4/31
チャプター4
美波が学校で気絶していた頃
英子は自宅のマンションで震災による大怪我を負っていた。
夫の博史
は五年前から単身赴任で海外に行っている。
英子は動くことすら困難であった。
床に倒れ懸命に助けを呼んでいたが、誰も来ない。
英子は自分の死が近いことを悟った。
「美波・・・」
無意識に娘の名前を呟いていた。
今までの思い出がフラッシュバックする。
「私・・・まだあなたに何もしてあげられてない・・・」
英子は独り言のように言った。
「なのに・・・」
泪がこぼれる。
「なのに・・・」
うめき声を漏らした。
今日の朝の出来事が頭をよぎった。
「本当に・・・ごめんなさい・・・」
確かに、美波に押し付けすぎていた。
自分の理想に近づけようとしていた。
あの子には、あの子なりの考えがあった筈なのに・・・
私は、怒ってばっかし・・・
何も分かってあげられなかった。
もっと一緒に居たかった。
けど・・・
けど・・・もう・・・
そう考えると苦しくなった。
泪がボタボタと流れ落ちた。
「ごめんねぇ・・・」
英子は最期にそう呟いた。
心から謝った。
親として何もしてあげれなかった。
そして英子は動かなくなった。




