それでも
私を動かしたのはまだやれるという虚言混じりの言葉だけだった。
腹部に空いている穴は息をするように空気を取り込み血を吐き続ける。
それでもまだやれる。
視界の隅が黒くぼやけていき、このままでは視界が真っ暗になるなんて想像をする。
それでもまだやれる。
みんな死んじゃって私だけ助かるなんて、悲しすぎるよ。こんなの、嬉しくないよ。
それでもまだやれる。
みんなとの約束だから。
生きることが、助かることが、私の無事が。
みんなとの、最後の約束だから。
「おーい、いつまで寝てんだよ。次の授業移動教室だ。早くいくぞ。」
「寝る子は育つけど、...ちゃんは寝すぎね。あんまり寝ると牛さんになっちゃうよ?」
「牛になった...、美味しそう。」
「はいはい、みんな急いでくれよー。」
「ま、まってみんな!」
そこでようやく声が出る。
「私、とても嫌な夢を見たの。」
「夢?どんな?」
「うん。あのね、私たちが死んじゃう夢。でも、私だけ助かった夢。みんなとの約束を守った夢。」
「そっか。でも、それは夢だから。私たちはずっとここにいるから。」
「そう、だよね。」
「うん。だからさ、いつもみたいに笑っててよ。」
「うん!」
吐き出される赤黒い液体に溺れてめが覚め、気がつくとまた一人だった。
それでもまだやれる。
だってみんなは、心にいるんだもん。
少女は一人、みんなと一緒だった。
思い込みというのは時にどんな状況でも自分を追い詰めるのと、安らげてくれるのがあると思います。
今回は安らげてくれるほうを書きました。
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。