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また一つの出会い

年代については気にしないで読んでもらっていいです

「さて、まずは宿探しね」


  歩みを進めながら風花が言った。

 それを聞いて思ったことがある。宿を決めてから来たわけではなかったのか、と。依頼を受けこちらに来たのだから決まっているのかと思っていたのだが。騙されたと言っていたし、宿も用意してもらえなかったのだろうか。


「決まってなかったのか?」

「ええ。だって宿は依頼を受ける時の代金だもの。宿を貸してもらう代わりに依頼を受けるのよ。今回もそうしようと思っていたのだけれど、今回はトウくんもいるのよね……」

「僕はどこでも構わないよ」

「そう?じゃあ探しましょうか」


 風花は再び歩き始めた。僕もそれについていく。

 女性が一人で転々と旅をして、依頼を聞く代わりに泊めてもらうとは……危ないとは考えなかったということか。

 まあ、風花なら危ないか危なくないかを見極められるのかもしれないな。

 見たところ僕より年齢は上だが、身長は低く柔らかな細い腕をしている。そんな彼女が依頼を受けながら生きていくことになった理由は分からない。

 しかし、あまり詮索していいことではないような気がする。何故か風花には僕と同じような雰囲気を感じるのだ。だから、聞いてはいけないと思った。いつか自分で話してくれるのを待つしかない。その日がいつかも分からないのにな。

 そんなことを考えていると風花が口を開いた。


「うーん、いいところないわね」

「そうなのか?」

「ちょーっと、治安悪いみたいなのよこの周辺」

「そんなことも分かるのか」

「当たり前でしょう。分からなければ生きていけないわ」


 当然だと言うが僕には周辺の治安などは分からないので当然なことではないと思う。

 それが当然になるほど気を張って生きてきたということなのだろうな。

 やはり風花が僕が想像できないほどの何かを抱えているような気もする。どちらにせよ僕から聞くことはない。

 そんな思考をしている時のことだった。


「な、なあっ」


 と、小さな男の子が僕たちに声をかけてきたのは。見たところ髪や服がボロボロで碌な扱いを受けていないようである。

 しかし、首元には僕のお守りと似たような物をかけていてそれだけは汚れてなどいなくてきれいだ。


「なにかしら?」

「その目立つ髪色……なんでも依頼を聞いてくれるって奴だろ⁈頼みたいことがあるんだ!!」


 風花が振り向くと、その男の子は勢いよく頭を下げた。頼みたいことがあると、風花が噂の人だと確信して。噂をされているということなのかは定かではない。

 だが、風花の髪は銀色で長く滅多にないようなものだ。そして依頼を受けることを生業にしているのであれば、自然と噂になっていてもおかしいことではないな。


「どんな依頼?」

「オレを助けてくれ!オレの今いるところが暴れるみたいでオレも巻き込まれそうなんだ!しかも大勢を巻き込みそうだ!このまま死ぬことになったらオレを拾ってくれた人に顔向けできねえ!!」

「そう……それは大変そうね。ところで貴方報酬は払えるのかしら?」

「んなっ、巻き込まれそうって言ったんだぞ子供が!なんでも聞いてくれるんじゃないのかよ!」

「私は聞くことはするわよ。でもね、しっかり報酬をもらうまでが私の交わした契約内容なの。それで貴方はなにをくれる?」


 風花は淡々と答える。慈悲などないとでも言うように。断ったらいけないと言っていたが、報酬をもらうことも必要なら仕方ないか。

 風花の言ったことに困っている少年には申し訳ないけれどな。

 そのまま何も言わない少年の元から去ろうとしていた時少年が


「ま、待てよ!報酬ならある!オレが首にかけてるこれをやるよ!」


 と、言って俺のお守りに似ているものを差し出した。それを見た風花が微笑んだ。


「貴方はそれの価値を分かっていないのね。そしてトウくんも。隠しているつもりかもしれないけれど貴方も首にかけているでしょう」

「え?何故それを……」


 突然話をふられたことに驚きつつも、僕は首にかけていたお守りを見せる。


「分かるわよ。私がどれだけ探していると思っているの?その形状のものには敏感よ。残念ながら二人とも私の探しているものとは違うようだけれどね」

「これはなんなんだ?僕とその子が持っているのは同じではないのか?」

「自分のをひっくり返してみなさい。文字が書いてあるはずよ」


  そう言われて僕は裏を見る。

 すると『不撓不屈』と描いてあった。


「いったいどんな意味が?」

「オレのは『絶対零度』って書いてあるんだけどこれなんだ?」

「その話をしようと思うと長くなるのよね。でも、身を守るためには教える必要がある。よし、決めた。貴方の依頼を受けることにしたわ」


 少年の依頼を受けることを決めた。それを曲げることはない。僕はついていっているだけだから、決めたことに口は出さないよ。それに、僕だって僕の持っているお守りについて詳しく知りたい。

 少年が持っているものについても聞きたいのでな。


「ま、まじでか⁈」

「ええ。あっ、報酬は別のものをもらうわ」

「オレがあげられるもんなんて他にないぜ?」

「私がもらうのは君よ。君、まだ生きたいんでしょう?だったらこの先は私たちと生きてみましょうよ」


 風花が僕にしたのと同じように手を差し出した。

 少年はその手をとる。そのあとはお察しの通りだ。


「のった!とりあえずオレの待ってるこれについて教えてくれ!!」

「よろしくね」


 僕は今少年も仲間に加わり少し騒がしくなりそうな予感と、騒がしいのも悪くないかもしれないという気持ちが入り混じっている。人と関わることにより自分も少しずつ変わってきたのだと思うと嬉しくなるものだな。


 そうして、風花の説明が始まったのだった。

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