欺紛いな若い容姿を持ち、美形なエルフの彼女だととても可愛らしくも思える程だった。
そして漸く決まったのか私についての説明が始まる。
「じゃあ取り敢えず体全体についての説明をしよう!まず基本的には元の性能は私が20年前に作ったおかげで良いからあまり大きな変更はない。強いて言えば20年前よりも各部の最適化が進んで魔力循環効率が上がり、それに付随して身体機能が1.2倍程パワーアップ!もう少し上げれると言えば上げれるんだけどそれをしちゃうと全力出した度に軽いメンテナンスをしないと負荷が蓄積しすぎちゃうから却下しました!これはいくら自己修復できる魔導人形と言えど限界があるからね!」
「い、1.2倍ですか……」
何とも簡単なように言ってくれる。これが本物の魔道技師の実力というものか……いや、もしかしたらこの人が凄過ぎるだけなのかも知れないが。
以前の私の性能だってとても良く、恐らく全力で走れば元の世界での短距離選手とタメを張れるくらいには速かった。そんな速度を更に1.2倍にするのだ。末恐ろしい程の技術力だ。
「んでー魔核だけど、これも刻まれてる術式を最適化したおかげで所有可能技能数が増えてるよね。ざっと2倍くらい!凄くない!?特に君の魔核はメリエルによって最上級の素材を使い、君の魂が挿入されることによって本来魔核の保有する魔力貯蔵庫が膨れ上がっているんだ。そこから更に2倍させることが出来るなんて……私って天才っ!」
「あ、はい……そうですね」
なんだかこの人ちょっとおかしい。若干のナルシスト気質も垣間見えるし、私的には必要以上に関わりたくない人に位置付けられそうだ。
それにしてもこの人本当に技術だけは凄いらしい。先程から語っているこの改造結果であるが、『魔道技師Ⅴ』を所有している身からしてもあり得ないと思える。
私には到底実現出来ないものばかりだ。
だが今聞いた話の中に一つ疑問が浮かんでくる。
「所有可能技能数が増えたのは分かります。ですが何故貯蔵魔力量は上がってないのでしょう?」
「……え?」
「え?」
単なる疑問をぶつけただけなのにセフィーナさんは私に向かって何言ってんのこいつ、みたいな表情で呆けていた。訳が分からず私も首を傾げて対応するがどういうことだ。
「増やす必要あるの?」
「えっと……それはどういうことでしょう?」
「君『封印魔法』使えるしいらないじゃん」
「あ、そういうことですか」
「私、対象にとって無駄な機能は付けない主義なの」
成程、この人の言う通りだ。
確かに私には貯蔵魔力なんてあってないようなもの。魔力を封印して大量に所持しておくことでいつでも全力で戦うことが出来る私にとっては確かに飾りのようなものだ。
貯蔵量が増えればわざわざ封印を使用して保存しておく必要は減ることも事実だが、どうせ封印も使うことになることを考えると付ける必要はない。
元の世界でもよくあった。最新機だからと言って無駄な機能を必要以上に増やしユーザーから批判を受けているものが。
「ではでは続きましてー髪ー!いやー元々めっちゃ長くしてたのに半分くらいになっててショックだったよーだから元の長さに植毛し直すと同時に材質も変更!今後切れたりしないようにミスリル製の銀髪!きゃー美しー!更に重さを本来の髪と同等に軽くするために『重力魔法』を『術式魔法』で髪の繊維に刻んでいるから重くない!しかもついでに『耐性魔法』も体全身に刻んでおいたから魔法による全属性耐性上昇!斬撃耐性諸々も上がってるから切れない!こればっかりは大変だったぜい!」
「……はぁ!?いやいやいや、ちょっと!それってどれだけ大変な作業、というよりそんな曲芸紛いの芸当が出来るって意味が分かりません!」
「え?あぁ、だって私天才だからっ!」
「……はぁ」
もう止めよう。この人の言動に驚くのにも疲れた。
私は今説明された髪を触って確かめてみる。
……触り心地は滑らかだけど、何だか見ただけでこれは切れないなと思える気配がしてくる。
体にも術式を刻んでいるといったが何処にもそんな痕はない。もしかしたら内側に刻んでいるのかもしれないな。
それにしてもこんなに細い髪に術式を刻むなんて馬鹿げてるな。
『術式魔法』は私も所有している技能だが、これを簡単に説明するならば魔法陣のようなものだ。
魔法とは本来自身の想像したものを魔力によって発現させる。故に同じような魔法でも個人によって大きさや威力などが少々異なるのだが、この『術式魔法』は魔法陣のような幾何学模様を用いて魔法を発現することにより、個人差の無い術式に伴った魔法を何度も使用することが出来る。
そして術式を物体に刻むことで、魔力を使用時にのみ通して発動させるする発動型術式、魔力を流し続けることで半永久的に発動し続ける永続型術式の二つがあり、今回私に使われているのは後者である。
本来紙媒体に術式は刻んだりするのだが……本当に意味が分からん。
「さてさて続いてはー」
「まだあるんですか!?」
「あるよーまだあるよー」
えっと……いや、もう何も言うまい。さぁ来い!
私は次の説明に対して身構えて聞く。
「右足の事だけど、流石にあれは馬鹿だよね君。自分が崩壊するような限界以上の性能を持たせるなんてさ。そりゃ理論上音速の倍近くは頑張れば出ただろうけどそれだけ、その後を一切考えてない。そりゃあ一種のロマンを追い求めてはいけないとは言わないけど、もう少し頭を使ってほしいね」
「は、はい……」
何だが超怒られ始めたんだけど。
確かに自分でも馬鹿なことをしたとは思っているけど私は間違っていなかったと自己完結したことだ。後から他人にとやかく言われる筋合いはない!
私は私の判断に自信を持ち、説教にめげない心を持って姿勢を正す。
「後悔はしてないって感じかな?まぁ良いよ。それであの右足だけど、一応回収して使える素材がないか確認したところ大部分が酷い損壊をしていたから修復は不可能だったよ。でも安心してほしい、私は天才だ。天才は天才だからこそ天才なのであって、天才に不可能はあんまりない!修復は無理だけど改造はしちゃった、てへっ」
「あ、はい……」
正直この人の実年齢考えると舌を出してそんな可愛娘ぶられても無理すんなって本来は言うべきなのだろうがやっぱり容姿とは偉大である。とてもこの人は様になっている。
しかし途中呆れながら聞いていたが改造とはどうやったのだろうか。
「主な変更点はまずこのように装備型の魔導具にしましたー」
そう言って後ろの方で隠していたのだろう物を私の方へと見えるように持ち上げた。
装備型の魔導具、その正体はあの特徴的な赤い装甲を受け継いでいるような真っ赤なブーツだった。
セフィーナさんからそれを受け取り触ってみると外側はとても硬く、以前の装甲と同程度の強度がありそうで、内側は単なるブーツのように柔らかい。
きっとこれもセフィーナさんの謎技術なんだろうなーとか呆れ交じりに感心していると説明が始まる。
「装備型魔導具『深紅の長靴』、その性能は流石に以前のような馬鹿性能とはいかないけど今の君に負担がかからない程度の最高性能を実現したつもりだ。この魔導具は魔力を通さなければただの鎧並みの強度を持つ靴と変わらない。だが魔力を注げば注ぐほど強度は増し、速度も上昇する。以前の君にとっては取るに足らない程度かも知れないが時速200kmは保証しよう。更にこれの以前とは違う利点は両足分ある事で、これで君は変則的な動きではなくその速度で走ることが可能になったのだ!」
「成程」
これはとてもありがたい。やはり速度があっても両足で走ることがないというのは先の戦いでもとても不便に思っていた。更に速度は第三変速近くは出せるということなので十分過ぎる性能といえよう。
そうだな……流石に大金貨10枚というのはおかしな金額とは思うが、ここまで改造してくれた上にそもそも命の恩人でもあるんだ。頑張って支払えるようにしよう。
そんな風に私はもう説明は終わりだろうし今後について考えていると、そんなことは全くもってないと言うかのようにセフィーナさんは続ける。
「で次なんだけどー」
「……はい」
「ん?どしたの?まいっか、次は右腕ねー。これが今回の改造の目玉かなー。もしかしたら気付いてないかもしれないけど今の君はマスターを持たない野良魔導人形状態だ。そんな君がこれから魔力をどうやって補充するのか考えたりした?」
「あ……」
「だろうねーそんな気はした。んでそこで私の最新技術!世に出るのはこれが初めて!実は今の君の右腕は吸魔石と呼ばれる物で出来ているのだー!この吸魔石というのは元々犯罪を犯した高位の魔法使いを牢に閉じ込めておくための手錠の素材として使われていてだね、その効果は名前の通り魔力をこの石は吸い取ってしまうのさ!そして私は長年考えていた。この石を応用すれば魔導人形がマスターからの魔力補充無しでも半永久的に動けるようになるのではないかと!そ、し、て、実現させちゃったんだなー私が!そう、この天才が!感謝してもいいのよ、尊敬してもいいのよ、崇め奉ってもいいのよ!?」
「は、はぁ……」
何でだろう。歴史的大発明、今までの魔導人形の常識が引っくり返るようなとても凄い偉業を成し遂げているはずなのに、素直に称賛出来ない、というかしたくない。
だがマジで凄すぎて言葉が出ないわ。そりゃ大金貨10枚ものだわ。てかそれだけで済んでるあたりやっぱりおまけしてくれてるんだろうなと実感できるわ。
恐らくこれが初めての臨床試験のようなものだろうから、その試験データをこの人は得られるという利益もあるからこそという面もあるのだろうが。
正直詐欺とか言ってごめんなさい。金額が高すぎるというのもあるが、ここまで貴方が凄いと思わなかったんだもの……。
「一応簡単に説明するとこの右腕に使われている吸魔石は私が手を加えたことにより魔力ではなく空気中に漂っている魔素を吸収し、それを魔力に変換して装着者である君に送り込まれるようになっているわ。だから君の貯蔵魔力が増えることはあれど、減ることはないから安心してね」
「その仕組みってまさか……」
魔素を魔力に変換する。私はこの機構を自然に持つ存在の事を知っている。
それは今は亡き漆黒の狼、ガリュオンの事だ。
「へぇ、魔獣の魔素変換機構を知っているのか、中々に博識だな。そう、私のこの発想は魔獣から得たものだ。しかし発想はあっても実現には相当な時間を費やす羽目になったけどね」
「実現させただけで凄いですよ……あっ」
ヤバい、今までこの人の調子がうざかったから相槌のみで適当に躱していたというのについ本音が口から出てきてしまった!
セフィーナさんの様子を伺ってみると何やら感極まっているが如く眦に涙を浮かべていた。
「あ、ありがと……そうやって素直に褒めてくれる人って、あんまり、いないから……嬉しくって……」
理由は何となく分かるよ。だって説明中のセフィーナさん超絶うざいんだもの。そりゃ聞いてる人も褒めたくなくなるさ。
「ぐすっ、さて、気を取り直して説明の続きだ。この吸魔石で作った右腕は常に空気中の魔素を吸い取り変換している。これは君の循環魔力で補えるので消費は無いに等しい。しかし一つ問題があってね。さっきも言ったがこの使用している吸魔石は私が手を加えているため本来の性能を発揮出来ていない。発揮させてしまうと君の魔力も吸い取ってしまうからね。だから吸収力が低いのが難点で、数値として表すならば一日で魔力を50くらいしか補充出来ない」
「え……」
「あ、今少ないって思ったでしょ!分かんだかんね!でも仕方ないんだよ!そうなっちゃうんだから!吸魔石の量を増やそうとしても同じこと、吸収力が強くなれば君の魔力を吸われかねない。だからこれが今の限界なんだよぉ!それにもっと根本的な原因を突き詰めるなら空気中に漂う魔素の少なさもあるんだってぇ!」
うーむ……素晴らしい技術だがやはりまだ実用化には出来ない実験段階の代物という事か。しかしそうなると日常的には魔力を使わないようにしなければすぐに魔力切れを起こしてしまうな。気を付けなければ。
「まだまだ続くよ改造説明ー。まぁこれが最後だけど。君の右目を魔石で作ったよ!以上!」
「……え、それだけですか?」
「うん、それだけ。まぁ一応魔石で作った意味はあるよ。もし君が完全に魔力切れとなり、吸魔石の力で魔力を補充出来なくなった、なんて状況に陥ってしまった時の保険だね。魔石に術式を刻んであるから君の魔核の貯蔵魔力が0になると勝手に魔力を放出して循環に最低限必要な魔力を補充出来るようにしてあるから」
「あ、ありがとうございます」
「どいたしましてー。まぁこの保険が使われないのが一番いいんだろうけど、あの戦闘を見たら流石に必要性を感じてしまうよ」
「はい……」
セフィーナさんの言う事は尤もであり、実際本当にそんな状況に今後陥ってしまうかもしれないのでこの機能はとてもありがたかった。




