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婚約破棄されたので、ざまぁのために公爵と結婚しようと思います!  作者: 武州青嵐(さくら青嵐)


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15話 離婚回避作戦!

「そんなことありませんよ! だってうちにバンバン苦情来ますもん! アリス様を働かせるなって!」


 シシリーはタオルをテーブルの上に投げ出し、アリスのほうに身を乗り出す。


「アリス様が浄化する魔石の量って公爵が管理してるんですよ⁉」

「そうなの?」


 てっきりセディナが決めているのかと思った。

 というのも、セディナがカレアムに提案した通り、彼は王都で『カネ次第ではアリス様に浄化していただくが、どう?』と商売を始めたのだ。


 ちょうど、アリスが王都を離れて一か月が過ぎたころだ。


 当初は魔石だけを海路で輸送していたのだが、最近は王都から公爵都までのツアーが組まれ、そのために大掛かりな道路の公共工事まで計画し始めたのだからすごい。


 公爵が経路の領主にかけあって道路工事の許可を得、かつ、その経由地の領地でも儲けがでるように市場で休憩をしたり、宿泊地は必ず経由領地で行うなど便宜を図っているらしい。


「お父様はもう少しアリス様に魔石の浄化量を増やしてもらいたいみたいですけど」

「別に私はいいわよ?」


「だめです! 公爵もそのあたりはすごく厳しくて。いくらたくさんの書類に紛れ込ませてどさくさに許可させようとしても必ずチェックが入って却下されるって」


「……公爵、そういう事務仕事、手慣れてそう」


「確かにほかの王族方に比べれば馴れてはおられると思いますよ。まだ年若いころから苦労なさってますし……。ってかそうじゃなくて! 公爵にアリス様は愛されているって話です!」


「そうかなぁ」

 吐息をつきながらアリスは魔石を磨く。


「だったらもう少し会ってくれたり、食事を一緒にしてくれてもいいと思うけど……」

「うーん……。あたしは上流階級の恋人同士がどんなものか想像もできませんが。前の婚約者である王太子様とはどうだったんですか?」


 シシリーに尋ねられ、アリスはきょとんと彼女を見た。


「どうって?」

「え? 婚約者ってことは恋人同士だったんでしょう? 結婚を約束されていたんだから、それなりのことは……ねぇ?」


「恋人同士だったけど……。その……そういうことはしてはいけないと言われてたから」

「でもデートとか。食事は毎日一緒にするとか。そんなのはあったんですか?」


 シシリーは自分も椅子に座りながら、ちょっとだけ夢見る感じで続けた。


「王都って、あたしは行ったことないですけど華やかで美しいところなんでしょう? 噴水のある公園でピクニックしたり、乗馬デートとか。あ! 美味しいお店巡りとかもいいですよね!」


 おかしい、とアリスは眉根を寄せた。

 そのいずれもしたことがないからだ。


(……そういえば、スー・ミラ嬢とは観劇に行ったり、郊外の有名店に食事に行ったりはしてたわよね、王太子)


 自分が王太子妃だったとき。

 王太子とともに王都に遊びに出たことはなかった。


 そもそもアリスは王太子妃となって以来、公務以外したことがなかったのではないか。しかも毎日が公務の連続で休暇など皆無。


 公務では一緒にリシェルと食事をしたり観劇をしたりしたが、あれはあくまで仕事の一環のはず……。


(待って待って。じゃあ王太子とスー・ミラがやってたのはなに? あれも公務? それとも遊び? 私は働いていたのに?)


 その気づきに愕然とする。


「どうしました、アリス様?」

「今気づいたんだけど」


「はい。あ! なにか素敵なデートを⁉」

「王都にいたときは、仕事場で魔石を磨いていたか、塹壕で泥まみれになって魔石を磨いていた記憶しかなくって」


「…………………あ! でもそのすべての側に王太子が! 隣で励ましてくれていたとか!」


「いなかった、いなかった。あれ……。おかしいな。というかいざというときは陸軍の長となる王太子がなんで毎回訓練に参加しなくて、私が……」


「でもさすがにご飯は⁉」

「野戦飯の味? おなかがすいてたらなんでもおいし……」


「じゃなくて! さすがにご飯は毎日王太子と一緒に食べたんですよね?」


「接待会場では食べてた気がする。でも朝は私、王太子妃教育を受けながらだったから一緒じゃないし。夕飯は別々で……あれ、どうしたの、シシリーさん。泣いてる?」


「こ、これは……! 水がはねただけです! うううう! アリス様、不憫すぎる!」


 手を顔で覆って本格的にシシリーが泣き出すが、アリスはだんだん不安になってきた。


「シシリーさん」

「うう、なんですか」


「このままだと私、また放置されて今度は離婚されるのでは⁉」

「いやそれはないかと!」


「だって公爵都についた途端、ほぼ顔をあわせなくなったのよ⁉ なんか王都からの旅程の間に飽きたとか!」

「いくらなんでも早すぎでしょう!」


「わからない! そんなのわからないわ! だいたい私、公爵のこと、何も知らないし!」

「なにもって……」


「胸派かお尻派かっていえばお尻派ぐらいで!」

「極秘情報知ってる!」


「ど……どうしよう」

「だから仕事ばっかりしている場合じゃないです!」


 シシリーががばりと立ち上がった。


「お父様とかあたしの全コネを使ってなんとか公爵を屋敷に戻しますので! アリス様は全勢力を傾けて公爵を誘惑してください!」

「ゆ、誘惑!」


「そうです! とりこにするのです!」

「で、できるのかな⁉」


「できるかな、ではありません! やるのです!」

「ええ………えー……」


「でないと離婚危機ですよ⁉」

「まだ結婚式も挙げてないのに!」


「王太子ともそうだったじゃないですか!」

「はうわああああああ!!!!‼ そうだった……! 前も結婚式を挙げる前に破局……」


「今回もそうなる前に! 誘惑してとりこにするのです!」

「が……がんばるわ、シシリーさん!」


「その意気です!」


 こうして。

 アリス離婚回避作戦が発動することとなった。


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