キャラ作り
・・・。
まさかとは思っていたが。
「・・・お前ほんとにあの"北原めぐむ"なのか?」
「もちのろん!」
ガッツポーズを繰り出す北原。
俺は少しばかり頭を伏せて思い出す。
(あれ?
あいつあんなキャラだったっけ...??)
「なんか...めぐちゃん高校生デビューしちゃった感じ...?」
顔を上げると、蒲田の顔が引きつっていた。
「・・・まあカクカクシカジカで、色々あって今はこのキャラなのでありますっ」
「「・・・・」」
某有名アニメの○ロロ軍曹みたいな喋り方...
少なくとも蒲田と俺の心はリンクしていた。
「・・・それで? 南田会長、
俺らが会って欲しい子ってコイツだったんですよね。」
「ああ、そうだ。・・・しかし、知り合いだったんだろう?
・・なのになんだね、君たちのその微妙な距離感は。」
距離感察してくださいよ。
「いやー、耀太会長、私たち小学生の時同級生だったんですよね~あはは♪」
「・・・おぇ..」
俺が知ってる北原と目の前にいる北原が違いすぎて、いささか気持ち悪くなる。
「・・・おほん。何らかの確執があるようだけど、一緒の部活に入るんだ。」
頼むから仲良くしてくれよ、そう言われても。
俺にはコイツにトラウマがあるんだよ。
「とりあえず僕からは、そのキャラを直してくれると嬉しいかな」
「・・・そうだな」
一瞬北原の顔に影が浮かんだのは気のせいだろう。
「ごめんね、でも事件解決のためなんだ♪」
「事件解決・・・?
もしかしてなんかまた引っ張ってきたんじゃないだろうな」
乾いた笑みを浮かべる北原の顔だけは、昔の物に戻っていた。
「はっはは....ここだけの話なんだけど....」
何も話し出さなくても・・と思ったが、
会長が興味津々な顔して体を乗り出してるので抗議もままならない。
「「「女子がストーカー被害に合ってる?」」」
こくっと頷いて話しだした内容はこのようなものだった。
ーーーー
今日の昼休みに私がトイレに行くと、
手洗い場にいる女子達の会話から、"つけられてる気がする"
という声が聞こえたの。
不信に思ってその子達に詳しく聞いてみると、
夕方、下校途中などで黒いパーカーを来た人物が後をつけてくるらしい。
そこで私なりにそのストーカー被害に遭っている子達の特徴を調べたんだけど、
Ⅰ,チャラい
Ⅱ,無駄にテンションが高い
Ⅲ,馬鹿そうに見える
これらが共通点だった。
ーーーーー
「なるほど、だからめぐちゃんわざとそのキャラになって...」
「その通り、もしこれらの共通点がある人物だけをターゲットにしているなら、
私もその中に入って、やつをおびき寄せようと思って!!」
・・・お前はいつもそうだな。
ちょっと事件性がありそうな時、すぐに首を突っ込んで
自身の危険を顧みない。そこだけは変わってなさそうだ。
「ぬぉおおおー!!!燃えてきたああああ!!」
南田会長も首突っ込む気アリアリだな。
「よし! 早速だけど、その事件を我々マリーゴールド探偵倶楽部で解決しよう!!」
ひとり燃え上がっている南田会長をよそに、
俺は北原に説教していた。
「あのなー。お前小学生時代に学んだろ?
お前の無鉄砲なやり方は危険すぎるんだって。」
「じゃあどうしたらいいのよ~、もし放っておいて二次被害が出たりしたら~...」
その二次被害者に成りうるんだよお前は・・・。
てかそんなもの先生たちに任せればいいだろう、素直に言った。
でもなんだかコイツ、腑に落ちないみたいで。
あの苦い思い出を穿り返す会話が始まる。
「あの時みたいに、私たちが出来ることあるかもしれないじゃん・・・?」
「何が出来たって言うんだよ・・・俺たち結局、何もできなかったじゃん。」
「・・・でも美智留は助かった。」
「そーだな、でも冬弥は助からなかったんだよな!
俺たちがあの件に首を突っ込まさえしなければ!!」
全部、俺たちが悪いんだよ・・・。
俺の声にびくっと肩を震わせた北原を無視し、俺は話を進める。
「冬弥が居なくなってから、
蒲田がどんな思いで今まで生きてたのか分かってるだろ...?」
「わかってる・・分かってるけど...」
「二人共・・・僕のことでそんなに...」
俺たちはあの頃までは仲がよく、
ナルシな俺と、真面目優等生な北原と、そのおまけみたいな蒲田。
この3人で成り立っていた。
そう、あの頃まではー・・・
話に全くついてこれていない会長をよそに、
思い出し始める。
鮮明に。
あの記憶が蘇るー・・・。
次回、過去に飛びます。ストーカー事件はとりあえず置いときます。