チャプター25
五人は夜を過ごすために広場に来ていた。
sunfieldと言う広場で、休みの日や連休になるとイベントや芸能人等がパフォーマンスを披露する場だ。
しかし、誰も居ないとなるとやはり寂しい。
広場の中心には噴水があった。
噴水に使われている大理石が冷たく月の光を反射して美波達の顔を照らしていた。
「静かだな・・・」
翔が美波に言った。
自然と小声になった。
「それより、少し寒い」
美波が手を擦り会わせた。
噴水の近くで近くに落ちていた木の枝を集めて、火を起こした。
優しい炎の光が五人の冷えきった体を明々と照らした。
昨日の様にして、炎を囲み寝ることにした。
静かだった。
不意に寝付く前の美波を翔が散歩に行こうと誘った。
美波は承知した。
左海が余り遠くに行かないようにと言った。
二人は、少し離れた木で出来ているフェンスにもたれかかった。
静かな風が二人の頬を撫でた。
「私、もう疲れちゃった・・・」
美波が言った。
「そう言うなって『限界を越えてからが勝負です』って言うだろ」
翔が言う。
「何それ?」
美波が翔に聴いた。
「忘れたのか?お前が陸上の練習の時によく着ている服の背中の言葉」
その言葉で美波は思い出したように
「あぁ」
と言った。
「でも、可笑しな言葉だよね?」
美波が笑いながら言った。
「何で?」
翔が聴いた。
「限界なんて越えたら、勝負できないじゃん」
美波が微笑みながら言った。
「確かに」
翔も笑った。
「早くこの島から出たいな」
美波がふと言った。
「俺も」
翔が同情する。
「て言うか・・・」
美波がそこで言葉を切った。
そして、翔の顔を見ながら
「早く大人になりたい」
と言った。
「どうして?」
翔が聴く。
「夢が有るの・・・」
美波が夜空を見上げた。
翔は黙って聞いていた。
「大人になって素敵な人と出逢って、結婚して、子供を産んで、貧乏でも良いから家族揃って笑って暮らしたい」
美波が夢を語った。
美波の『夢』とはごくありふれた『普通』の事だ。
だが、今の美波にとって『普通』は凄く幸せなものだった。
美波の啜り泣く声が聞こえた。
翔が美波を見る。
泪は頬を伝い雫となって地面に落ちた。
「私達、死んじゃうのかな?」
美波が泪混じりの声で言った。
「私、怖いの・・・」
翔は何も言わなかった。
「だから・・・少しだけ良いかな?」
美波が翔の手を握った。
翔は少し驚いたような顔をしたが直ぐに真剣な顔をして美波の顔を見つめた。
「少しだけ・・・心の拠り所にさして・・・」
美波が鼻を啜った。
美波が翔と繋いでいた手に力をこめた。
翔も握り返す。
そして
「大丈夫」
と言った。
「俺が守るから」
その言葉に美波がはっとなった。
「だから・・・もう泣くな」
美波の心に何か暖かい物が広がった。
「・・・泣いてないもん」
美波が泪で濡れた顔で翔を見た。
それから、精一杯の笑顔を翔に向けた。
そして
「ありがとう」
と言った。
今まで解らなかった気持ちが急に理解できた。
「好きになんかなる筈ない」と思っていた人物の事を「好き」になっていた。




