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それでも、生きたくて・・・  作者: 会原 夏武
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チャプター31『最終回』

美波達は非常階段を登っていた。

現在12階

既に息切れしていた。

「頑張れ」

翔が登りながら言った。

タワー内は真っ暗だった。

足元を懐中電灯で照らしながら登る。

ついさっきから小さな揺れが数分おきに続いていた。

島が沈んでいることを示すものだった。

拓哉は何も喋っていない。

里花が死んだときのショックがまだ残っているのだろうか。

どこからともなく、水の音がした。

時間がなかった。

「今、何階?」

美波が翔に訊ねた。

「15階だ」

翔が答えた。

美波は頷いた。

その時、突然大きな揺れが三人を襲った。

咄嗟に翔と美波は手すりに掴まったが、拓哉は階段を転げ落ちた。

痛々しい音を立てながら。

「拓哉!」

美波と翔が駆け寄った。

「大丈夫か?」

翔が言った。

「脚が骨折した」

拓哉が定まらない焦点で答えた。

「え・・・」

美波が言葉につまった。

「置いて行け・・・」

それらの言葉は美波達に向けられた物ではなかった。

自分自身に言い聞かせる様な、一言一言確認するような言い方だった。

「無理だよ」

美波が言う。

「足手まといになるだけだ・・・さあ、早く」

拓哉がはっきりと言った。

「でも・・・」

そこまで言いかけた美波の手を翔が引いた。

「行こう」

翔が美波に言った。

美波は泪を溢した。

「早く」

翔が続ける。

「後から、必ず来てね!約束だからね!!」

美波がそう言って翔と共に階段をかけ上がった。

一人残された拓哉は虚ろな目をして

「行くさ・・・必ず」

と、独り言の様に呟いた。

その声は誰にも届かなかった。


50階のヘリポートに美波と翔は来ていた。

ヘリは飛び立つ寸前だった。

「待って下さい!」

翔が叫んだ。

「早く乗りなさい」

中に乗っていた軍服の男に引きずり込まれる様にして二人はヘリに乗った。

ヘリには美波達の他に三名、既に乗っていた。

「よし!離陸だ!!」

男が叫んだ。

ヘリはプロペラを回し徐々に高度を上げていった。

島は傾いていた。

沈んでいることが分かった。

ポートタワーが傾いていた。

そして、傾きに耐えられなくなったタワーは美波達の乗っているヘリの方に崩れた。

不気味な音を立てて・・・。

「避けろ!!!」

パイロットが絶叫した。

しかし、避けきれず破片が直撃した。

凄まじい衝撃がはしる。

「キャャャ!」

美波が悲鳴を上げた。

ヘリは高度を下げていった。

島も沈んでいた。

車が

家が

店が

学校が

ビルが

会社が

残された人々が

海水に呑まれて行った。

思い出が

希望が

夢が

それと同時に消えた。

「美波!俺を見ろ!」

高度を下げるヘリで翔が美波に言った。

「くそ!!!!」

パイロットが叫ぶ。

もう、どうしようもなかった。

美波と翔は抱き合った。

人の温もりを感じた。

そしてーーー

ヘリは海に墜落した。



朝。

美波は自宅のマンションの前に立っていた。

震災前のいつもの街だった。

美波は悲しげな表情をしていた。

「美波」

誰かが美波を呼んだ。

声がした方向を見ると三人の人影が立っていた。

少し近づくとそれが翔達だと気付いた。

美波は駆け寄った。

そして、翔に抱きついた。

翔は戸惑いの表情を一瞬見せたがすぐに笑顔に戻った。

いつもの、あの優しい笑顔だった。

「ずっと、こうしたかった気がする・・・」

翔は微笑みながら美波の頭を撫でた。

「二人とも、良いとこ悪いけど早くしないと学校に遅れるよ」

翔の横にいた里花が言った。

「遅刻は勘弁だぜ」

拓哉が無邪気な笑顔で言う。

「うん、行こう!」

美波は精一杯の笑顔でそう言った。

「あぁ、行こう」

翔が言った。

四人は、まだ登り始めた朝日を背に、学校へ続く道を歩き始めた。

四人の笑い声が、いつまでも、いつまでも、街中に響いていた。


『ねぇ皆、私と居れて幸せだった?私はすごく幸せでした。色々、楽しいことしたね。夏祭りも行って花火も見たし、誰かが誕生日の日には誕生日パーティーもしたしクリスマスパーティーもしたね。

さよならは言わないよ?もうすぐしたら行けるから、だから……待っててね』

今まで応援有り難うございました。

『それでも、生きたくて・・・』は無事に最終回を迎えることができました。

これからも、小説は書き続けるのでよろしくお願いします。

m(__)mm(__)mm(__)mm(__)mm(__)mm(__)mm(__)m

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