☆第13話☆ 【村長と再会】
出逢いはいつも唐突と言われているが、再会もいつも唐突と言われている。
正直こうなるとは予想していた。
寧ろならない方が不自然だったのかもしれない。
このめちゃくちゃデカい木、いやこの家に案内したのは誰だ?
そう、俺に剣を挑んできたアイツ。
今俺達の目の前にいるのは、あの村の長だ......。
飯を食い終わって、そろそろ出発しようと話し合っていると、突然扉が開きこの男が入ってきた。
「おいナータ。この男は一体何を言ってるんだ?」
「分からない」
男とシルヴィアが、何かの話題で盛り上がっている。
とりあえず会話が弾んでいることは分かる。
何を喋っているのかは何一つとして理解は出来ないが。
「通訳出来る魔法とかないのか?」
「アトラは言語についてあまり触れないから分からないと思うけど、言語習得は完全に知識と知恵の努力次第なんだ。だからそんな便利な魔法があったら、もうとっくの昔から使ってる」
「そうか、それはすまなかった......って! お前いつもペラペラと色んな言語を使うからそういうもんだと思ってたんだよ! いつの間に複数の言語を覚えたんだ? 勉強している姿なんか見たことないぞ」
「アトラが完全に寝た後、こっそりやってた」
「お前......」
怒りとか通り越して、寧ろ呆れだ。
真面目にこいつの普段の睡眠時間が心配になる。
それはさておいて、今はこの状況をどうにかしないとな。
この男は何を目的でここへ来たのかだ。
俺の考えは単純にリベンジしか思いつかない。
言語が分からない今の俺たちに出来ることは、ただこの光景を眺めておくことだけだ。
しばらくナータと今後の話をしていると、突然シルヴィアから声をかけられる。
「二人とも。出発する前に、この子に言っておきたいことはある?」
何を考えているのか分からないから剣の模擬戦を挑まないで欲しい、と言いたいところだが、それだと剣士としての名が廃ってしまう。
ここは穏便に済ませる方向性でいこう。
「俺は特に言いたいことはないが、とりあえずシルヴィアを長い間借りることを伝えてくれ」
「そう。ナータは?」
「僕はねぇ、う〜ん......ちょっと待って。ものすごく大事なことを今考えるから」
「時間が必要なら無理に考えなくてもいいよ」
「待って! こういうのは爪痕を残すべき場面だと思うんだよね!」
そう言って頭に人差し指を当て、悩む表情を見せた。
ナータの面倒臭いところが出ているな。こうなると歯止めが効きにくい。
解消方法は、急かすことだ。
「五〜」
「アトラ!? 何言って」
「――――四〜」
「あ〜待って待って! 今考えてるから」
「三〜、二〜、一〜......」
「ーー僕はナータ! 村長の名前は!?」
爪痕ってなんだろうな。
ナータの質問を聞いたシルヴィアが「それ必要?」と言わんばかりの顔をした。
まぁ呆れるよな。俺も同じ反応だし。
「この子は『バーク』。今のオグタ村の村長。それだけ」
「バークって名前なんだ。一応覚えておこうかな」
一体何を考えているのかは知らんが、人名を覚えるほどお前には余裕なんてないだろ。
研究という自己満足とやらで。
「覚える必要あるのか?」
「またこの森に来るかも知れない。その時はちゃんと挨拶しようと思って」
「変なところ律儀だなお前は」
「褒めてる?」
「半分な。でも、もうここには来ない可能性もあるぞ」
そう言うと、ナータは一冊の本を持ち、開いたページに文字を書く。
オグタ村の村長。バーク。アトラほどでもないけど、剣士としての腕は一人前。
そう記していた。
忘れるからそこに書いたのか。
でもそれ、魔法書だよな。
「これで忘れても、この本を見れば思い出せる」
「魔法が思い出せそうだな」
「――――アトラ」
ナータに軽くツッコミを入れていると、突然シルヴィアから呼ばれた。
「何だ?」
「この子があなたに『あんたに託す』だってさ」
......言葉の意図が理解できない。
男の顔を伺っても、キラキラと目を輝かせながら俺と目を合わせることしかしない。
何この状況......ちょっと怖い。
「意味はわからんが......話し終わってるならそろそろ出ようぜ。今日中に宿を確保したいのが欲だ」
「そうだね。私も理解できてないし、この子にはもう帰ってもらおうか」
シルヴィアは男に、バークに村に帰るよう促した。
笑顔でよくそんなことが言えるもんだな。妙ないじめに見える......。
しばらくシルヴィアと話しをした後、男は笑顔で部屋から出て行った。
彼女はというと、紅茶を飲んでくつろいでいる。
これから旅に出るっていうのに......。
これが当たり前のように見えてくるんだろうな。




