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エメラダは家を捨てましたの回

水色のワンピースに煤けたエプロンドレスに麦わら帽子に使い古して薄汚れた革のトランク。どう見ても少し背伸びしてお洒落した町の少女だ。

「パル兄様!エメ待ってました。」

「うん。じゃあ行こっか?少し歩くけど……大丈夫?」

どこまで行くのだろうか?きっとずっと遠くだ。そうあって欲しいと望む。

「はい。エメはパル兄様となら、どこえだって行けますよ。ところで何処まで?」

「ふふん。山奥の孤児院。昨日受け入れ先を探してたんだ。保母さん一人と男の子8人と女の子4人の小さな孤児院だけど自然に囲まれたいいとこだよ。」

ふーん。男の子の方が多いのか。

「それと、パル兄様はやめよっか。あと、近くの村まで肉屋のお兄さんに幌馬車に乗せてもらえる事になってるから肉屋まで歩ける?」

「お兄さんそこまで買い出しにでもいくの?」

肉屋のお兄さんは私達がよくお世話になってる肉屋の主人の息子さん。

よく、ハムやベーコンを分けてくれて2人ともお兄さんが大好きだ。

「いいや?知り合いに会いに行くんだって。お願いしたら乗せてくれるって。」

「ふーん。ところでパルお兄ちゃんでいい?」

お兄さんは優しいしかっこいい 。あと、お兄さんの下のお兄さんも優しいくてかっこいい。上の方のお兄さんは腕っ節が強くて逞しいのに下のお兄さんは眼鏡で研究熱心それでいて所々抜けている。

顔はカッコ良くてもやってる事がカッコ良くないのだ。

「あぁ良いんじゃないかな。じゃあ僕はエメちゃんって呼ぶね?あと名乗るときはエメにしておいてね?エメラダって名乗ったら連れ戻されちゃうから。」

「うん!あっ!肉屋のお兄さん今日はお願いします!」

絶対にエメラダって名乗らない。もし名乗ったら連れ戻されちゃう。そしたらパル兄様と逃げてきた意味が無くなってしまうのだ。

「おぅ。チビ、めかし込んでどこ行くんだ?あっ!俺が連れてくのか(笑)」

「早く行きましょうお兄さん。多分今頃グレゴリア家の屋敷ではエメラダがいないって探し回ってる頃です。」

「えっ……エメラダが何時も起きるのは12時頃だよ。」

そうだ。12時頃に起きて1時から勉強3時に屋敷から逃げ出して日暮れまでパル兄様と町中を駆け回るのだ。

「今日は婚約お披露目なんでしょう?早く起こすでしょうから。」

「あとは、エメラダの誕生日パーティも今日あるよ。」

「えぇい!さっさと乗れぃ!さっさといくぞー!乗らないなら置いてくからな。」

えぇ!?置いていかれると困る。日に日に強固になる屋敷の警備から逃げ出すのも一苦労なのだ。

「まってってば!乗りますよ!」

って騒ぎながら私達は街を出た。

普段馬車で通らないようなデコボコ道。

しきりにお尻がはねるけどそっと外をのぞき込めば綺麗な青空が広がっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ん。ついだぞ。悪いがここ迄しか行けねぇ。後は歩いて行ってくれ。」

ん?この山見たことあるよ?こんな所に来たこと無いのに……なんでだろ?

「お兄さんありがとうございます。たまには手紙書きますね。」

「お兄さんありがとー!また合う日まで!」

「おう!じゃあな。元気でいろよ。」

いやぁ。お兄さんはイケメンだね。まぁパル兄様の方がかっこいいけどね。

「じゃぁ。登ろっか。孤児院は山のてっぺんだ」

「うん!パルお兄ちゃん頑張ろうねー!」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「いらっしゃい。街の子なら登るの大変だったでしょう?お疲れ様。お父さんとかお母さんは?一緒に来てない?」

「そこまで大変ではありませんでした。父も母ももう居ないので……」

とパルお兄ちゃんは目を伏せ悲しそうに言った。

「お兄ちゃん……大丈夫だよ!エメは居るから。」

「二人は兄妹かな」

「いいえ。幼馴染みなんです。僕の両親とこの子の両親が仲良くて……いくら仲が良くても一緒に事故に合わなくてもと思うんですねどね?」

パルお兄ちゃんはどうやら演技派な様です。ありもしないホラ話がでっち上げられて行きます。

「そうだね!折角昨日はエメの誕生日だったのにね。」

「そう。それは、悲しいわね。でも、もう大丈夫よ。私をお母さんと思って慕いなさい。」

お母さん……死んでは無いけど……好きでもないし嫌いでもない人。

実の娘に向かって馬鹿とか言って。

それでもって破天荒で、人の意見は聞かないし……

「はい。ありがとうございます。

僕等もし、お母さんが引き取って貰えなかったら街で物乞いをしてたかも知れませんでした……」

「エメ物乞いはいやぁ。蹴られたりたたかれたり痛そう!」

「さぁ……他の子達に挨拶しましょう?今日から貴方達の家族になる子達だよ。」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「さぁ!皆さん昨日お話ししたと思うけど新しい家族が来ましたよ!仲良くして下さいね。」

「パルです。6つです。よろしくお願いします」

「えっ……エメでしゅ!昨日4つになりましゅた!よろしくお願いしましゅ!」

うわぁァァ……上がり気味で引き攣った声な上に噛んだし!

「ザクロだよ。5つよろしくね。」

「スイショウです。4つだから、エメちゃと同い年だね。よろしくお願いします。」

「アイでっすー!4つだよん!よろしくっー!」

「サンゴ。さんさい。よろしくね!」

「ヒスイです。ソウセイセキと双子で5つ。」

「ソウセイセキだよ!よろしくね!」

「コウギョクです。えっと……よろしくね。」

「タクトです……タクって呼んでください。」

「ルビーだよ。エメちゃんの一個上だけど仲良くしようね!」

「瑠璃です。異国から来ました。仲良くしましょう。」

「ロッテです。まぁ……仲良くてね。」

「真珠です。瑠璃と同じ国から来たんだ。エメちゃんみたいな可愛い子と家族同然に慣れる事を嬉しく思うよ。」

なんでこんなにこの孤児院は顔面偏差が高いの?

「本人が望むならお屋敷に伝が有るのよ。見目麗しい方がいじめられないからね。あと、全員王立聖アロマージュ学園に特待生で行ってもらうから見目麗しく無ければ困るのよ。」

ふーん。そんな理由か。確かに王立聖アロマージュ学園は顔面偏差と能力主義だからな。何故、顔面偏差値に重きを置くかというと……これはまぁ単純に、王太子様の花嫁や公爵令嬢等、社会的に重要な人物の婚約者を見つけるためだ。

まぁ要するに大規模なお見合いなのだ。

優しそうな人達と聖母の様なお母さんに囲まれてこれからの生活が楽しみだと思った。

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