エメラダ決心するの回
「あっ……日が暮れてしまうね帰ろっか?」
えぇ……折角誕生日なのに?
明日には王太子様との婚約が発表されてしまうから、簡単にパル兄様に会えなくなってしまうのに?
「やだ……いやだ!明日にはかんたんにパルにいさまに会えなくなってしまうのに!?」
思わずヒステリックに叫んでしまう。前世からの癖だな……治さないとと思うけどなかなか治せなかった。うんん。治そうとしなかった私の欠点。欠点まみれの私の一番悪い所。
「えっ?明日には簡単に会えなくなってしまう?なんで?」
「王子様……王子様と婚約させられるの。」
そう。婚約するじゃなくてさせられる。いや?もしかしたら、し無ければならないだ。私に拒否権なんてない。
「無理やり?そんなの酷いじゃないか。」
「エメずっとパルにいさまといたい。ずっと……ずっと永遠にパルにいさまといたい……」
でも、無理だ。王子様と婚約し無ければならなくて、ヒロインが現れると捨てられて死刑だ。
両方が望んだ婚約は王子様の我が儘で破棄されてヒロインを護るためと言う大義名分の元断頭台で見世物だ。酷い仕打ちだと思う。
「そんなの……無視してしまえばいい。エメラダは人形でも傀儡でも無いんだから。」
もし、この婚約を破棄すればエメラダはグレゴリア家の面汚しだ。
「エメラダはグレゴリア家のお嬢様である前にエメラダなんだよ?明日王宮に行く前……午前10時に公園の噴水の前に来て……何時もの人々に紛れるような格好できてね?」
無理だ……
抗い様の無い飽くまでヒロインに優しい世界なのだ。
「無理だよ。捕まっちゃう。そしたらパルにいさまが怒られてしまうわ。」
婚約は私の感情を押さえ付けてしまえば円満に解決するのだ。
「怒られないよだって。逃げるんだもん。誰にも見つけられない街の孤児院まで逃げよう?今までの煌びやかな生活は出来ないけど2人で支えあって生きよう?ね?エメラダはいや?」
全然嫌じゃない。むしろそうなって欲しい。
前世の記憶がある私にとって貴族の社会は優しくない。
少し辛いかも知れないけど、町の人として暮らせるならきっと私はそうするだろう。
どうせ王子様には、ヒロインと言うお姫様が現れるのだ。仮のお飾りなんて無くてもいいと思う。
「うん!明日10時に公園の噴水の前で!」
約束だ。絶対に物語どうりのシナリオなんて進まないし進ませない。ヒロインが物語どうりのシナリオを進んでも構わないけどエメラダが見世物になる事は避けよう。
そしてパル兄様と2人で支えあって生きよう。