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らうんど1



見切り発車でまいります。





 「いぃぃぃぃぃぃやぁぁぁあぁあぁぁぁ! ひーとーさーらーいぃぃぃぃぃぃ!」


 「だああっ、うっせえ! 人聞きの悪いこと言ってんじゃねぇ!!」


 「ひぃぃぃぃっ」



 睨む不良に泣き叫ぶもやし娘。ちなみに、ガタイも良ければ顔もいい不良はひょろひょろのもやし娘を荷物のごとく持ち上げている。


 ここが街中なら通報されかねない光景だけど、悲しいかなここは我が城。見てるものと言ったら壁に貼られたアニメキャラのポスターかフィギュアくらいなもので誰ももやし娘、つまりわたしを助けてはくれない。



 「おい、こらもやし! いい加減太陽の光を浴びろっつってんだろ!」


 「け、けけけけ結構ですぅぅぅぅぅう!」


 「結構じゃねぇ! おまえの意見は聞いてねぇんだよ、もやし!」


 「ひぃぃぃぃっ」



 この金髪でピアスじゃらじゃらでチャラチャラした格好をした男、何を隠そうわたしと同い年の幼馴染っていうやつである。だがしかし、ありがちな親ぐるみで仲がいいだとかわたしがこの不良を好きだとかそんなことはまったくない。本当にただ小さい頃から知っているだけの仲である。ここまでくると幼馴染というのは言い過ぎかもしれない。ただの顔見知りだ。


 だというのにこの男ときたらしつこいことこの上ない。わたしの城にずかずか乗り込んできたかと思えば、やれゲームをやめろ外に出ろと、おまえはわたしのお母さんか。


 というのは、もちろんチキンなわたしは口に出せないわけだけど。



 「はなっ、離してくださっ」



 こいつめ、ゲームのいいところで来やがって! もう少し、もう少しでイチくんからのあまーい愛の告白が聞けたというのにっ! ヤツが侵入してきたことに驚いてセーブもせずに電源切ってしまったじゃないか!



 「なっ、なに泣いてんだみちるっ。わ、悪かった、な、ほらおろしてやるから泣き止め!」



 今頃イヤホン越しに囁いてくれていたであろうイチくんの甘い告白を思い涙するわたしに、ヤツは途端にあたふたしはじめる。まったくもって意味がわからない。顔の傷と女の涙は勲章とか馬鹿なこと思ってそうな見た目のくせに。



 「みちる? おいっ、みちる! 聞いてんのか、てめぇこらっ嘘泣きかっ!!」



 足が床に着くと同時に、ベッドの上に投げ出された携帯ゲーム機に駆け寄る。ああ、イチくんっ! また最初からになってしまったけど、待っててね……!



 「てめっもやし! 出てこいっつってんだろうが!」



 ゲーム機片手に布団に潜り込むわたしに怒鳴り声が浴びせられるが、知らないったら知らない。ここはわたしだけの城なのだ。王様も王子様もいないけど、気分だけは囚われのお姫様なのだ。


 だから、



 「ふざけてんのかっ! おまえ、そんな青白い体で大丈夫なわけねぇだろ!!」


 「いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁっぁあぁぁ!」



 わたしのことはほっといてください……!!





彼女の名前はみちるちゃん。彼の名前はしばらく出てこない、かもしれない。実は名無しのまま発車してたりする。



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