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シルヴィアの紡ぐ彗星  作者: えぬタン
★Third Comet★
30/31

☆第26話☆ 【緊迫な駆け引き】



「『魔族』だ。奴らの存在は魂だけで実態を持たない。でも弱点は必ずあるから、さっさと終わらせようか」


 私の言葉に反応したアトラは咄嗟に剣を構えた。


「信じられねぇ......本能的に剣を構えちまう......強いのか?」


「そうだね。今のあなたじゃ手に負えないくらいには」


「――は?」


「だから今回は私一人で倒すよ」


「じゃあなんで連れて来たんだよ!? 俺ただの足手纏いじゃん!」


「『魔族』っていう存在を実際に見て欲しかったからかな」


 するとアトラはまじまじと目の前にいる魔族に目を向ける。


「......生きた心地しねぇよ......俺は今までおとぎ話の中の存在だと思ってたから」


 魔族がいなくなって約千年の間、人族は平和すぎたからね。


 色々と戦争はあったものの、それは国同士による地位や物資の奪い合い。


 魔族によって何かを失うことなんてなかったから無理もない。


「今の時代、誰しもがそう思っているのですよ。そこにいる、少女のおかげでね」


 目の前の魔族が淡々と口にする。


「アトラは下がってて」


「お、おう......あとで色々と説明してくれよ」


 彼を後ろに下がらせ、私は無言で魔族と向かい合う。


「私は『シルヴィア』お前の名前は?」


 魔族に名前を名乗るのは癪だが、そうしなければいけない魔族も中にはいる。


 プライド。


 魔族の弱点の一つだ。


「おや、昔はただ無惨に私たちを葬ってきた者が名乗りを上げ、相手の名を求めるとは。どういった風の吹き回しでしょう」


 私の名乗りに疑問を感じた魔族は、手を顎に当て考えている。


「答えろ。お前の名前を。それとも自信がないのか? 名乗れるほどの実力が無いから」


 大抵の魔族は己の腕を過信している。だから煽りは奴ら相手には有効だ。


 そして魔族はしばらく黙り込んで答えを出した。


「......いいでしょう。その挑発に乗ってあげます。私は高魔族ディアベル様の配下、『ロフェル』と申します。お見知りおきを。しかしそれも今夜までの話」


「名乗りを上げたな」


 そうして私は、何もない空間から杖を発現させ構える。


 この魔族は昔に比べて力が増しているだろう。


 一筋縄にはいかなそうだ。


 どうやって力を蓄えたのかわからないけど、巧妙な手を使ってくることは間違いない。


「だからなんだと言うのか。その杖、覚えていますよ。銀色で手元に髪と同じ色をしたリボン。そして杖先にはその杖の象徴とも見える、青虹色に輝く星の形をした石。あの時もあなたはその杖で魔法を操り、私たちを翻弄しました。しかし、今はどうでしょう。一度見た技が私に通用するかどうか」


 ロフェルは余裕そうに笑みを浮かべ、反対に私を煽ってきた。


 だがそれが魔族だ。


 なんの問題もない。


「正直驚いたよ。昔は何もできなかった魔族がここまで力をつけていたなんて」


「魔族の本質は魔力。数百年もあれば力をつけることなど容易です。我が主人も今では私でも届かぬ高みへいることでしょう。その姿をこの目に映る時が楽しみで仕方ありません」


 どこまでもお喋りな魔族だ。


「随分とお喋りだね。私を殺したいんじゃないの?」


「お喋り......?」


 ロフェルはその言葉に笑いを起こした。


 でも私にはその笑いの点が微塵も理解できない。


「お喋りですか。そうですね。そうかもしれません。あなたともう一度会えたことに喜びを感じているのでしょう」


「そう。私はこれっぽちも嬉しくないけど」


「ちなみに、そちらにいるお連れの男性も殺してよろしいので?」


 ロフェルの視線が私からアトラに行くと、彼は防衛本能的に剣をロフェルに向ける。


「いいよ」


「シルヴィア!?」



「――――先に私を殺せた時はね」



 その言葉にロフェルはまともや笑いを起こす。


 よっぽど己の腕に自信があるのだろう。


 やがてロフェルの笑いはおさまり、細い目をしながら言う。


「無慈悲で残虐とも言われている者が、保護者図らですか。これはまた面白い冗談です」


「彼はただの旅仲間だ。居ない者として考えてもらっていい」


「過保護ですね。数年も経ってしまえば、本当に居なくなってしまうのに」


「何が言いたい?」


「人族と言っても、寿命は最も短いと謳われている人間族。あなたがここで彼を守れても意味が無いと言っているのですよ」



「口が減らない魔族だ――――」

 


 先制攻撃を仕掛けるため、魔族の背後に高速で移動し、光魔法を放った。

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