第一話 セフィーナ・ディッセン
第二章スタートです。
漸く借金が発生します!やったねユーリ!
今回からしばらく説明回のような話が続きますが何卒ご容赦を。
あまり説明回で日数いただくのも悪いので出来るだけ早く上げ切りたいのですが、明日は私フルマラソン走って疲れ切ってるかもしれませんので明日の更新は期待しないでおいてください。
後、第一章までのサブタイの話数の数字を章毎に第一話~とするようにしました。改稿とありますが本文には何も手を付けていませんのでご安心ください。
【個体名称、ユーリの再起動プログラムの稼働を確認。情報更新のため30秒後に起動します】
「ここは、メリエルさんの家……?」
目を覚ますと見覚えのある天井が目に入ってくる。
体をベッドから起こして周囲を見渡すと一人の女性が傍にある椅子に腰かけてこちらを見て笑っていた。
「お、起きたね起きたねー!?」
「貴方は確か……」
女性の発する声にはおぼろげだが聞き覚えがあった。確かこの声は意識を失う前に聞いた声だ。
という事は私はこの人に助けられ、メリエルさんの家で修理を受けて目が覚めたといった所だろうか。
「私の名前はセフィーナ・ディッセン。セフィーナ様って呼んでも言いわよ?」
「結構です」
「まぁいいや、さてさて、体の調子はどうかな?一応修理というよりは改造に近い直し方をしたから以前よりスペックは上がってると思うんだけど?」
「えっと……」
私はこの時になって自分の体に傷一つない事に気付いた。
破壊された筈の右半身でさえ修理の痕など一切なく、作り出されてすぐの新品同然のようであった。
いろいろと動かしてみるととても動きが良い。ただの修理ではここまでならないだろう事を考えれば目の前にいるこの女性はもしかするととても凄い魔導技師だったりするのだろうか。
ついでに私の自己分析も行ってみる。
<個体名称>【ユーリ】
<主人>【――――】
<貯蔵魔力>50/1000
<所有技能>81/200
『言語理解Ⅹ』『家事Ⅴ』『料理Ⅴ』『裁縫Ⅲ』『農業Ⅳ』『魔導師Ⅵ』『魔導技師Ⅴ』『契約魔法Ⅴ』『封印魔法Ⅵ』『強化魔法Ⅵ』『近接戦闘Ⅵ』『錬金術Ⅴ』『幻影魔法Ⅴ』『術式魔法Ⅴ』『結界魔法Ⅴ』
……え?
「なん……なんで、メリエルさんの、名前……え、待って、なんで私は、いつから……『メリエルさん』だなんて……」
理解出来なかった。何故主人の所にメリエルさんの名前がないのか、何故私はメリエルさんなどと他人行儀な呼び方をしているのか。
混乱する頭の中でセフィーナと名乗る女性が私の肩に手を置いた。
「順を追って話そう。気をしっかりと持って聞いてほしい」
「は……はい……」
整理の付かない状況のまま私は取り敢えず考えることを止めて彼女の話に耳を傾けた。
「まず一つ聞いておきたい。君はカースボアの毒についてメリエルからどこまで聞いている?」
「えっと、直接触れると毒に侵されて、カースボアと敵対出来なくなるんですよね?」
「聞いていた通りか……よし、ではまず君が今最初に知っておくべきことを言おう」
その言葉の後、セフィーナさんは真剣な面持ちとなって告げた。
ここまでの情報で察しは付いている。だがいざ他人から直接聞くとなると私は耳を塞ぎたくなったがその気持ちを抑えこんで事実を受け入れた。
「メリエル・ファウルは死亡した」
「っつ……!」
悲しみが心の奥底から溢れ出てくるが、私にはそれを表現することが出来ない。
きっと悲痛な表情をしていることだろう。堪える為に拳を握りしめ、唇を噛んでいるだろう。
しかし私には涙を流すことは出来ない。
「カースボアは従毒と呼ばれる先程君が言った効果の物と、呪毒と呼ばれる物が存在する。呪毒の効果は対象を呪い殺す事。その毒の発現条件はカースボアが息絶えた時、対象は従毒にかかっている者全てだ」
背筋が凍りついたような感覚に襲われた。
それも当然だろう、この言葉を言い換えるならば私がメリエルさんを殺したと言ってもいい。例え毒の事を知らなくともだ。
きっとメリエルさんは知っていて黙っていたんだろう。私の覚悟が鈍らないように、これ以上あの魔物の被害を大きくしないために。
「カースボアは各国の協定により定められた魔物や魔獣の危険度を表す階級で最上級のS級指定魔獣だ。その毒の危険性、討伐の難度によってある意味最も厄介な魔獣とも言える」
「……そう、ですか」
「今回のカースボアだが、恐らく近年目撃情報の上がっていた個体だろう。確認したわけではないが奴が襲った街や村は両手では数え切れないほどで、生き残りも今回奴が討伐されたことによって亡くなっただろう。しかし君は何も悔いることはない。君のしたことは正しい事だ。もし君が奴を討伐していなければこの村もいずれ襲われ、また別の村が襲われ、王都にまでその魔の手を伸ばしていたかもしれない」
「……ありがとうございます、気遣ってくれて」
「あら、バレてたか。まぁ良い、この事は公的な功績として認められることはないだろうが、このセフィーナ・ディッセンの名において君の今後について出来る限りの支援をすることを約束しよう」
反らした胸にポンと拳を軽く叩きつけてセフィーナさんは言った。
今更だがこのセフィーナさん、途轍もなく絶壁である。透明感のある水色の長髪によく合うスレンダーな体系なのは分かっていたのだが、胸を反らした今ならばハッキリと分かる。これはまな板だと。
しかししっかりとこのセフィーナさんという人物を観察してみるといろいろと気付かされることがあった。
まず耳が長い。よくファンタジーでの定番キャラであるエルフのような長い耳、いやもしかしたらホントにエルフなのかもしれない。ここは異世界でファンタジーな世界だ。エルフの一人や二人いたって何の問題もない。
それと気になるのは服装だ。これも私の中のファンタジーなエルフ像を元にするならばエルフとはとても軽装で動きやすい服装というイメージがあった。だがこのセフィーナさん、とても土木建築のお兄さんのようなTシャツに長ズボン、更に腰にはドライバーやニッパー、ペンチなど、とても森の妖精などと言われるようなファンタジー要素を持ち合わせていない。
こうなると髪が水色だったり瞳が金色だったり耳が長かったりするのが申し訳程度にファンタジー要素入れときましたとエルフを作った神様が言いそうだ。
話を戻すとしよう。まずメリエルさんが死んだ事、これは受け入れる。事実を否定するほど私は馬鹿ではないし、私は魔導人形だ。感情を押し殺すなどどうという事はない。
そして先程は気付かなかったがメリエルさんが死んだという事はガリュオンもきっと死んでしまったのだろう。あの時私にクリュアを頼んだ意味、あれはおそらくガリュオンも自身の死を受け入れ、後顧の憂いを絶つために唯一頼める私に託すことを決めたのだろう。
ではもう一つの疑問がある。
私は目の前のエルフとは言い難い格好をしたセフィーナさんを見る。
一体この人は何者なのか。何故あのような絶好のタイミングであの場に居合わせたのか。そして何故私をわざわざ直してくれたのか。
「さて、私からいろいろと語るのは面倒になってきたし、恐らく君は現状の把握は大体出来たと思う。だからここからは質疑応答で君の疑問に答えるとしよう」
「なら……貴方は何者で、どうしてここにいるんですか?そして何故私を直してくれたのです?」
「私が何者であるか。これはどう答えたものかな。私にはいくつかの回答があるのだが、君が一番知りたい情報を伝えるならばメリエルの親友の魔導技師であると答えよう。そして私がここにいる理由、それはメリエルに半年ほど前だったかに君の右足について手紙で相談されてね。その時にカースボアについても書かれていたから迅速にここまで足を運んだらあの時丁度到着したんだよ。あれは本当にタイミングが良かったとしか言いようがない。最後に君を直した理由だが、一応メリエルの忘れ形見とも言える君を見捨てるのは忍びなかったし、何より君は私と契約した。ならばその契約に私は従ったまでさ」
「契約……あの時の」
意識を失う前に言われるがままに行った契約。そう言えばどういった内容だったのか私は一切知らなかった。
そう思っている矢先、セフィーナさんは私の目の前に何かの紙を突き付けてきた。
「はいこれ、契約の下で発生した代金の請求書」
「……は?」
「だーかーらー、君契約受諾した。私君直した。君直った。契約の下修理代発生した。これ修理代の請求書。オッケー?」
「つまり……あの契約はタダじゃ直しませんよという契約で、私はちゃんと払いますよと承認したと?」
「イエァー」
「えっと、その……それって詐欺――」
「――契約は絶対。内容を知らなかったでは通らない。この契約には君の承認の証拠となる君自身の魔力が使われている。破棄は出来ない」
あ、あんな状況でどう内容をしっかり把握しろというんだ……いや、そもそも私自身なんの疑問も抱かずにホイホイ契約何て交わしてしまったのが悪いのだろうけど、それにしたってなんて酷い手口なんだ!
メリエルさんの親友なんだったらもうちょっと優しくしてくれたっていいじゃないか!
……いや、待てよ?もしかしたら言い方はきつい部分があるものの修理代っていうのは建前上貰うというもので大した額ではないのかもしれない。
うん、そうだ、きっとそう。私の事をメリエルさんの忘れ形見とか言っていたしそんなに酷い事にはならないだろう。
私は心の中で冷静さを取り戻してからセフィーナさんに改めて尋ねる。
「因みにおいくら位でしょう?」
「大金貨10枚って所かな」
「……」
甘かった。身内サービス何て生易しいものは存在せず、相当な高額の修理代を請求されてしまった。
ここでこの世界の貨幣について少し触れようと思う。
この世界において貨幣とは硬貨である。硬貨には大きく三種類あり、銅貨、銀貨、金貨だ。そしてそれぞれに大硬貨が存在し、銅貨だけは半銅貨というものもある。それぞれの相場は銅、銀、金の順に高くなっていき、それぞれ1000枚毎に価値の一つ高い硬貨1枚と同等のものとなる。
例えば銅貨1000枚は銀貨1枚と価値が同じで、更に半銅貨10枚は銅貨1枚と同等であり、銅貨50枚で大銅貨1枚と同等である。
そして今回の大金貨10枚だが、銅貨で換算すれば5億枚といったところだろうか。
この世界において銅貨1枚とは大体元の世界では百円ほどといった所で、そう考えると金貨となれば1枚一億円である。
以前マスターのお使いでディーンさんのパンを買いに大銅貨で支払ったが、本来パンはそんな高額ではない。あれはマスターからの気持ちが多く入っていたのである。
さてさて、詰まる所私は日本換算して約五百億円の借金をしたことになる。
それを考えた瞬間私の血の気が一気に下がったような感覚に陥った。
そんな状態の私の肩を軽く叩きながらセフィーナさんは語る。
「可哀想だから利子は無しで分割をしてもいい。そうだな、期限は流石にいつまでもというのは虫が良すぎるし、出来れば私が死ぬ前には払い終わってほしいな。と言ってもエルフであり、その中でも色々と死に損なって長いこと生きている私の事だからまだこの先100年は最低でも生きてると思うから分割100年でどうだい?もし払え切れなかったらまたその時応相談ってことで」
分割100年、言葉的にはとても良心的に思えるがその実平均1年に五億円相当である金貨5枚。この世界の平均年収は役職によってとても異なるが、もしこの村で今まで通り働いていても銀貨10枚、約百万円程しか稼げないだろう。
何て無茶のある返済計画だ。
だがしかし、もしかしたら何とかなるんじゃないかと思っている自分もいた。
私は異世界から来た転生者。ただの学生に過ぎなかった私だが異世界の知識を持ってすれば何か産業を一から立ち上げるなんて事も出来る可能性が残されているはず。
「因みに何か産業とかを新しく立ち上げようなんて博打は考えない方が良いよ?」
「な、何ででしょう?」
この人、ガリュオンと一緒で私の心が読めるというのか!?
不意に考えを指摘されたことに動揺を隠せずにいながら私は問い返した。
「私も長いこと生きてるから分かるんだよねー君が一発逆転にかけて失敗しそうって。それに何かを始めようと思ってもちょっとこの世界とは異なる知識を持っていたとしても無意味だよ?」
「なっ!?」
この人、私が異世界人だと気付いている!?な、何で……私がいつの間にかそういった情報を漏らしてしまっていた?いや、そんな事は……。
突然の事に思考が追い付かずどうしてとしか考える事が出来ない私にセフィーナさんは重大な事実を告白する。
「そりゃ分かるさ、誰が君を作ったと思っているんだい?君はこの私、生産組合名誉会長兼魔導部門筆頭取締役員、『魔導人形の生みの親』と称されるセフィーナ・ディッセンにより親友メリエルからの願いで作られたんだよ!」




