チャプター2
「近づかないで!」
美波が叫んだ。
今朝の出来事だ。
母親の英子が美波に近づこうとする
「来ないでよ!」
「美波・・・!」
「私の気持ちなんか何も知らないくせに!」
「母さんはあなたのために・・・」
「うるさい!私を母さんの理想にしないでよ!」
「!」
美波が玄関を飛び出ようとした。
「美波!」
英子が叫んだ。
美波は背中で応えた。
「あの三人と付き合うのはやめなさい」
その瞬間、美波は玄関を飛び出した。
「!・・・なみ・・・美波!」
翔の声で現実に戻された。
「なにこれ」
美波は自分が見た風景を見て絶句した。
窓ガラスは割れて
机は倒れ
本棚から本は飛び出し、信じられない所まで飛ばされていて、その本棚も、倒れていた。
壁も崩れている。
「地震だろ」
翔が答える。
里花は部屋の隅で震えていた。
美波は腕時計を確認した。
5時00分
教室に掛けられた時計を見た。
4時32分
約30分気絶していたことになる。
「30分も気絶してたんだ」
美波が言った。
「どうやらそうらしい」
拓哉が言う。
「じゃあ・・・早く逃げた方が良いんじゃ・・・」
里花が控えめに提案する。
少し皆で話し合った結果、逃げる事にした。
「誰かいますか!?」
翔が叫んだ。
「誰もいないって」
美波が言った。
「逃げ遅れた人がいるかも知れないだろ」
「私達が逃げ遅れてるのよそんな暇ないんじゃ・・・」
里花が呟いた。
「見殺しにはできないだろ」
その後も三階をさ迷った。
「誰かいますか!」
翔は叫び続けている。
その時、第三職員室から声が聞こえた。
「・・・けて・・・」
聞き覚えのある声だ。
職員室は一階、二階、三階にあり
一階から。
第一
第二
第三だ。
「今、助けます!」
翔は職員室に駆け込んだ。
三人もそれに続く。
「誰かいますか!」
職員室の中も酷い有り様だった。
「助けて!」
今度ははっきりと聞こえた。
奥の方からだ。
翔が駆け寄ると声を挙げた。
「榊原先生!」
その言葉に驚き三人は駆け寄った。
体が瓦礫に埋もれている。
榊原は二十代後半の保健体育担当の先生だ。
いつもジャージ姿である。
「足が挟まって・・・腕が骨折してるの」
榊原が訴えた。
彼女は生徒を下の名前、もしくはニックネームで呼ぶ。
「今、助けます。拓哉、手伝ってくれ」
「わかった」
二人は榊原の足にのしかかっている本棚に手をかけた。
「いくぞ!1・・・2・・・3・・・」
翔が掛け声をかけた。
本棚がひっくり返る。
待機していた美波と里花が榊原を引きずり出した。
榊原がうめき声を挙げる。
「大丈夫ですか?」
里花が榊原に言った。
「腕が・・・」
四人が榊原の左腕に注目する。
骨は骨折どころか、肉を突き破り外に飛び出ていた。
「・・・!」
里花が口を押さえた。
「どうすれば・・・」
拓哉が途方に暮れる。
「腕を・・・思いっきり手前に引っ張るの・・・」
榊原が苦しげに言う。
四人が顔を見合わせる。
「私がやる」
美波が咄嗟に名乗り出た。
榊原の前にしゃがむ。
「腕を引っ張るだけで良いんですか?」
「ええ・・・腕をはめ込まないといけないから・・・やるときは、躊躇しないで、思いっきり!」
榊原が歯を食い縛った。
「いきますよ!」
そういって美波は思いっきり腕を手前に引っ張った。
ゴリャッ
と痛々しい音を立てた。
里花が顔を背けた。
「・・・!」
榊原が声にならない悲鳴を挙げる。
「あぁ!ごめんなさい 」
美波は咄嗟に謝った。
「いやっ、完璧よ!」
榊原は笑って見せたが明らかにやせ我慢だ。
「後は?」
美波が聴いた。
「そこのカーテンを破いて包帯がわりにして。」
美波は榊原の言われた通りに腕を固定する。
「ありがとう」
榊原が四人に礼を言った。
その瞬間、地面が揺れた。
「余震!」
榊原が叫んだ。
皆、壁や柱に寄りかかる。
結構大きい。
しばらくするとおさまった。
「大きかった・・・」
里花が呟いた。
「いつまでもここに居られない、逃げないと」
榊原が言った。
皆はそれに従った。
しかし
それが運命かの様に・・・
最初から決まってたかの様に・・・
五人は逆らえない何かに引き寄せられていた・・・




