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第8話 面接の手引き

相変わらずの遅さ

その日。しーくんたち3人は蜘蛛の子亭の食堂にいた。まあ週に何回かある休みの日である。元々娯楽が少ない世界で、だから休みだと言われても3人とも特にやることがないので、なんだかんだで集まっている次第である。



「アンナちゃんアンナちゃんアンナちゃん!!」

「なんだうっさい」

「前にも言ったけど。アンナちゃんはただでさえあんまり食べないんだからもっと食べないと駄目だよ」

「いや。お前の食べっぷり見てると食う気がなくなる」



確かに。現在、このパーティの財政を圧迫しているのは明らかにしーくんの食費である。確かにアンナは運動量に比べてあまり食事をとらないが、それでもしーくんの食い気に比べれば遥かにマシといえる。



「だからわた――」

「……は?」



ドンガラガッシャーンと、轟音を立てて目の前で座っていたアンナが一瞬にして消え去る。よく見ると、机や椅子などを巻き込みながらも”赤いそれ”はアンナを抱き寄せて頬ずりをしていた。



「アンナ~~~! 会いたかったぞ~~~!!」

「うるさい、触れるな馬鹿力」



それは赤い怪物だった。どこか人間に近い風貌を持ちながら、女性としては規格外に近い180の身長にアンナよりも明るい赤い髪。だが、髪の色と同じ赤い鎧を着込んでも、その頭に生えている角と尾から出ている尻尾に背中から生えている蝙蝠のような羽。そして鎧から覗かせる赤い鱗は隠せていなかった。



「蜥蜴……じゃないな。もしかして”竜”の魔族か」



この世界では様々な種族がいることから、こういう輩は珍しくない。そして風貌は人間に近く、それでも何かしら動物のような特徴を残している種族を総して魔族と呼んでいるのも。



「……なんなんだ。あのおっぱいさんは」

「お前はそこしか見ないんだな。確かに大きいけど」



鎧を作った際に胸までは完全に覆えなかったのか、ババアよりも大きいその胸は鎧で覆われていない。それに顔を付けながらも、アンナは必死に逃れようとしているが。そこへドスドスと女将さんが歩いてきて、竜族の彼女の首根っこを持ち上げる。



「相変わらずだね、ガネット」

「女将も久しぶりの馬鹿力だな。それにトドみたいな体格も変わってないなぁ」

「そんな!! 幾ら女将さんがデブだからって本当のことを言っちゃ駄目だよ!! 傷つくで――ぎゃっ!?」



女将さんはそのまま掴んでいたガネットをブン投げてしーくんに直撃させる。女性を重いと言うのはどうかと思うが、その身長と体と鎧も合わせれば相当になるのか、しーくんはそのまま壁にめり込んでいる。



「一体、俺がなにをしたんだよ」

「本当のことを言ったからだろ」



いつも通りの斜め上の発言にツッコミを入れるババア。女将さんは立ち上がったガネットを見て溜息をつく。



「なにしに来たんだい、あんた」

「いや。あたしの愛しいアンナが冒険者になったって聞いたから見に着たんだよ。で、誰とパーティ組んでるんだ?」

「あれだよ」



女将さんが指をさした先にはいつもの3人がいた。



「おっぱいだよ! 理想のおっぱい!!」

「でもあいつ。金色の女だぞ」

「はぁっ!? タイチョーなんなの死ぬの? マジありえなハァ!?」

「キレ過ぎだろ落ち着け」



地団太を踏んで本気で悔しがっているしーくんを止めるババア。それを見てアンナは呆れたように口を開く。



「でもあの赤いの、救いようのない馬鹿だぞ」

「えっ? じゃあスタイルも悪くて性格も悪いアンナちゃんはどうしたらいいの!?」

「お前を殺すことぐらいは出来るだろ」



馬乗りになってしーくんを殴るアンナを見て、いつも通りの光景だと思うババアと女将さん。しかし、それを見たガネットは面白そうな物を見つけた子供のような顔をして3人に近づいていく。



「始めまして。うちのアンナがお世話になってるな。あたしはガーネット。気軽にガネットでいいよ」

「お前のじゃない」

「いやいや。アンナは昔のあたしたちにソックリだからな。つまりあたしの家族も同然だからな」



ただでさえ大きな胸を張るガネットと不機嫌そうなアンナを見比べるしーくん。



「でも胸は違うよ!?」

「大きなお世話だ!!



ゴスリと鈍い音と共にしーくんの鳩尾にアンナの拳が突き刺さる。それを見なかったことにして。ババアが手を上げて口を開く。



「ガネットさんは女将さんと知り合いなのか?」

「あぁ。昔、女将が冒険者やってた時の仲間だ」

「えぇ!? 女将さんって昔、冒険者だったの!?」

「意外だったかい?」



意外というより納得というか。この治安の悪い街で宿屋なんかをやっているのだからそれだけで凄いことだし、この宿屋にいる誰もが柄の悪い客を軽く追い払う女将さんの姿を1度は見ているだろう。



「意外っていうか。俺は女将さんはてっきり魔物的ななにかだと思ってたから。オカミコング的な」

「ふんっ」

「ぎゃっ!?」



轟音がしたと思ったらしーくんが漫画よろしく地面に頭から身体半分ほど埋まっていた。それを見た店の客は女将さん相手に2度と逆らわないことを決めた。



「それで女将。今、アンナが冒険者になって店員の数は大丈夫なのかよ」

「正直、あまりよろしくないね」



元々、この大きさの店には珍しく女将さんアンナ、それに厨房に1人のメンバーでやってきて。偶に冒険者のバイトが定期的に入ったりするが、それが毎日になると難しい。ならば新しく雇い入れればいいのだが、それもそれで難しい。


この街で相応の雇用関係を結ぶというのは相当難しい。治安の悪さもさることながら、雇った人間が店主を殺害したり店の売り上げを盗んだりは日常茶飯事。マトモな子を雇っても人為的な事故で亡くなることは珍しくない。アンナぐらい戦闘能力が高ければ別だが。



「でさ。あたしの知り合いに今、フリーの奴がいるからこっちで引き取ってくれないかなぁって」

「……強いのかい?」

「強いよ。やる気はないけどね」

「後、胸が大きかったらアンナちゃんとこうた――」



あっちで余計なことを言ったしーくんが殴り殺されそうなのだがともかく。



「じゃあ面接でもやるかい。いつこられるんだい?」





その日の夜。既に店は終わった店内で面接が始まろうとしていた。ちなみにしーくんたち3人も興味本位でいる。そして当の女将さんは本人を前にして、既に頬を引くつかせていた。



「あの~あんまりやる気ないんですが、よろしくお願いするっすよー」

「あぁうん。あまり面接でそう、やる気がないとか言わない方がいいよ」

「そうなんですか? まあうっち、そういうのわからない人なんで」



やる気のなさそうな声で話しているのは、本日ガネットさんからご紹介に預かった目の前の少女である。やる気のなさは声だけではなく、姿勢からいって既に人を舐めている。容姿はそこそこ見られるのに、手入れなど殆どやっていないであろう髪は彼女の残念感を加速させているし、手をポケットに突っ込みっぱなしなのもマイナス。更には視線を一度も女将さんに合わせようとしない。普通の店ならその態度だけで速攻落ち確実である。



「あんた。接客の経験はあるのかい?」

「ないっすっよー」



その舐めた態度に女将さんが一瞬だけ、拳を握ったのをババアは見たがわざわざそれを指摘するほどババアも命を軽く扱っていない。ちなみにこんな時、真っ先に暴力を振るうであろうアンナは今日ばかりは大人しくしている。まあそうなることを予見して予め女将さんが釘を刺しておいたのだが。



「ふふっ。それじゃあまずは手始めに、上を脱いでもらおうか」

「死にな」

「ぐぇっ!?」

「とまあこのように。暴漢はこうやって抑えるんだよ。覚えておきな」

「人を机ごと粉砕するのは無理ですね」



拳の一撃によって机ごと地面にめり込んだしーくんを一瞥すらしないバイト少女。その態度に対して既に諦めているのか、知り合いの紹介なので無下に出来ないのか女将さんは椅子に座り口を開く。



「それで、簡単に接客の方法を覚えてもらうわけだけど、そうだねまずは……」



女将さんが周りを見渡し、その視線はなぜかドヤ顔をしているしているアンナを素通りしてババアの方へと向けられる。



「ババア。あんたが見本を見せてやりな」

「うん。それはいいんだけどさ。女将さんにまでババア呼ばわりされると本当に凹むから止めてくださいお願いします」



涙を流して必死さを訴えるババア。流石に自分よりも年上な女将さんにまでババア呼ばわりされたのは堪えたらしい。でもまあご指名とあらばと準備を始めるババアだが、それに物申す人がいた。



「女将さん。見本なら私が見せる」



その言葉に女将さんとババアはなんとも言えない顔になる。少なくともアンナがマトモな”お手本”になるとは到底思えない。そしてしーくんに至っては体を小刻みに震わせている。



「し、死人が出るぞ」

「あながち間違ってないのが怖いな」



十中八九。この中で死ぬのはしーくんになるのだが。きっと当の本人はそこまで考えが至っていないのだろう。そんな鮮血降りしきる場になるかと思いきや、女将さんから横槍が入る。



「アンナ。あんたはうちの奥の手だからね。どっしりと後ろに構えるのも先輩としての役目だよ」

「……そうか。わかった」



(女将さんもアンナちゃんの扱い方、よくわかってんなー)



少なくとも自分が言ってもいうことは聞かないだろうなと苦笑するババア。こういう所も可愛いのだが。



「よかった。死ぬ人はいないんだね」

「死にたくなかったら本当に黙ってろよ」



そういう可愛さはしーくんには一生理解出来ないだろう。ババアは溜息をつきながらも、女将さんを客に見立てて接客を開始する。



「いらっしゃいませ!!」



本人が生前、接客業をしていたと言うだけあってその姿は様になっていた。それになにより、ババアには花があった。何度か暇なときに店に出ているババアだが、それなりにファンのようなものが出来ていることからもそれが窺える。



「とまあ。こんなもんだな」



一通り接客をしてババアは椅子へと座る。少なくとも手本としてはこれ以上ないぐらいの出来だっただろう。ただ……



「いや。うっちにここまで痛々しい真似は出来ないっていうか……」

「痛々しくて直視できないウェイトレスさんとか最悪だよ」

「無理が祟ったな」

「なんでこんなに仲がいいのこの3人!?」



頑張ったのに結局はこの仕打ち。ババアの報われなさは異常なレベルだと思う。



「まあ痛々しいのは認めるけど、接客としてはこれ以上ない見本だったよ」

「むしろ女将さんが進んで止めを刺しにきてるんですが」

「よし! なら次は私だな」



なにが”よし”なのだろうか。女将さんももう止める気はないのか口を出さない。アンナはスタスタと歩き、ババアの胸を叩く。



「ババアが客役をやれ。しーだと私が殺しかねない」

「わかってんなら我慢しようぜ」



我慢が出来たらそれはアンナじゃないのだが。ババアもそれは嫌だったのか大人しく席につく。その机へと愛想笑いどころか、少しも笑みを浮かべていないアンナが近づいてくる。



「いらっしゃいませっ!!」

「うわぁっぷ!? ちょちょちょっと待って!!」

「なんだババア」

「なんでいらっしゃいませと同時にお冷をあたしの顔にぶっかけてんの!?」



そこには水をかけられてびしょ濡れになっているババアがいた。少なくとも客にいきなり水をぶっかける接客など正気の沙汰とは思えない。しかし、アンナはその姿を見て初めて微笑のようなものを浮かべる。



「肌に潤いが出ただろ」

「余計なお世話だよ!!」

「こちらがメニューだ」

「涼しい顔して続けようとしないで!!」



必死の訴えも空しく、アンナがババアの言うことなど聞くはずもなく何事もなかったかのように続けていく。



「じゃあ注文が決まったらあっちが出口なので」

「帰らせたいの!?」

「……チッ」

「そして舌打ち止めて!!」

「ババアがいると店の空気悪くなるって話だろうか。そんなのもわからない更年期障害かババアの分際で」

「もう黙って! わかったから!!」



アンナの口撃にノックアウト寸前なババア。まあ客相手にする口の利き方ではないが。



「でもこれなら参考になるっすねぇ」

「参考にしちゃ駄目な例だよ」

「じゃあ次は俺だね」



そしてなぜかしーくんが立ち上がる。確かにしーくんは料理だけなら人並み以上に出来るのだが接客はどうなのだろうか?



「俺に任せてよ。接客の1つや2つ、軽くこなしてあげるからさ。まずは裸エプロンで――ぎゃっ!?」

「止めろ」



服を脱ぎだすしーくんをドロップキックで止めるアンナ。これはしーくんが悪い。



「あぁ。そういえば簡単な料理ぐらいなら出来るっすよ」

「でもうちは厨房は足りてるからねぇ」

「そうなんっすか? でもま、味ぐらいは確かめてくださいよ」

「待て」

「なんっすか、おチビちゃん」



おチビちゃん。少なくとも新人のこれまでの態度にフラストレーションを溜めていたアンナに言っていい言葉ではない。ただでさえ、短気な上に老若男女容赦なしのアンナだ。これは血の雨が降ると思われたが。



「まずは私が作る」

「……どうぞご勝手に。うっちは後でやらしてもらうっすよ」



意外なことに特に修羅場には発展せず、アンナはとっとと厨房に入っていってしまった。だが、それでも不安の種は尽きない。



「アンナちゃんって料理出来るの?」

「あたしも見たことないんだけど、女将さん?」

「いや。私も見たことないねぇ」



一気に不安が加速する。でもあんなに自信満々に入ったのだ。流石に食べられないものが出てくるとも思えないが。



「出来たぞ」

「スープか?」



全員の目の前に出されたのはスープだった。ならばなぜ疑問系かというと、そのスープが水のように透明で匂いもしなかったからで。全員で顔を見合わせながらも、食べないわけにはいかないのでそれを口に持っていく。



「これはっ!?」

「どうだ、美味いだろ?」


((塩水だ!?))



誰が飲んでもわかるレベルの塩辛さ。恐らく、水を煮てそこに塩をぶち込んだだけのスープ……いや、食塩水だろう。だが、なぜこれでアンナはドヤ顔が出来るのか誰一人として理解出来なかった。



「凄いよこれ!? 海の味がする」

「白目むいてるぞ」



なぜか白目になりながらも狂ったように食塩水を飲み込み続けるしーくん。それを尻目に見ながら、味について沈黙を守っていた新入りが口を開く。



「ちょっと待っててもらっていいっすか?」





アンナが作ってきた食塩水を回収して10分程経って新入りが戻ってきた。その手にはさっきと同じようにスープの皿が握られている。



「これってさっきのスープだよな。なんか入ってるけど」

「食べてみればいいっすよ」



先ほどとあまり変わっていないスープを全員が恐る恐る口に運んでみるが。その反応はさっきとは正反対のものだった。



「確かに塩味だけど。こっちのはなんか体が温まるね」

「普通に美味いじゃん」

「うっちは刻んだネギと摩り下ろしたしょうがを入れただけっすよ。まあ塩スープ自体はそんな珍しいもんじゃないっすし」

「うん。これなら採用してもいいかね」

「待て」



ここで再び、アンナからストップがかかる。スープ自体は全然悪くない。むしろアンナの食塩水の評価が悪かっただけに、それをここまで改善した新入りの評価は高い。だが……



「私は……」

「アンナちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫だって」

「しー」

「あの子の胸じゃ、どう頑張っても看板娘にはなれないから。アンナちゃんの胸板がナンバー1だぜ」

「いや、死ねよ」



いつも通りボコボコにされているしーくんを見て、ババアと女将さんはなんともいえない顔をしていた。





あの後。正式に採用が決まり、ババアと女将さん。それについさっきやってきたガネットが加わり。安い酒を開けて3人で談笑していた。



「で、最後は坊主がボコボコにされて終わり?」

「だねぇ。どうしてあのクズは空気が読めないかね」

「あれがあいつだからなぁ」



そういうところはもうどうしようもないのだろう。既に諦めている部分でもあるが。



「でもアンナにとっちゃ、居場所が奪われるみたいで嫌だったんじゃねーの」

「かもね。あれでもアンナはうちの看板娘としての誇りみたいなものもあったかもしれないし」



本人は無意識の内だろうし、言っても否定するだろうが、アンナの中でそういった焦燥感があったのは事実だ。長いこと店番をやってきて、アンナにとって第二の故郷みたいな店に知らない人間が入ってくる。それが例えようもなく嫌だったのだろう。



「あたしたちだって無茶してた時代があったからね。多少のことは目を瞑ってやれよ」

「わかってるよ」

「ふ~ん。女将さんが無茶してた頃とか想像がつかないけど」

「昔は3人で夜盗紛いのこととかしてたからな」

「ちょっと!!」

「へぇ。興味あるな詳しく」



噂好きな女の子の興味からか、ババアが珍しく目を輝かせながら身を乗り出す。



「あたしたち、あたしと女将とウルフってもう1人いるんだけど。似た様な時期にこっちに来て気があったからな。直ぐに組んだんだ。あの頃は開拓時代だったしな」

「女将さんって開拓時代からいたの?」

「まあね」



開拓時代という言葉にババアが驚くのは無理はない。200年前。1番最初にここに送られた100万人はこの世界を見て驚いたという。迷宮への入り口とポツンと立っている輸入用の泉。それ以外は建物すら立っていない荒野の真ん中。1つの質問とクリア条件だけ知らされた彼らは混乱した。どうやって生き残るのか。

少なくとも冒険をするにも拠点はない、食べるものもない。当然、争いが起こった。その頃の治安の悪さは今の比ではない。そしてその争いが平定するまでに100年。その100年は開拓時代と呼ばれ、そこで生き残った多くが今はそれなりのポストについている。



「鉄の森にあるものなんて食えたもんじゃないし。輸入しようにも食料は高いし。食いたきゃ誰かから奪うかって時代だったからね。そん時に隊長に出会ったんだよ」

「あぁ。見た目だけなら金持ちそうだしな」



あの趣味の悪い黄金の鎧を思い出す。あの格好だけなら絶好のカモだったろう。



「当然。あたしたちは半殺しにされた」

「だろうな。あいつ女だからって容赦なさそうだし」



実際容赦なかったからとは言わないババア。



「んでその後。あたしたち3人を飯屋に連れて行ってこう言ったんだ」



『お腹空いてるんだよね。ここは僕の仲間がやってる定食屋だから食べていっていいよ。その代わり、もうこういうことしちゃ駄目だよ』



「人の腕折っておいてなに言ってるんだよって思ったよ」

「全員、飯の味がわからないぐらいボコボコにされてたしね」

「へぇ。それであの金色と一緒に行くことになったのか」

「いや。その後、隙を見てあいつの財布を奪って逃げようとしたら更にボコボコにされてさ。そっからあの人に付き従うようになったんだ」

「…………」



途中まで良い話だった気がするのだが。まあ本人たちが幸せならババアとしても言うことがない。



「あたしたちも穀潰しだったからな。アンナには妙に共感するところがあっからさ」

「私たちが隊長に出会えたように。アンナにもそういう人が出来るといいんだけどね」

「……難しいかな」



少なくとも直ぐに手が出る性格をなんとかしないとどうにもならない気がする。散々暴力を受けても離れていかないM男疑惑のある男なら近場にいるのだが。



「辛気臭い話はこれで終わりだ!! ババアも飲めよ!!」

「ババアは止めてホント。あたしの心が辛気臭くなるから」



この3人の飲み会は夜更けまで続いたらしい。そして新入りの評判はというと……



「えっと。A定2つとB定1っすね。面倒なんでA定3つにしとくっすね」

「えっ!? いや……うん。いいけど」



いつの間にかこの店のカラーに染まったのか。勝手に注文は書き換えるしやる気はないし仕事はいい加減だが。



「だけどなにかいいな。脱力系女子の時代か……」

「尻がいいな、最高だよ」

「まずアンナちゃんより胸がある時点でオールOKだね」

「死ねよお前ら」



蜘蛛の子亭に新しく入った新人はアンナと同じく、この店らしい従業員として客からの評判もそこまで悪くないらしい。


Tips 

その⑩ 塩っぽいスープ

鍋いっぱいのお湯に塩を一袋ぶち込んだアンナ流のスープ 

当初は袋半分ぐらいの方がいいんじゃないかと思ったらしいが 沢山入れた方がいいだろうというありがた迷惑な考えで一袋になったとか

マジで作ったら塩分過多で死ぬかもしれないので 良い子は真似しないでください

胸はないけどお尻がいい新人ですよ!! そんなことはどうでもいいんですが、9月1日は某カレー店のメニュー改定があって、>>1も早速行ったりとか


次回は割と長めな番外になるかもしれません それとこの話 後で書き足すかもしれませんのでその時はまた後書きでお知らせします

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