チャプター29
里花が足を怪我した事によって進むスピードが少し落ちた。
だが、確実にタワーには近づいている。
里花が歩くのが辛そうな時は手をかしてあげる。
しばらく歩くと、四人の目の前に商店街が現れた。
やはり、人は居ない。
左海と別れてから生命体と会っていない。
四人は商店街に足を進めた。
本屋
服屋
八百屋
雑貨屋
文房具店
花屋
色々な店がところ狭しと並んでいた。
地震が起こる前は賑やかだったのだろう。
しかし、今は見るも無惨に破壊されてしまっている。
「酷いな・・・」
拓哉が呟いた。
「今に、始まった事じゃないだろ」
翔が言う。
辺りは薄暗くなっていた。
「急いで行こう」
翔が足を速める。
その時、突然の揺れが四人を襲った。
ガラスが割れる音がする。
だんだんと小さくなっていった。
「さあ、行こう」
翔が再び歩き始めた時、美波は異変に気付いた。
後ろで轟音がする。
四人が振り向くと商店街のアーケードが崩れてきていた。
四人に迫ってくる。
「走れ!」
拓哉が叫んだ。
四人は出口に向かって走り出した。
音が近づいて来る。
間一髪の所で商店街から脱出した。
「危なかったな」
翔が膝を手で押さえた。
そこで、美波は一人足りない事に気付いた。
里花だ。
「里花が・・・居ない」
美波が二人に言った。
「えっ?」
拓哉が崩壊した商店街を振り返った。
瓦礫の隙間から包帯を巻いた腕が見えた。
里花だった。
「里花!!」
拓哉が瓦礫を退かし始めた。
瓦礫に埋まっていた里花の上半身が露になった。
頭から血を流している。
目は、閉じていた。
拓哉が残りの下半身を引きずり出して地面に寝かした。
翔と美波は唖然とその光景を見つめていた。
「里花!目を覚ませ!!」
拓哉が里花に呼び掛ける。
拓哉は既に泣いていた。
何度も何度も何度も繰り返す。
その時
「拓哉・・・」
里花が目を開けて呟いた。
消え入りそな声だった。
「里花!」
拓哉が里花を抱きしめた。
「早く行こう!早くタワーに行ってヘリに乗ろう」
拓哉が里花に言った。
しかし、里花は首を横に振った。
「何を言ってるんだ・・・!?」
「私が・・・いたら・・足手まといになる・・・皆が間に合わなくなっちゃう・・・」
里花はそこで、一旦言葉を切った。
「だから・・・行って」
里花が言う。
小さく、聞き取れない程の声だった。
「無理だよ・・・里花を置いていくなんて・・・無理だ・・・!」
拓哉が首を振る。
「お願い・・・」
里花が泪を流した。
「無理だよ・・・だって俺・・・」
拓哉がそこまで言って言葉を詰まらせた。
「何・・・」
里花が拓哉に聴いた。
「俺・・・好きなんだ・・・里花の事・・・」
拓哉が言った。
告白であった。
しかし、里花はふっと笑った。
優しい笑みだった。
拓哉が驚いて里花の顔を見る。
「バカ・・・気付いてたよ、前から・・・」
里花が笑った。
大粒の泪を溢していた。
拓哉が号泣する。
里花は拓哉の頬に触れた。
それは、優しく包み込んでいるようにも見えた。
「拓哉・・・」
里花が言った。
拓哉が里花の顔を見る。
二人の目線が繋がった。
「大好きだよ・・・」
そして、拓哉の頬から手は離れ地面に落ちた。
全身から力が抜けたように動かなくなった。
目は閉じられていた。
「大好きだよ・・・」
それが、里花の最期の言葉となった。
拓哉は里花の亡骸を抱き締めた。
その光景を見ていた翔と美波も泪していた。
「なあ・・・美波」
翔が美波に話しかけた。
「ん・・・?」
「知ってたのかな・・・」
翔が拓哉と里花を見ながら言う。
「何を?」
「里花は、拓哉の愛を」
それを聞いた美波は優しい顔をして答えた。
「知ってたよ・・・だって、安心したように眠ってる」




