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閑話 団子屋で働く風花

「いらっしゃいませー!」


  私は風花。依頼を受けて生計を立てている女。そうしないと生きていけない。契約で決めたから。

 花鳥風月と話して決めたんだもの。しっかりしないとね。

 今回の依頼は人手が少ないのにお客さんが沢山くるから手伝ってほしいという依頼で団子屋さんのお手伝い。人手が足りないならってトウくんたちにも手伝ってもらっていたのだけれど、零の兄を名乗る人が来て騒動になりそうだから零とトウくんに出てもらったのよね……

 心配だからってトウくんにまで出てもらったのは失敗だったかしら。人手がまた減ってしまったから大忙しよ。


 何かあったらって思って唯についてもらっていた和樹を呼び出そうとして一瞬外に出たのにいなかったんだもの。唯に聞いたら、勝手にどこかに行ったって言うし……

 どうして私の仲間の男の子たちは自由なのかしらね。こうなったら自分で頑張るしかない!って今奮闘中よ。


「お姉さん、依頼したのはこっちだけど一人で大丈夫なのかい?さっきまで三人でやってたのに…」

「体力も接客力もあるのでお任せください!三人分…いえ、五人分働いてみせるわ」

「そうかい、よろしく頼むよ。わしも歳で思うように動けんからな」


  宣言したからには全力でやってみせる。それが私だから。一度受けた依頼は遂行するまで絶対に終わらないわ。みんなを自由だって言ったけれど私も大概なのよね。

 一度決めたことは曲げない。頑固さでは零にも並ぶかもしれないわね。彼に兄がいただなんて話聞いたことなかったから驚いたけれど今はそちらのことを考えている暇はないわ。仕事に集中しましょう。


「こちらお団子の種類となっております」


 先程入って来られた方に説明と先にお茶も出しておく。最低限しないとならないことは頭に叩き込んである。接客において必要なものは笑顔。トウくんはそれが足りなかったから注意されていたみたいだったけれどね。

 注文を聞いて伝えてから他の方のところにも行って頼まれたものを持って行ったり、使い終わったものを片付けたり……とにかく沢山のことをしなければならない。


 こんな時いつも思うことがあるのよね。


 ——私が2人いたらいいのになあ。


 いつもそんなことを考えては実現不可能なことだって思って、疲れているなあって実感するのよね。


(実際疲れているんじゃないのかい?)

(いつも言っているけれど急に話しかけるのやめてって言ってるじゃない)

(風花が今回の依頼を楽しくしているみたいだからね。少しちょっかいかけたくなったのさ)

(私ももう子供じゃないんだから、ちょっかいとかやめなさい。集中するから寝るでもなんでもしてて)


 思考してると時々花鳥風月が話しかけてくるから厄介なのよね。記憶の共有というのはお互いに話して行われたり、映像として流れてきたりとかでしているから色々考えている時に話しかけてくるのは仕方ないのかもしれないけれど。

 っと、集中するって言ったんだからちゃんとしないと。


 私はそのあとも笑顔で接客をし続けた。途切れることがなくて忙しいのは続いていたのだけれど、やっと客足が途切れた。


「お姉さん、もういいよ。依頼は終わりだ。もう今日は締めるよ。外にいる仲間にも声をかけておいてな。報酬は団子で良かったんだったかな」

「ありがとうございました」


 今日の依頼が終わった。報酬はお団子。

 食料も調達できたし良かった良かった。

 トウくんたちが帰ってくるのを待っておこう。


 少ししてトウくんたちが帰ってきたのだけれど、その姿にとても驚いてしまったわ。

 だって、零がボロボロになってしまっているんだもの。聞いても特に何も言わないし、隠しごとはあまり好きじゃないのよね。でも、きっとあの男の人と何かあったのだろうって思って何も聞かないことにした。

 苦しそうな顔をしていなかったら私はそれでいいの。みんながお団子を食べて美味しいって顔をしてさえいたら今はそれでいいってそう思うの。


 今日の私は団子屋の風花。人の笑顔を見られたらそれでいいのよ。苦しいことはくるかもしれないけれど、束の間の休息ぐらいとったって罪にはならないのだからね。

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