☆第16.5話☆ 【土を耕すのが上手になる魔道具】
遺跡探索、三層――――。
「うわっ! なんか落ちてきたっ! ......何これヌルヌルする」
「それはスライムの亡骸だね」
「おぇ......臭いもきつい......こんな状態で残ることがあるんだな」
「ほとんどは蒸発するけど、湿気が多い場所で死ぬと、そういう状態で残ることもある」
「そうなのか......嫌な貧乏くじ引き当てちまったな~......」
「アトラ知らなかったんだ。僕でさえ知ってたのに」
「うるせぇな、別に知らなくても良いだろ。興味ないんだから」
「――――二人とも静かに。近くに何かいる......」
「......何がいるんだ?」
「僕が探知してみるよ」
――
「......どう?」
「――ワイバーンだ」
「なるほど。今晩の飯は豪華になりそうだな」
「え......? あれ、食べるの?」
「当たり前だ。食べなきゃ死ぬだけだ」
「......私ワイバーンなんて食べたことないど、美味しい?」
「絶品も絶品。王族でさえ、祝いの席でしか食べられない超高級食材だ」
「まだバレてないから不意打ちで仕留めよう。僕もワイバーンは食べたい」
「あいよ。じゃあ俺が前に出て牽制するから、その隙に首を狙ってくれ」
「了解。それじゃあ僕とシルヴィアは隠蔽魔法で奴の背後に近づこう」
「わかった」
「あいつがあの石碑を通り過ぎたら一気に前へ出る。今晩の飯だ。しくじるなよ」
「それ僕に言ってる? 狩りでしくじったこと一度もないんだけど――――あっ」
「おい馬鹿......! 音を立てるな......!」
「――――二人とも、前」
「......さすがワイバーンさん、音に敏感なだけある」
「作戦が石の音で泡になったね......いわゆる石の泡?」
「――阿保なこと言ってんじゃねぇ! ブレス来るぞ!」
――――――――
「なんでお前ら避けてんだよ! 魔法で結界張れよ!」
「アトラが避けるから反射的に体が動いた」
「私はナータに引っ張られた」
「もういい、前に行く! お前らは何とかしてワイバーンの首を刎ねてくれっ!」
――――
「......どうするシルヴィア? アトラもう前に出たけど」
「もう一度ブレスを待つ」
「どうして?」
「ブレスを跳ね返して頭ごと消す」
「なるほどね。でも――――ワイバーンもアトラで手一杯そうだけど」
「大丈夫。ワイバーンは自分が不利だと思ったら、急に自暴自棄みたいになってブレスで暴れるんだよ」
「よくそんなこと知ってるね」
「何度か戦ったことがあるからね。でもその時は魔獣を食べるなんて発想はなかったかな」
「じゃあシルヴィアにとって今回が初めての魔獣食だ」
「そうだね。とりあえず私たちはここでしばらく待機しようか」
「了解」
――――
「......」
「.............」
「......ワイバーンの肉ってどんな味がするの?」
「え、味か。う〜ん、牛とか豚とはまた違った味がするんだよ。なんかこう、噛みごたえのある温かい果物を食べてるような感じ?」
「想像もつかないね」
「食べないとわからないから。ワイバーンの肉の味って言う固定観念が脳に植え付けられるくらい美味しい」
「それはそれでどうかと思うけど」
「まぁ今日の夜わかるよ」
「そう」
――――
「......」
「............」
「......シルヴィアってさ、朝弱いよね」
「だって眠いんだもん」
「そんなに起きれない?」
「起きれないじゃない。起きたくない」
「あ〜、なるほど」
「逆にどうしてあなたは、すんなりと起きられるの?」
「いや、僕も朝は眠いから起きようと思わないんだけど、一度目が覚めると寝られないんだ」
「健康的だね」
「そう見える? 僕結構、夜更かしするタイプだけど」
「私も夜更かしはする。やっぱ研究が面白いからついつい寝ることを忘れるんだよね」
「それすっごいわかる。でも本当に疲れた時は流石に夕方まで寝ちゃうな......」
「確かに疲れてると、私も夜から次の日の夜まで寝ることがあるかな」
「一日が睡眠? 勿体なくない?」
「そうだね。でも睡眠は大事だ。寝れる時に寝ておかないと」
「そりゃそうなんだけど......流石にそれは寝すぎじゃ......」
「――そろそろ来そうだ。ナータ準備して」
「え、うわ本当だ。急に吠え出してブレス溜めてる」
「来るよ」
――――――――
「ふぅ......いつも思うけど、これ結構難しいんだよね」
「凄っ。本当にブレス跳ね返した。結界ってそんなこと出来るんだ。いやでも、普通の結界とは違うのかな......?」
「普通の結界だよ。でもタイミングを合わせる必要があるんだ」
「タイミング? ブレスに当たる直前に結界を張るとか?」
「イメージはそれで合ってる。でも細かく言うなら、ブレスを覆ってる微量な魔力を魔法で相殺して、その直後に湾曲した結界を張って狙いを定める。スピード勝負だね」
「魔力を相殺? なんで?」
「魔力の覆われたブレスは貫通性を持つ。つまりその状態だと結界を貫こうとする。だからその特性を無くすために、何でもいいから魔法で相殺するんだよ」
「初めて知った。面白いね。魔物も魔獣も」
「――――おいっ! どうして頭を消し飛ばしたんだよ!? 耳切って冒険者協会に渡せば、一月は三人余裕で食えるくらい稼げたんだぞ!」
「え......」
「ま〜ま〜そんなに怒らないでよアトラ。美味しいものが食べれるだけでも儲け物だよ」
「――そ、そんなお金になってたんだ......なんかごめん」
「ほら〜、怒ったからシルヴィアの顔がショボショボしてる。とりあえずアトラはワイバーンの血抜きをしてきて。今晩は僕が作るから」
「......言わなかった俺にも非はあるが、次からはちゃんと首切ってくれよ」
「ごめん......」
「シルヴィア、そんなに謝らなくていいよ。金銭なんてどうにかなる」
「ありがとう......」
「それより――あれ。ワイバーンがこの階層のボスだったみたいだ」
「ん......? 何あれ」
――――
「クワ......? にしか見えないね僕は」
「このクワ......何か感じる」
「え、何も感じないけど?」
「ナータ、多めの土を出してみて」
「まぁいいけど。――はい」
「よいしょ」
――
「何してるのシルヴィア?」
「耕してる」
「それは見ればわかるんだけど、聞きたいのはそうじゃなくて、どうして耕してるのかなって」
「――ナータ。私はね、ずっと秘密にしていたことがあるんだ」
「うん」
「私は畑を作っても、耕すのがめちゃくちゃ下手なんだよ」
「何が言いたいの?」
「このクワは『土を耕すのが上手になる』画期的な魔道具だ!」
「......必要?」
「必須だね。これは世界が変わる」
「そっか......良かったね......」
「これを機にナータも畑を」
「――――僕は遠慮しておくよ」
「血抜き終わったぞ〜......なんで土耕してんだ......?」




