☆第16話☆ 【旅人の朝】
「起きろシルヴィア。おーい、朝だぞ〜。飯無くなっちまうぞー」
朝......?
「んん......あと四時間だけ......」
「ーーなげぇよ! 飯冷めるっつうの!」
別にいらない......寝たい......。
「ん......えりざべす......?」
「飯だって」
「あぁ......私の分はいいよ......」
「ダメだ、早く起きろ」
「いいじゃん別に......時間はあるんだし......」
「ねぇよ。早くしないと、脱がして襲うぞ?」
「......いいよ」
「ーーーーよよよ、良くねぇよっ! 早く起きろってっ!」
「あぁー......毛布返してぇ......」
「冬場の野営で毛布を奪われては、もう寝れまい」
寒い。
眠い。
寝たい。
瞼が重い。
「ん......いい匂いする」
「シチューだよ。さっき作ったばっかだ。食いたいなら顔洗って目を覚ましてからな」
「うん......」
お腹空いた......。
さむ......。
★
野営の朝からこれを食べられるとは意外だった。
もっと質素なものを予想していたけど、体が温まって心地良い。
「美味しいね、このシチュー。作ったのはアトラ?」
「そうだけど、具材は上等なものじゃないし、普通だろ」
「それでも美味しい」
「そうか......ありがと」
アトラの顔が赤くなっている。
「顔赤いけど、熱でもある?」
「ーーち、違う、照れてるだけだ!」
「え?」
照れるようなことあったかな?
「そんな真っ直ぐに美味いって言われたの......初めてだったからな」
なるほど、今まであまり言われてこなかったのも頷ける。
「ーーーーねぇアトラ、肉が少ない。もっと入れてくれ」
ナータの我儘が強い理由で、美味しいという言葉が普段無かったのだろう。
「じゃあ、お前が肉を集めてこい。それで解決するぞ」
「面倒臭いから嫌だ」
「なら我慢しろ」
「え〜、わかった」
我儘がなくても、美味しいという言葉は出なさそう。
「少なくとも美味しいって言える存在はここに居るし、今後も増えるだろうから慣れていくと思うよ。あ、でも不味いものを出されたら流石に言わないからね」
嬉しいのか、アトラが微笑みながら言った。
「わかった。じゃあ、なるべく美味いものを心がける」
「うん、期待しとく」




