第十二話 邂逅
祝!ブクマ15を突破し更に20までもいつの間にか突破!
累計PVも1500で祝って言いたかったのですが一気に1800程まで上がっておりビビる鈴兎です。
目標低すぎましたかね……ですが私のような若輩者には小刻みに行くべきだと……。
しかし自分を卑下し過ぎるのもいけません。今度は少し高い目標を目指します!
累計PV3000、ブクマ30を次の目標として頑張ります!皆さまどうぞ今後ともよろしくお願いします!
そして本編は第一章の大詰めとなってまいりましたね。
長いようで、とても短い訓練期間が終わりを告げた。
約束の半年、出来る限りの事はしたつもりだ。
あれからカースボアの行動は抑制していたウルフたちを私が減らしていったことにより徐々に激化していった。
マスターの結界は熟練度がⅤといえど強固であることに変わりはないのだが、カースボアが村に接近してくるのもいつまで防げるか分からないといった状況にまで差し迫っていた。
何となくで言った半年という期限だったが、絶妙な長さであったと私自身冷や冷やしていた。
だがそんな日々も今日で決着が付くだろう。
「……気を付けな」
「はい、必ずやマスターの代わりにカースボアを倒してみせます」
明朝、ひんやりとした空気が肌を撫でる。天気は快晴、絶好の狩猟日和と言えよう。
私は家の前にてマスターと対峙していた。
私の装備はいつも通り、単なる私服だ。
マスターが言うには下手な鎧よりも私自身の強度の方が強いのだそうで、更に装備で動きを阻害される可能性もあり最終的にこれに落ち着いた。
「そうかい……じゃあこれは餞別だよ」
マスターが右手で私の胸の魔核にそっと触れる。
魔核に触れた右手から温かく、力強い魔力が流れ込んでくる。
私はそれを『七変加速』へと流していったのだが、量が思っていた以上に多い事に気付きマスターを見るとその表情は形容しがたい何とも中途半端なものとなっていた。
嬉しいのか、悲しいのか、はたまた怒っているようでもある。
「マスター……?」
「あんたの中であのエンペラーウルフが一番の強敵だろうが、カースボアは毒を抜いても十分強い。下手打つんじゃないよ」
「はい」
「キッチリ倒して来れたら、あんたはもう一人前だよ」
「え……あ、はい」
まさかマスターからそんな言葉を聞けるだなんて思ってもみなかった私は一瞬反応に困ってしまった。
マスターから一人前と呼ばれるには最低でも『魔導師Ⅹ』くらいはいるものだと考えていた私としては少し拍子抜けだったが、マスターがそれでいいと言うのならいいのだろう。
こうなると意地でも倒してマスターに一人前だと認めさせてやろうではないか。
「今私に残っている魔力を全部送り込んだ大事に使いな」
「はい」
結局マスターから渡された魔力は一万と少し、『封印魔法』で『七変加速』に入りきらなかった分を封印して今度こそ準備完了である。
「では、行ってきます」
「あぁ、頑張ってきなユーリ……そんで――」
――さようならだ。
――――
マスターと別れて森に入ってしばらくするとガリュオンがいつの間にか隣で歩いていた。
いつもながら接近されたことが全く分からなかった。
「(行くのか)」
「行くさ、そのために鍛えて来たんですから」
「(まぁ良くやったものだな)」
「貴方には本当に世話になりました」
一旦その場に立ち止まり私はガリュオンに向かって頭を下げた。
このエンペラーウルフには本当に世話になった。
ウルフ千頭狩りが終わってからは本格的にガリュオンとの戦闘訓練をしていた。
結局私は一本もガリュオンから取ることなく終わってしまったが、そのおかげで随分と実戦用の経験を積むことが出来たし、あのガリュオンの速度を見慣れたことによりカースボアの攻撃ぐらいならば避けるのはそう難しくはないはずだとも太鼓判を押された。
故に後は自信を持ち、油断せず相手に挑む事のみだと考えている。
私が頭を上げるとそこにはいつもの威圧感のある顔付きではなく、どこか悲しげな表情をしているガリュオンの顔があった。
「(……魔導人形に言うのも変な話だが、死ぬなよ)」
「死なない、いや死ねないよ。私はこれからもマスターの隣で、その生が終わりを迎えるその時まで共にいるつもりです」
「(……)」
「どうしたんですか?そう言えば先程のマスターも少し気落ちしていたように見えたのですが、貴方もですかガリュオン?」
「(いや……何でもない。時にユーリよ、貴様に一つ頼みがある)」
頼み?と私は心の中で首を傾げた。
あのガリュオンが私のような小さく弱い者に頼み事などするはずがない。そもそもする必要が無いと思っていたのでとても予想外であった。
「何です?」
「(我はこの戦いの後ここを去る)」
……え?一体どうして?
しばらく理由を考えるが全然見当がつかなかった。
ここはガリュオンの縄張りのはずであるにもかかわらずどうして去る必要があるのか。
私の表情から察したのか、いつもの様に心を読んだのかは分からないがガリュオンは理由を答えた。
「(クリュアも十分に育った。もう我がわざわざ面倒を見なくとも独りで生きて行ける)」
「それが何で去る理由に?」
「(我にこの地は狭い。もっと広く、全力で駆けることの出来る場所を求めてな)」
「ですがこんな急に……」
「(以前より決めていた。頼みというのも大したことではない。たまに遊んでやってくれるだけで良い)」
その言葉を聞いて私は以前ガリュオンの言っていた言葉を思い出した。
あれは二度目の邂逅の時、私は訓練期間を半年と言って半ば強引に決めたが、ガリュオンは始め一年と言っていた。それはもしかすると子供の成長具合を鑑みての期間だったのか?
まさかと思いつつもガリュオンを見れば、私の何かに気付いた表情から考えを汲み取ったかのように無言で頷いてきた。
そうか、私の我が儘で半年減ってしまったんだな……ならその埋め合わせは元凶である私が埋めるべきか。
私は真面目な顔でガリュオンの目をまっすぐ見つめながら答える。
「……分かりました。それくらいならお安い御用です」
「(すまないな、頼む)」
それからしばらくの間沈黙が続いたが、それは一切苦であることはなかった。
この半年、私とガリュオンはそういう関係であった。たまに軽口を言い合うほどには打ち解けていたがやはり一線を守っていた。
私はこの間に気持ちを落ち着かせる。
戦いでは熱くなり過ぎてはいけない。気持ちの乱れは判断力の低下を促し、技のキレを落とし、致命的なミスを誘発する。
獣はただ獲物の一点だけを見つめ、静寂の中で勝負を決める。
「……」
「(緊張か?)」
「そうですね……」
今ほんの少し心が乱れ、それに反応したガリュオンが問いかけてきた。
静寂を保とうとするのだがどうしても手の震えが止まらなかった。
私は震える手を忌々し気に見つめながら拳を握りしめる。
「大丈夫です、いけます」
「(緊張は誰しもするものだ、恥じることではない。緊張は時に己が命を救う)」
「……はい」
「(そろそろか、では我はここで失礼するぞ)」
「ありがとうございました」
「(武運を祈っている)」
その言葉を最後にガリュオンはこの場から姿を消した。
私は真っ直ぐに正面、カースボアのいる場所を見つめた。
遠くだがギリギリ視認が可能であった。
「あれがカースボア……」
カースボアはこの距離だと正確な大きさは分からないが、恐らくガリュオンの半分程度といった所だ。
口元には大きな牙を持ち、真黒な瞳は獲物を見つけるために周囲を警戒しており、その体毛は灰色、そして紫の斑模様がいくつも見られた。
その存在感は遠目からでも強く感じ、もしあんなものがいきなり情報も無しに現れたら当然の様に私は恐れていただろう。
しかし私は知っている。あんな程度では済まない本当の強者の圧力を。
今更この程度の圧力で尻尾を巻いて逃げようものなら、私はその後マスターやガリュオンに会わせる顔がない。
苦笑交じりに思考を中断し、私はカースボアにだけを焦点を当てる。
さぁ、始めようか。




