☆第18話☆ 【楽しむ為の休息!】
よし、ここの宿でいいか。
シルヴィアとナータはやりたいことがあるようで、別行動。
そして俺は昼寝をした後、カフェ巡りだ!
この街には一体どのような美味が待っているのだろうか。昼寝をしたら存分に嗜んでやろう。
そう考え、街の西側にあるちょっと高級そうな宿に入った。
それは俺がこの世で最も好んでいる宿『ギルティラ』だ。
この宿は一部の街でしか営業をしていない。
全ての街では営業をしてないのだ。ちょっとレアな宿といったところ。
もちろん俺が好んでいる理由もある。
「こんにちは受付嬢さん。宿を取りたいんだが、三人分の空き部屋はあるか? 残りの二人は今は別行動中で、後で合流する予定なんだ」
「畏まりました。では確認の為、冒険者の証を拝見しますので、ご提示をお願いします」
エルフの受付嬢にそう言われ、俺は胸ポケットからこの街の門番に見せたペンダントを渡した。
そう! この宿ではこのペンダントを見せると、金銭を払わなくても宿泊できてしまうのだ!
何故かは知らない。
ただの冒険者の証に過ぎないのに。
そして何より......いいよね。エルフ族。
長寿だし、容姿が整っているし。
目の保養になる。
中にはギルティラのエルフ受付嬢に惚れる冒険者もいるみたいだ。
そういえば、他の街のギルティラ受付嬢もエルフ族だったな。訳でもあるのか?
ちょっと気になるし聞いてみよう。
「ねぇ受付嬢さん」
「ぺ、ペンダン......ト」
ペンダントを手にしたエルフ受付嬢の体がずっと震えている。
「受付嬢さん......?」
おかしい。返事が返って来ない。
「あの、受付嬢さん? なんで震えてるんだ?」
「ーーいえっ! なんでもありません! すぐに部屋をご用意します! こちら拝見しましたので、お返しいたします!」
「あ、はい」
なんか、すごい焦りながらペンダントを返してきた。
そんなに汚かったのかな。
あとで磨いておこう。
「ではお部屋へご案内しますね! こちらへどうぞ!」
「あ、はい」
聞きたいことがあるのに、聞ける余裕がない。いやエルフ受付嬢さんの余裕がない。
仕事にプライドを抱いて切磋琢磨して働いているんだろうな。
「ーー移動中ですが、失礼の上ご容赦ください。何故アトゥラスに来られたのですか?」
「え、南部行きの馬車に乗るためだけど」
ここでも聞かれるのか。
やっぱりこの街に異変でも起きているのだろうか。それとも怪しまれているのか?
いや、気のせいという可能性もある。深く詮索はしないでおこう。
「そうでしたか。てっきり、魔女様がお目当てかと......」
なんだそれ。ちょっと気になる。
「魔女?」
「はい。この街の外にある北側の森に、その魔女様が住む巨大樹がありまして、ここ百年ほど出てこなくなってしまっているようなのです」
なるほど、ただの引きこもり生活がクセになってしまった魔女か。
「へぇ〜。ただ単純に家から出るのが面倒臭くなっただけじゃないか?」
「そうだと良いのですが......」
少し不安げに話すエルフ受付嬢。
「放っておいたらそのうち出てくるさ。生きてるならだけど」
「そうですね。私もそのように願っています。では、こちらのお部屋三つをご使用ください。私は受付に居ますので、ご不明な点があればいつでもお声がけください」
そう言ったエルフ受付嬢は、カーテシーを後に受付へ戻っていった。
そして俺は早速部屋へ入り、ベッドへ飛び込む。
無償でこんな寝心地の良いベッドで寝れるとは、冒険者の証さまさまだな。まぁ俺にとってこれにしか需要はないが。
......魔女。魔女か。
シルヴィアとナータに聞いてみよう。
ーーおっとそうだ。
ペンダントを磨いておかなとだな。なんか汚いような反応されたし。
申し訳なさと、ちょっとだけ心に傷ができた。
これからはちゃんと定期的に磨いておこ。
にしてもちゃんと名前が彫られてるんだな。しっかりしてるな、冒険者協会。
ん、なんだこの文字。
......『M』?
どういう意味だ?
突如、扉の向こうからもの女性の悲鳴と共にすごい物音が聞こえた。
「ーーーーえ何っ!?」
持っているペンダントを懐にしまい、恐る恐る扉を開けた。
その先には、掃除道具があちらこちらに散らばっていて、さっきのエルフ受付嬢が床で転んでいる光景があった。
「あの、その、大丈夫......?」
するとエルフ受付嬢が涙目でこちらに振り返った。
あ、こんな顔するんだ。
そりゃ惚れる冒険者もいるのも納得だ。
「ーーご、ごめんなさい! 失礼しました! すぐに片付けますので......!」
すごい悲しい顔で片付け始めた。
目の前でそんな顔されたら......可哀想に思っちまうだろ。
「手伝うよ」
俺も散らばった道具を拾い始める。
「え!? いえ大丈夫です! お部屋でお休みになって下さい!」
「俺の良心が働いたということにしておていくれ」
「そんな、これは私の業務なので......」
「一人なんだろ?」
「え......?」
「ギルティラの受付人は一人しかいないって誰かから聞いたことがあるんだ。だからちょっとした同情心だな。で、これはどこに運ぶんだ?」
持ち過ぎて前が見えない。誘導してもらおう。
「そうなんですね......あ、それは裏の倉庫へ持って行こうと......」
「――わかった。ちょっと前が見えないから誘導してくれないか?」
「わ、わかりました! では、そのまま真っ直ぐ進んでください!」
「はいよ」
そうして俺はエルフ受付嬢の言われる通りにした。
★
手伝いが終わり、さっきの部屋の前に戻って来た。
「あの、ありがとうございます。本来は私の仕事だったのですが......」
「気にしなくていい。俺はただ困ってる人を助けただけだ」
そう。別に可愛いからとか、邪な気持ちで動いた訳じゃない。
本当に、ただ普通に手伝ってやりたいと思っただけ。
「でしたら何かお礼を......」
「いいよ。別に見返りなんて求めてないし」
「そうは言われましても、手伝って貰った身なので......」
そんな困惑した顔をしないでくれよ......。
何も求めてることなんてないし。
......あ、そうだ。
「ーーーーじゃあこの街のお勧めのカフェがあるなら教えてくれないか?」
「カフェ......ですか?」
なんでポカンとしてるんだよ。
え何、これ俺がおかしいの?
「うん......カフェ巡りが好きだからさ」
数秒間沈黙が続いたが、突然エルフ受付嬢がプフッと吹き出し急に笑い始めた。
「ーーあはは。そうなんですね。私もカフェは好きです」
「そうか......えなんか、笑う要素あった?」
するとエルフ受付嬢の笑いが収まり笑顔で言った。
「いえ、予想の斜め上を突かれて思わず笑ってしまいました。私でよろしければ何軒がご紹介しますよ」
確かに、この格好でカフェが好きは予想外だよな。
俺自身でもわかる。
にしてもエルフ受付嬢の緊張感が解けているような気がする。よっぽど俺の印象が怖かったのかな。
「助かる。じゃあ行く時になったら声かけるよ。俺は昼寝がしたい」
「畏まりました。お待ちしておりますね」
そう言って、エルフ受付嬢はカーテシーをして受付へ戻っていった。
......なかなか可愛い笑顔するじゃん。




