☆第25話☆ 【魔族】
アトゥラスに滞在してから二日目の夜。
私は椅子に座り魔法書を眺めては紅茶を口にしている。
今夜は忙しい夜になるだろう。早く寝たい。
でもナータからまだ知らせは来ない。
彼には今、もう一度貴族の屋敷の調査に向かわせている。
昨日は一階から上を調べたが、地下は調べてこなかった。
結構忘れがちになるのは地下室だ。
貴族や王族は大事なもの、もしくは極秘にするべきものを地下に隠す傾向がある。
そしてそれは暗躍している者もそれをする傾向がある。
この街で言うと『魔族』だ。
恐らく、ここの貴族はその魔族にこの街を乗っ取られている。
魔力探知の反応でその魔族が今、南門で身を隠している。
多分、私を待っているのだろう。
でもまだ手は出せない。動くのはナータからの情報次第だ。
私の予想だと、その魔族はここの貴族と同じ姿をしている。
つまり貴族本人は殺されているか、監禁されているか。
監禁され生きている状態なら、始末に向かう。
しかしそうでない場合は、街の支配人が急にいなくなってしまうため、安易に動けなくなる。
まさか旅をしだして、一つ目の街で魔族と遭遇するとは思っていなかった。
昔一度、魔族を根絶やしにしたはずなんだけどな。
手が甘かったかな。
『――――シルヴィア。居たよ』
ナータから魔力波長で知らせが来た。
『どう?』
『そっくりだ。同一人物って言われてもおかしくない。声も同じ』
『わかった。じゃあその人の安全は頼んだよ』
『了解』
予想通りだ。
それじゃあ、魔族を倒しに行こうか。
窓を開け、浮遊魔法で南門へ向かおうと思ったが、下を見ればまだ人が歩いている。
誰かに見られたら変に怪しまれてしまう可能性があるな。
歩いて行くしかないか。
私は静かに窓を閉めて、宿の入り口から向かおうと思い部屋の扉を開く。
すると扉の先にはアトラが立っていた。
「アトラ。ここで何してるの?」
急に私が出てきたことに戸惑っているのか、そわそわしながら答えた。
「あいや、その......ちょっと話がしたいと思ってな......」
「何の?」
「ほら、シルヴィアが今までどんな生き方してきたのかなって......」
「大して面白い話はないよ」
私はそう言いながら、アトラを横切り宿の入り口に向かった。
「面白くなくていいんだよ。ただ俺はお前を知りたいだけなんだ」
彼はそれを口にしながら私の後ろを歩く。
「千五百年以上生きた、魔法と研究が大好きなただの女」
「そうじゃない。もっとこう......深く知りたいんだよ!」
「言っている意味がわからない。私を知ってどうするの?」
「それは、まぁ、仲良くできればなって......ていうか、どこかにでも行くのか?」
アトラとよくわからない話しをしていたら、いつの間にか宿の入り口にいた。
......。
............。
一応、彼にもついて来てもらおうかな。
「――――私を知りたいなら、ついて来て」
「え、なんか怖い」
★
「ーーお待ちしていました。魔女様。いえ、一度魔族を滅ぼした、『金髪の少女』様」
南門を出て、少し進んだ先の林から、黒のタキシードを着た怪しい男が現れた。
間違いない。
「――――『魔族』だ」




