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シルヴィアの紡ぐ彗星  作者: えぬタン
★Third Comet★
17/31

☆第15話☆ 【旅人の夜】



 出発してからかなりの時間が経つ。


 太陽はもう沈んでいる。


 そのせいで足元が暗くて歩きにくい。


「な〜、まだ街に着かないのかー? もう日が暮れたぞ。腹も減ったし」


 疲れているわけではないだろう。アトラが変に根を上げた。


「この調子だと、あと一週間はかかりそうだね」


「ーーは!? まじかそんなに遠いのかよ......なら今日はもうこの辺りで野営するしかないか」


 飲み込みが早い。


「歩きなら仕方ない。アトラが走ってくれれば今日中に街へ着いたのに」


 アトラに対して嫌味をぶつけるナータ。


 実際私にも多少のダメージはある。


 彼の今の身体の原因は私だから。


「じゃあお前が飛んで俺たちを運べ」


「疲れるから却下」


 この二人の今までの旅ってこんな感じだったのだろうか。


「あまり口論しても仕方ない。ひとまず寝やすい場所を探そうか」


 寝やすいと言えば、天候が変わっても影響を受けにくい場所。


 定番だけど、洞窟。


 少し深めの洞穴でも良い。


 どこかの崖の壁に魔法で穴を作ってもいいけど、安全性はない。


 天然に出来ているものは、時を経て洞窟や洞穴といった形状を保つようになっているが、魔法で無理矢理穴を作ると、周りの岩の支えが耐えきれず、高確率で穴が崩壊する。


 だから確実に生きるためには、天然なものじゃないといけない。


 そう思い、上から辺りを見渡すため魔法で空を飛ぼうとした途端ーーーーアトラが私の肩を掴み言った。


「俺たちが探す必要はないぞシルヴィア。じゃ、ナータあとは頼んだ」


 どういうことか把握できず彼らの中で何か疎通をしている。


「人使いが荒いなアトラは」


 ナータはそれを言い残して目を瞑る。


「どういうこと?」


 私は隣にいるアトラに説明を求めた。ナータが魔法を使っていることは理解できる。


 でもその使っている魔法がわからないのだ。


「お前も知ってるだろ? ナータが自分で魔法を作れる天才ってことを」


「それは理解している。聞きたいのはそこじゃない。彼は今、何の魔法を使っているかってこと」


「あいつが言うに、地形把握魔法だとさ。原理は俺も知らん」


 地形把握魔法......考えたこともなかった。


 私は地面に手を当てると、魔力の流れを感知した。


 ただ単純に大地に魔力を流しているだけじゃなさそう。魔力自体に魔法構成が乗っている感じ......。


 後で詳しくナータから聞いてみよう。


「ーーどうだナータ。近くにあるか?」


 アトラの声にナータは目を瞑りながら答える。


「う〜ん、近いところに洞窟はあるけど、そこに魔獣が住み着いてる」


「何がいるんだ?」


「体格的にマンティコラだと思う」


「早速ハズレを引いたか」


 マンティコラと聞いてアトラの顔が渋くなる。


 確かにマンティコラは魔獣の中では厄介な部類。


 一般冒険者は戦いたくないと弱音を上げて、依頼を受けようとしない。


 戦闘中どこからともなく、尻尾の毒針が押し寄せてくるからだ。一度刺されればその毒によって即死が約束される。


 その知識から彼らもマンティコラとは戦いたくないだろう。


「無理に戦う必要はないよ。急いでるわけじゃないんだし。他に穴はない?」


「あ、いや戦いたくないわけじゃないんだ」


 私の意見にアトラが咄嗟に反応する。


「え? でもハズレだって......」



「ーーーー不味いんだよ、あいつ」



「ごめん……どいうこと?」


「だから食っても不味いんだって。いやもう食いもんじゃないあれは」


 そのハズレだったんだ。


 さっきの反応的に戦いたくないからだと思ってたけど、予想外の言葉が飛んできた。


 食べる? この二人は食べたことがあるの?

 

 でも不味いって言ってるってことは、過去に食べたことがあるのかもしれない。


 やっぱ旅をしていると、そういうこともするんだね......。


 覚悟しておこう。


「そもそも食べようと思ったあなた達が狂気じみてると思う」


「食い物が底をついた時にしか、そういうことはしねぇよ。興味本位で魔獣を食うとか、いよいよ人間終わってる」


「確かに」


 なぜか共感してしまう。食べたことないのに。



「――――他に穴はないし、そこへ向かうしかないね」



 ナータが魔法を解き、冷静を保ったまま洞窟の方向へ向かう。


「了解。じゃまずはマンティコラさんに挨拶して、そこで一晩過ごすか」


 アトラも平然とナータの後ろを追った。


 二人して緊張感も何も持ってない。


 ただ何を食べるか、どう過ごすかしか考えていない。


 命の危機感を忘れてしまってるのだろうか。


 とりあえず私は、シャワーを浴びたい。

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