選び取った未来
「お義父様、大丈夫ですか。泣いてらっしゃるみたいでしたので、慌ててお声かけさせていただきましたが」
その後、僕は倒れて3日間意識がなかったと、未来さんに聞かされた。
「ああ、大丈夫だよ。夢をね……ずっと夢を見ていたんだ。荒唐無稽な夢だったよ」
「悲しい夢だったんですか?」
「いや、全然。秀一郎が海と私の親友との子供でね、そこにほのかを嫁がせるんだよ」
本当に秀一郎は彼らの子供ではあるのだが……それは未来さんは知らない事だし、知らせる事もない事だ。
「それでね、私の妻が……誰かと言うと、未来さんのお母様なんだ」
「ぷっ、それ面白そうですね。そこに私は出てこないんですか?」
それに未来さんは吹き出しながらそう返した。
「ちゃんと出てきてたよ、秀一郎の妹としてね。未来さんじゃなくて美姫さんって名前になってたけれどね。下に、もう一人男の子もいた」
「私は秀一郎さんの妹なんですか。へぇ……」
未来さんは食い入るようにその話を聞いてくれたので、僕は思いつくままにその夢を説明した。普通夢と言えば目覚めれば大半は忘れているものだが、この夢のことは本当に細部まで脳裏に残っていた。
そうだ、健史が海を連れて逃げてくれたら、きっとこんな素敵な現実もあったかもしれない。僕はその世界に、一瞬紛れ込んでいたのかも。
「この話、母にしていいですか」
すると、未来さんがそう言いだしたので、驚いた。
「カンベンして欲しいな。第一、未来さんのお母様に迷惑なんじゃないかな」
「いいえ、迷惑じゃないですよ。喜びます。だって、初めての顔合わせのとき、父も母も口々に『初めてお会いした気がしない』って言ってましたもの」
「へぇ、私たちも海とそう言っていたんだよ。そう考えてみると、あなたと秀一郎は結ばれるべくして結ばれたのかも知れないな」
「そうですね…私たち運命の糸で結ばれてる。だからこんなに幸せなんですね」
未来さんはしみじみと、深く遠い目をしてそう言った。
いくつもボタンを掛けていくように選び取っていく未来。もしもあの時違うボタンを掛けていたとしたなら……僕たちはどんな違う未来を見ることができたのだろう。
そんなことを考えながら、僕はまた眠りの中に引き込まれていった。
僕が海や健史の所に旅立ったのは、それから1ヶ月後の事だった。
-Fin-
以上で「precious dream」を終わります。
何のことはない、夢オチでした。「マイプレ」健史の願望、「プレドリ」は龍太郎の願望という事で……
で、次回からはやっと彼らの子供たちの物語に入ります。しかも、「Parallel」「my precious」2作品入り乱れての後日談!
語り部は未来が担当します。なので、タイトルは「Future」(まんまじゃん!)に。これが「Parallel」シリーズの最終章になります。
さて、彼らはどこに行き着くのでしょうか。
よろしければ引き続きお付き合いください。