チャプター1
息を切らし、自転車をこぐ。
12月の空気が肌に突き刺さる。
道の段差に自転車が乗り上げると、かごに入れていたバックが跳ねた。
マフラーを後ろになびかせる。
信号で止まり、青になると、またこぎはじめる。
目の前の急な登り坂に差し掛かった瞬間、ギア付ママチャリのギアを4に落とす。
シャカシャカと自転車のチェーンの規則正しい音がする。
「はぁ・・・はぁ・・・!」
息づかいがそれにリンクする。
冬にもかかわらず、額は汗でべっしょりになった。
坂を登りきったらギアを6に戻す。
そして―
「ゴール!」
関水美波
は笑顔で鮫島中学校の校門をくぐった。
腕時計を見る。
「7分16秒」
美波は小さく呟いた。
よっしゃ!
と心の中で叫んだ。
そして、駐輪場に向かった。
美波のクラスの2年1組は2階にある。
美波は教室のスライド式のドアを開けた。
「おはよっ」
美波が元気よく言った。
しかし、教室には、まだ数人しかいない。
美波は腕時計で時間を確認した。
7時28分
生徒達が登校し出すのは7時50分だ。
少なくて当然である。
美波は自分の席に座った。
「おはよう」
美波の隣に座る
勇樹翔
が挨拶してきた。
「おはよ」
美波が返す。
「で、何分だった?」
翔の後ろに座る
宮武拓哉
が美波に聴いた。
「7分16秒」
美波が自慢げに言った。
「マジで!」
翔が驚いた様に言った。
「マジで」
美波が笑顔で言う。
そうこうしていると扉が開き
桜田里花
が教室に入ってきた。
「今日も寒いね」
と言いながら美波の後ろの席に座る。
「おはよう」
それを挨拶と捉えた拓哉が言った。
「記録、どうだった?」
里花が拓哉と同じことを美波に聴いた。
それを聴いた翔が美波にかわって応えた。
「すごーい」
記録を聞いた里花が目を輝かせながら言う。
「でしょ」
美波が得意げな笑顔を見せた。
「明日は拓哉の番だからな、里花に良いとこ見せないと・・・」
そこまで言いかけた翔を拓哉が止めた。
「バカっ!言うなって言ったろ!」
「でも、真実だ」
焦る拓哉と裏腹に翔はいったって平然だ。
えっ?と聴く里花に拓哉が何でもないと手をふる。
「何でもなくないだろ」
翔が言った。
「黙れよ!」
拓哉が顔面を真っ赤にして叫ぶ。
美波は拓哉を見て里花に惚れていると感ずいた。
美波達が通う鮫島中学校は海に浮かぶ
【人工島】通称【アイランド】にある。
人工島とは、太平洋に浮かぶ名の通り人工的に作られた島だ。
約一万人がこの島で生活している。
【人工島プロジェクト】は約30年前に開始して20年前に完成した。
鮫島中学校は全校生徒953人のごく普通の中学校だ。
美波は陸上部に所属している。
長い自慢の黒髪にスラリと長い手足、整った顔、スポーツもできて男子からの人気も高い。
活発な性格だ。
翔はハンドボール部に所属している。
部活で肌は真っ黒に焼けていて。
いかにも、リーダーと言った感じだった。
拓哉はテニス部に所属している。
優しい性格だ。
それ故に、あまりクラスでは目立った存在ではない。
里花はバド部に所属している。
少々短めの髪でおとなしい性格。
丸い目をしていて、まるでチワワのようだ。美人ではなく可愛のだ。
里花は恋愛ごとには鈍感だ。
拓哉の様子を見ていれば気付く筈だが気付かないのだ。
そして、担任の
榊原洋子
が教室に入ってきて美波達の1日が始まった。
つまらない授業をこなし下校時間が迫っていた。
「あ~疲れた・・・」
美波が溜め息を付いた。
「美波がそんなこと言うなんて珍しいな」
翔が美波に言った。
「私だって愚痴る時くらいありますよーだ」
美波があっかんべーと舌を出す。
「美化委員は誰だっけ?」
榊原が黒板の前に立ち言った。
「僕達です」
と拓哉と里花が手を挙げる。
「悪いけど、美化推進のポスターを3階に貼ってきて」
榊原がそう言ってポスターを10枚拓哉の机に置いた。
榊原は二人の返事を待たず、「よろしくね」と爽やかな笑顔を見せた。
帰りの会が終了し皆部活に向かい始めた。
「じゃあ、がんはれよー」
翔がポスターを持って三階に行こうとする二人に言った。
「二人で愛を深めちゃって」
美波が悪戯っぽい顔で拓哉に耳打ちした。
「なっ・・馬鹿な事を言うな!」
拓哉が顔を赤らめて言った。
「ほら、手伝え!」
顔を赤らめた拓哉は何枚かのポスターを美波と翔に手渡した。
「先いってるからな」
と言って拓哉は一人で三階に向かう階段をかけ上がった。
「あっ・・・待ってよぉ」
と言って拓哉の後ろ姿を里花が追いかける。
残された二人は顔を見合わせた。
「ポスター・・・どうする?」
拓哉が言う。
「そうだなぁ・・・まあいっか!手伝ってあげちゃお!部活サボる理由もできたし」
「拓哉&里花の恋の進展を見たかったのに」
「アハ・・・それじゃあ行こ!」
こうして美波と翔は三階に向かった。
「ねぇ、拓哉?」
ポスターを貼っている里花が拓哉に聴いた。
「どうした?」
「朝、私のことがどうとか言ってたけど、何のこと?」
「いやっ・・・別に何でもない」
「ふぅ~ん・・・変なの」
里花が頬を膨らませた。
その表情が凄く可愛かった。
「よぉお二人さん」
そうしていると、翔と美波が拓哉達の元にやって来た。
そして、四人で作業を開始した。
ポスターを貼り終えた四人は自習室にこもって話していた。
四人以外誰も居なかった。
その時、不意に翔が拓哉をベランダに呼び出した。
「どうした?」
拓哉が翔に聴いた。
「里花の事、好きなんだろ?」
翔はいたって真面目に聴いた。
「あぁ」
「じゃあ、告白しろよ。自分の思いを伝えるんだ」
「簡単に言うなよ!」
「簡単、簡単、自分の気持ちをそのまま伝えれば良い、それだけだ」
「・・・」
「確かに、里花は可愛くて、性格も良いスタイルだって抜群だ。誰だって惚れるさ」
「あぁ、やってみるよ」
二人は一緒に教室に入った。
「里花・・・ちょっといいか?」
拓哉がそう言ったとき
地面が大きく揺れた。




