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 彼女らと出会って一度目の冬の訪れ。冬というものは寒く、どうにか暖をとろうと必死になる季節。

 凍え死ぬという話もよく聞くものである。一人になってからはより一層寒さを感じるようになった。

 そんな冬が訪れた。


「っだあ!さみい!」

「仕方ないでしょう冬なんだから。動いていれば暖かくなるわ」

「しっかし、雪かきが依頼というのはなかなか大変なものだな」

「そうだけど、依頼だから」


 今回の依頼は積もった雪で通らなくなっている道を通れるようにすること。ある程度でいいと言われているが、困っている者がいるのならしっかり取り除かなければならない。


「それにしても最近雪多いわね」

「冬だとしても多すぎるよな」

「雷もよく鳴り響いてる……」


  唯も近くに来ていたみたいだ。少しずつ歩いてきているから気づかないこともしばしばある。寒さが凌げているのか気にはなってしまうのだが、ローブを着ているからきっと大丈夫なのだろう。

 それにしても……


「唯が言ったように雷が止まないな」


  先程から雪かきを続けているがずっと鳴り続けている。雪だってまだ足首の高さまである。

 このまま降り続けるのだとしたら……


「このままだと身動き取れなくなりそうだな」


  和樹の言う通りだ。僕もそう思っていた。

 このまま降り続けるのだとしたら雪かきどころではなくなるのではないかと。


「でもさすがにこれは異常よね。雪もそうだけど雷の方……三秒おきぐらい?もっと短いかしら?どうだとしてもさすがに多すぎる。まるで印鑑の力を使っているみたいな……」

「誰かが意図してやってるってことか⁈このくっそさみいのも⁈」

「雪と寒さは自然なものなんだろうが、この雷が気になるのは俺も同じだ」


 みんな気になっている。この異常な雷に。

 しかし、印鑑の力だと断定できる確証はなにもない。なぜこんなにも鳴っているのか……それを調べる術はない。


「でも、泣いているみたいだよね……この雷の音…もし意図してやってるんだとしたらその人、泣いているのかな」


  唯が呟いた。

 泣いている、か。自分自身の意思で使っている力でないのならそうかもしれない。実際に自分では無意識のうちに使っていた例も知っている。唯もそうだったのだ。


「泣いているのだとしたら止めに行きたいものだな」

「止めに行くと言っても、どこにいるかも分からないのにどこに行くんだ?」


  和樹にそう言われて自分が考えもなく言っていたことに気づいた。

 止めたくてもどこにいるのか分からないくせに何を言っているのだろうと。


「トウくんの気持ちは分かるわ。けれど、一度立ち止まり考えることも大事よ」

「別に適当に音の聞こえる方に進めばいんじゃね?ずっと適当だったろオレら」


 適当……音の聞こえる方向……


「立ち止まってしまえばこの音を鳴らしている者も遠ざかってしまうような気がする。だから、今止めに行きたいんだ」


 僕は自分の思っていることをしっかりと伝えた。

 無謀な意見だというのは知っている。

 だが、今の自分がそうしたいと思ったのだ。


「はぁ…トウが言ったら反対する奴いないからな。お前が意見言えるぐらい成長したのが嬉しいもんだ」


  和樹が僕の頭を撫でて笑う。

 子供ではないからやめてほしいのだが、多分聞かないだろう。


「そうね…行きましょうか。ただし、この依頼が終わったら、ね!依頼主にちゃんと報告するまでは依頼は終わりじゃないわよ」


 風花も賛同してくれた。

 それなら、進むことは決定したことだ。

 どうやって探すかはこれから考えよう。


 どこにいるかはこれから見当をつける。

 きっと、見つけてみせる。

 苦しんでいるのであればなおさら早く見つけたいからな。


 待っていてほしい。今はただそれだけだ。

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