☆第20話☆ 【嫌な予感】
ナータと魔法図書館前で鉢合わせて、暇と言うので教会の仕事を彼にも手伝って貰った。
仕事は簡単。
街の指定の場所に防護結界を施すだけ。
場所が多いから単純に魔力量との勝負。
でも魔力量が比較的多いと自負している私からすればただの作業に他ならない。
その上、私とほとんど同じ魔力量のナータと二手に分かれて作業をしたから、一時間ほどで終わった。
そして教会から報酬を受け取って、近くにあったベンチで報酬を分けているところだ。
「はいこれ、金貨十五枚。私は無一文だし五枚多く貰っておくから」
「十枚でいいよ。手伝っただけだし」
「そう。じゃあもう五枚貰っとく」
私はナータに渡した硬貨ポーチから五枚回収して自分のポーチに入れた。
ポーチの中が金貨で輝いていてニヤニヤしてしまう。
潤う。
私の金銭、潤う。
「これからどうするの?」
稼いだお金に喜びを感じていると、足元にいるアリの列を眺めているナータが言ってきた。
「特にないし、馬車の予約したら散歩してアトラが居る宿に行こうかなって思ってる」
「そっか。じゃあ僕は先に宿に行って休んでおこうかな」
ナータは確か、盗聴魔法が使えたはず。
なら頼んでもいいかもしれない。
「やりたいことがないなら、良い暇つぶしがあるよ」
するとナータはワクワクと聞いてきた。
「何?」
「この街の調査だね」
「ーーえっ」
調査と聞いた途端しょぼんと落ち込んだ。
「えって何。私は真面目なんだけど」
「だってそういうことするの面倒臭いんだもん。正直まだ図書館で時間潰す方がマシ」
「そう。調査してくれたら、魔法を一つ教えてあげようと思ったんだけど、やる気がないなら私一人で調査してこようかな」
そう思い立ちあがろうとした直後、ナータが先にバッと立ちあがった。
「ーーーーその調査は何をすればいい?」
やる気満々のようだ。
本当、魔法の虫だね。
「この街を管轄している貴族の屋敷に忍び込んで情報収集」
「それだけでいいの?」
他にもっと欲しそうな顔をしているが、貴族の屋敷だけで十分なのだ。
「いいよ。街全体の情報は、街心臓部である貴族の屋敷に密集する。だから他にすることなんてないかな」
「わかった! じゃ早速行ってくる!」
そう言い残し、貴族の屋敷の方向へ走って行った。
元々私がしようと思ってたことだけど、まぁいいか。
その分時間はできたし、ゆっくり過ごそうかな。
じゃあまずは馬車の予約からだ。
★
「ねぇ、南部行きの馬車の予約がしたいんだけど、いい?」
街の南側にある馬繋場。受付で予約するところだ。
「お嬢ちゃん一人かい?」
痩せ細っていて、老けた女性が受付人だった。
「私含めて三人」
「そうかい。次の出発は三日後の昼さ。そこでいいなら枠をとっておくさね」
「わかった。じゃあそこでお願い」
「あいよ。じゃあ三人分で金貨九枚と名前を聞かせておくれ」
とりあえず先に持っている金貨を出した。
それと名前か。
予約をするのに名前が必要になってるんだ。
百年くらい前ならいらなかったのに。
でも自分の名前はあまり使いたいと思わないし......。
まぁただの予約だし、いいか。
「ーーーーナータ」
「あいよ」
すると受付の女性は金貨を受け取り、書類にナータの名を書いて、判子を押す。
ごめんねナータ。私は自分の名前をあまり口外したくないんだ。
「はいこれ。当日になったらこれを持って、またここへ来ておくれ」
そして三人分の予約券を渡された。
「ありがとう」
「おおきに。にしても今時、南部地方へ行くなんて珍しいねぇ」
「どうして?」
「近頃あの周辺は魔物が増えていてねぇ、『魔族』が従えているんじゃないかって噂さ」
「魔族......」
厄介なことに巻き込まれそうな予感だ。
あいつら嫌いなんだよね。汚いし臭いし。
そして何より、平気で人の言葉を使って懐に入り込んでは、平気で人の命を奪い取る。
魔族でも色々な種類が存在する。
死んだ魔獣や獣を媒体とし、肉体を得る魔族。
生きた生物に取り憑いて意思を乗っ取る魔族。
他にもあるが、主にこの二種類が世間で知られている。
「気をつけな。奴らと出会したら、真っ先に逃げることを考えることさね」
「わかった。気をつけるよ」
その場から離れ、アトラと合流することにした。




