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文系少女に御用心。  作者: *琉輝那*
一、人は見かけによらず。
4/15

曇り空

ちょっと過去も入ってるのでちょっと長めかも。

「ふぁ~・・・ねっむ」


あくびをしながら初めての下校を満喫中。

これから3年間あの女が居ないここに通うということは、

すなわち、俺にとって人生最大の幸福な3年間となるということ。


ちなみに、表通りは人が多く、何かトラブルに巻き込まれるのも厄介なので

人通りの少ない裏の道を通って帰宅する。


「並木道を静かに歩くのもいいもんだなぁ。」


感慨に耽っていると。



タッタッタッタッタッタ タッタッッタタッ... ズゴォォォォッ



明らかにロリ少女っぽい子が

目の前でずっこけた。



「ふ、ふ、ふぇぇ....うわぁぁぁん...!」


泣かれた。

俺はなんというか

どうしたらいいんだろうと思った。



とりあえず

スルーすることにした。



その子の横をスーっと通り過ぎ、

俺は帰路を急ぐ。


すると後ろから思い出したくない人物を連想させる声がした。


「お嬢ちゃん大丈夫?...

 ちょっとそこの君、スルーするなんてヒドイじゃない。」



俺はそのまま振り向かず全力疾走。



「あ、ちょっと...!!!」

「俺は知らねェェェェっぇぇぇ!!!」







はぁ、はぁ、はぁ、はぁ.....

はぁ・・・・


あの声...いや、俺の気のせいだろう、うん、きっとそうだ。



静かに息を吸い、家の中に入る。


「ただいまー・・・っと・・ん?」


女物の靴・・・。

母さんは仕事で帰ってきてないし、かと言って俺は一人っ子だし。


「誰かいんの・・・?」


 不信に思い、恐る恐るリビングへ向かう。


「あら、臨也くんじゃな~い。おかえりなさ~い。」

「・・・!!夏美おばさん!?」


久しぶり、そう振り返って派手化粧を見せたのは、

あの憎き女の母親、夏美おばさんだった。


「・・・なんで勝手に俺の家に入ってるんですか。」


これってあれだよね、不法侵入ってやつだよね、

大の大人が何してんの。。


「あー、お金貸して欲しくて....

 ほら、あの子も"コッチ"に帰ってきたから。」


どういうことだ。

あの女は小学を卒業した直ぐに田舎の実家に戻ったというじゃないか。

・・・戻ってきたということは。


「なんかね~、旦那のお父さんが急逝したらしくって~、

 面倒が見きれなくなったから、私に返品されちゃった~えへへ」

「返品・・・だと....??」


夏美おばさん全然変わってない。

小学生の時から思ってたが、よくこんな奴が親になれたな。

少しあの女に同情する。


「お金貸して欲しい、ってそれは俺の母さんには言ったんですか。」

「えー、イイじゃない、昔馴染みの仲なんだから~ん」

語尾を上げてまるで媚びを打つ猫のよう。

「・・・はぁ?」


意味がわからない。

あんたが働けばいいだけじゃないか。


「それ犯罪になりますよ。」

「やっだー、臨也くんたら..怖いこと言わないでちょうだい!」


・・・。真面目に犯罪になるんだが・・・・。

これはダメだ、帰ってもらおう。


「お帰りください。母もまだ居ないので。」

「えーー、貸してちょうだいよ~」


ね、ね?

縋るような目つきが気持ち悪くて。


「・・・赤の他人に貸す金なんてねぇんだよ!! とっとと失せろカス!!」

「チッ、使えないガキね。」


本性、垣間見える。


バタン!と閉められたドアの先を見つめた。



「あいつが"コッチ"に帰ってきてる・・」


まあ俺と同じ高校なんてわけはないだろうが。




俺はしばらく自分の部屋で

珍しくあの時のことを思い出していた。



━━小6 秋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2学期が始まってすぐのことだった。

「誰だよ俺のノート盗んだの!!」


母子家庭だった故に、母親は毎日遅くまで仕事してて、

お金を一生懸命稼いでくれているその背中は、俺にとって誇らしく思う物で、

その母親が貯めてくれたお金で買ってもらったノートは、すげぇ大切で。


頑張り屋な母を持った俺自身のことも嫌いじゃなくて。

だからこそいじめのターゲットだったんだ。


『なんだよ、俺たち疑ってんのかよ。』

『お前のノートなんざ盗むわけねぇだろ』

『逢坂の家って、ビンボーなんだろ、くっせー』

『トイレで飯食ってんだろ、家狭くてカワイソー(笑)』


「・・お前らァァァ!!」


普段俺のことでいじめられても黙認してたが、

この時ばかりは腹が立った。

下校時間過ぎるまで喧嘩した、まあ所詮小学生レベルだったけど。


結局見つからなくて、仕方なく奴らを開放した。。

その時見上げた空は曇り空で、俺の心の鏡だった。


「母さん・・・ごめんな・・」

肩を落として帰ろうとしたら。

「逢坂くん!!」


クラスメイトの女の子が走ってきた。

その子は学校中を必死に探し回ってくれたらしい。

髪の毛もボサボサで、汗だくで、息が荒かった。


「・・これどこで見つけたの?」

「教室の下! えーっと中庭!」


なんでわかったんだろう。純粋に思った。


「うふふ、内緒~」

!?

心の中を読まれた・・!?


薄く微笑みながら俺の横に立つ女の子。

「私ね、自分に自信が持てる人は素敵な人になるんじゃないかなって思うの。」

「・・・え?」

「だって、自分のことが好きってことは、親の存在をも包み込めるってことだよ。」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




当時の俺にはよくわかんなかった。

(ああ、たしかこの子国語で100点取ってたな。)


そんなことを思ってた。


今となってはよく分かる。



あれを言われて俺はマジなナルシストになってしまったんだ。

だからこそ、屈辱的な思いを知ることになった。


北原。お前が言ったことは正論だった。

だから俺が勘違いしたんだ。

だからお前を憎むことになったんだ。


俺が弱いから。



まあ、だからこそ厄介なことに巻き込まれて

お前を面倒だと思うようになったんだがな。




「ただいまー・・・」

「ん。おかえり、母さん。」


気づけば夜の6時になってた。

夜ご飯の支度をしてその日は終わった。

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