表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/42

第十一話 結界

次回、漸くカースボア戦に入ります!(多分)

恐らく分割して二話になるかと思います。


そろそろ学祭が近付いていますが私にとってはただの連休ですね。

「二重結界!……はぁ、はぁ……もう、無理……魔力、切れ……」


 迫り来る多数の狼を自分の周りに『結界魔法』による結界を二重に展開することで安全を確保し、私はその場に倒れた。

 すると視界の端の方でガリュオンが近づいてくるのが見えた。

 ガリュオンは私を見下ろすとため息交じりに言う。


「(もうすぐ日の出だ。まぁいいだろう)」


 あれから数時間、ひたすらに狼達と戦っていた。

 始めは良かった。『強化魔法』で全身を強化し、狼達数頭を相手に大立ち回りをしたものだ。

 だが時間が経過するにつれ数は多くなる一方で、倒した数の倍増えていく始末だった。

 このままではまずいと考えた私は魔法による範囲攻撃で数を減らそうとした。これが愚策だった。

 魔導人形の貯蔵魔力には限りがある。そんな状況で魔法を使い始めればその後の展開など火を見るよりも明らか。

 私は魔力を使い過ぎ、魔法が碌に使えなくなってからその事実に気付き、そこからは『幻影魔法』による幻覚効果で急場を凌ぎ、純粋な『近接戦闘』のみで狼を数頭ずつ相手にしていき、限界近くになったところで今に至る。

 本来であれば『七変加速』や『封印魔法』で封じ込んでいる分の魔力を使えばここまでの苦戦はしないのだがそれをしてしまっては私自身のためにならないと感じ、使用は止めておいた。

 そしてその考えはガリュオンも同様であったのか頭をゆっくりと縦に振りながら言った。


「(最後には切り札の一つでも出してくるかと思ったが純粋に自身の力で乗り越えた事には評価しよう)」

「それはどうも……」

「(ではまた夜に来い)」

「はい」


 そう言い残してガリュオンはこの場から一瞬で去っていった。

 相変わらず何が起こったのか分からないという規格外な速さを目の当たりにしつつ私は村へと戻っていった。


「決定打、か」


 村に戻る道すがら私はその事について考えていた。

 私はガリュオンのその圧倒的速度に憧れた。だから速さを求めて『七変加速』を作った。

 しかし速度だけではどうしようも無い事があるのも分かっている。

 確かに速さがある攻撃というものはそれだけで武器となり得るし、速ければ速いほど威力も上がる。

 だがガリュオンはきっと気付いているのだろう……私の全力が諸刃の剣だという事に。

 故に最後にはこれに頼る事になろうとも、極力避けるためにもう一つ何かを私に身に付けさせようとしているのだ。

 しかし簡単にはいかない。

 魔法が今の所一番有効打になり得るのだろうがカースボアに決定打を与えるとなると難しい。


「んー分からない」


 そもそもそんな強力な技がホイホイ身につく訳がないのだ。そんな事が出来るのは物語の主人公が覚醒した時くらいなのだ。

 私は私らしく行けばいい。

 自分で決めた事だが、後五ヶ月か……。

 因みにこの世界、恐らくだが元の世界と大して一年の日数に違いがない。

 一年は360日、それを十二ヶ月で割り一ヶ月30日とされているが六年に一度陰月と呼ばれる十三の月がある。これを合わせて考えると平均して一年は365日。

 地球でも365日に加え閏年が設定されていることからこの世界の天文学は中々に発展していると言えるのだが後もう少し足りないといった所だろう。

 昔の講義で古い天文学の暦の付け方を囓ったがあれは現代人にとってはそれで良くそこまで分かったなと感心したものだ。

 話は戻り、私に残された日数は約150日。今となっては期間を増やしても問題ない気がするがそれは意地というものがあるし、何よりこれ以上カースボアを野放しにはしていられない。

 さぁ、家に戻ったらまた鍛錬と研究だ。


――――


「カースボアの毒だろう?知ってるよ」

「え?」


 翌朝、というより日が昇って暫く、家に戻りいつものように家事をしながらマスターが起きてくるのを待ち、起きてきたマスターにガリュオンの事は伏せながらカースボアについて話すとそのような返事が返ってきた。

 私が呆気に取られているとマスターはそれを無視して続ける。


「何年魔導師やってると思ってんだい。カースボアの毒くらい傷が治って目が覚めた時から気付いてるよ」

「え、そ、それじゃあ……」

「森を荒らしてるのはカースボア。あの牙も良く見ればウルフのに似ているがカースボアの物と見た方が正確そうだ」

「ちょ、ちょっと待っ――」

「――あのエンペラーウルフは私たちの味方ではないが、敵でもないといった所だろう。そして生かしてくれたのにも理由がある。きっとユーリの存在がどんなものか理解しているんだろう」


 私の制止も聞かずにそのままペラペラと真実を自身の考察のみで言い当ててしまった。

 私がついさっき知った事だというのにマスターはとっくの昔に気付き、自身が戦えない事を考慮した上で私の力を伸ばし、カースボアに対抗出来るようにと考えてくれていたのだろう。

 だからマスターは命よりも大切な自身の魔法研究の結晶を私に開示し、それを思う存分吸収出来る場を用意してくれた。

 そこまで考えが及ぶと私は自分の頭の脆弱さを呪いたくなった。

 マスターはいつも私の事を考えてくれていたというのに、私は今まで自分の力だけで強くなっているなんてバカな事を考えていた。

 私はその事がとても申し訳なく思えて、マスターに向かって頭を下げた。


「……ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」

「はいよ……その右足については敢えて触れないが、専門家でもない私にはどうしてやる事も出来ない。また今度知り合いにでも頼んでみるよ」

「はい!」


 というか当然の如く右足の事についても知っていたんですね。

 まぁ、マスターなら当然か。もうこの人の事では驚ろかない事にしよう。


 その後はいつものように鍛錬したのだが、私は鍛錬が終わってからついでとばかりにマスターに尋ねてみた。


「マスター、マスターは『結界魔法』の熟練度は幾つなんですか?」

「……なんでそんな事を聞くんだい?」

「少し気になったもので」


 違う。本当は知りたかったのだ。

 ガリュオンが語ってくれた過去の話。その中で出てきた『結界魔法』のスペシャリストであるリーシャさんが一体どれ程の力量だったのか。

 そしてその熟練度がⅩというのは一体どれ程のものだったのか。

 私は恐らくマスターであればこの問いに答えられるのだと考えた。

 しかし、返ってきた言葉はその考えを正面から打ち崩すものだった。


「Ⅴだよ」

「……え?」

「私は数多くの魔法の熟練度をⅩ、もしくはⅧ以上という高水準で持っているのは知っているね?そんな中で唯一Ⅴで止まったのが『結界魔法』だよ」

「一体何故……?」

「私の蔵書をどれだけ読み込んだかは知らないが、リーシャ・フォン・グラインドの名前くらいは見た事があるだろう?」


 すみません!まだそこまで読み込めてませんが昨晩その人物を知る生きた歴史書のような魔獣に聞きました!

 内心どう答えたものが迷ったがここはマスターに乗っかっておこう。

 私は無言で頷いた。


「現在この世に残っている記録の中で、『結界魔法』を極めたのはリーシャ・フォン・グラインド以外存在しない」

「なっ!?」

「恐ろしい話だよ。過去千年に渡りリーシャが各国に張ったという強固な魔獣避けの結界は未だその効力を失う事なく現存しているんだからね」


 瞬間、鳥肌が立ったような感覚を覚えた。

 何故か?あり得ないからだ。

 魔法は術者が意識を失う、魔力が枯渇する、命を落とすなど、様々な要因で効力を失い消滅する。

 これは全ての魔法に言えるわけではなく、例えば私の使う『封印魔法』は使用時にのみ魔力を使うため魔力枯渇では効力を失わない。そして維持するための精神も必要でないためそうそう効力が切れるなんて事態には陥らない。

 だが、たった一つ。命を落とせば全ての魔法は効力を失う。

 なのに、そんな事を嘲笑うかのようにリーシャ・フォン・グラインドの『結界魔法』は千年の時を経ても効力が失われていないという。

 規格外な存在はもう見飽きた、聞き飽きたと思っていたが、まだとんでもない化け物がいたものだと私は苦笑するしかなかった。


「恐らくだが、それが『結界魔法』を極めたということの証明なのだろう。流石の私もそれを知った時には真実を疑ったが、それは実物を見て掻き消えた。それ程までにリーシャ・フォン・グラインドの創り出した結界は素晴らしいものだったのさ」

「……」


 何も言えない。

 あのマスターが、魔導を極めているといっても過言ではないマスターが今その結界を脳裏に思い浮かべ、恍惚としているのだから。

 マスターにここまで言わせてみせるリーシャの結界……一度でいいから私も見てみたいな。


「そうだ、一つ良いことを教えてやろう」

「なんですか?」

「リーシャの魔法研究書にこの様な言葉がある。『結界とは最強の矛であり、最強の盾である。しかし、結界は矛となることはない』」

「え?何ですかそれ、意味が分からないんですが」

「私にもさっぱりだよ。けれど、この言葉を理解することが出来れば『結界魔法』を極める事が出来るかもしれんの」


 矛と盾、よく聞く矛盾の例えだがその後の言葉がよく分からない。

 最強の矛であるのに矛ではない。

 いや、そんな事よりも前提からしておかしいのだ。

 『結界魔法』は確かに最強の盾であると言えるだろうが、盾は矛にはなり得ないのだ。結界は身を守る力であり、決して他を害することは出来ないのだから。

 一体リーシャは何を理解したというのだろうか。

 湧き上がる疑問は絶えないが私には現状必要の無い事だと割り切り、そこで思考を止めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ