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俺の彼女は普通が嫌なようで

作者: 柳


「幸太郎?」

「なんだ?真剣そうな顔をしているようだけど、明日の天気予報が変わっちゃうからやめとけよ?全国の人に迷惑がかかっちゃうからな」

「なに!?私が真剣な顔をしてたら駄目って言うの?」

「だって…彼氏の部屋に来てエロ本を探すのが趣味な人だぞ?真剣な顔をしてる方が心配になる」


俺はこの前に起きた出来事を引っ張り出す。


「それはこの前に謝ったじゃない!なに?まだ根に持ってるの?別にエロ本は見つからなかったんだから良いでしょ?まぁ、絶対に見つけるけど」


ふふん、と腕を組んで堂々のガサ入れを宣言する彼女。

彼女は有山 優巳で俺とは交際関係にある。普段はしっかりしているのだが…学校から帰ると俺の家にやってきてはこうしてだらけている。


「だから無いって」

「そんなわけ無いでしょ!?男子高校生の部屋の中には絶対に一冊はあるものよ!」

「どこ情報だよ」

「お母さんよ!」

「…勘弁してくれ、あと今は電子書籍という人もいるだろ」

「幸太郎はそっち?」

「いや、だから俺は持ってないって…てかそれで真剣な顔をしてたって言うのか?」

「失礼ね?しっかりと真剣な事を考えていたわよ」


彼女は俺にスマホの画面を見せてくる。とあるサイトのようだ。

そこには『飽きられない彼女の秘訣』と書かれていた。まぁ、よくあるサイトだ。どうせ彼氏版もあるのだろう…あとで探してみるか。別に気にしてないけどな?一応な?


「私達、かれこれ2年は経つじゃない?」

「そうだなぁ…1年の中頃で今は3年だもんなぁ。時間が経つのは随分と早く感じる」

「お爺さんみたいなこと言ってるわね」

「んで?それがどうしたんだよ」

「このサイトに書かれている特徴にあるのよ今どきは普通だと飽きられるって…」


悲しそうな顔をする彼女だが、俺から言わせてもらえばだから何だという話である。

あくまでも1つのサイトで書かれているだけの話なのだから別に真剣に考える必要は全く持って無いと思うのだが、どうも彼女はそうではないようだった。


「私達って普通じゃない?」

「…言われるほど普通か?だとしても普通が駄目ってわけじゃないだろ」

「でも飽きられるって…幸太郎にはいつも私にドキドキしてて欲しいもの」

「してるしてる。今もドキドキめっちゃしてるから」

「ち・が・う!そうじゃないの。もっとこう…顔を赤くして、恥ずかしそうにしながら言って欲しい。出来ればそこにお姉ちゃんと付け加えるとベストだわ」

「それお前の趣味嗜好じゃねぇか!」

「え~?……やっぱり幸太郎は私に飽きてるのね」


シクシクとわかりやすい泣き真似をする。

口調はふざけているのだろうが、恐らく6割くらいは真剣に考えているのだろう。

彼女なりに頑張っているのだ。


「じゃあ、普通じゃないってどんな感じだよ」

「それは…どんなだろうね?」


本人にもイマイチわかっていないようだ。


「わかったわ!」


暫く考えていると本人は何かを閃いたのか手を叩く。

抱えていた縫いぐるみをベッドの端に置いて、俺の正面に足を組んで座る。そして、俺をまるであざ笑うかのような笑みを見せる。


「いつまで私の前で座っているのかしら?ほら、足を舐めなさい」

「おぉ~」

「ほら、何をしているの?あなたは私の下僕にゃん…」

「あぁ、噛んじゃった。……あと顔真っ赤だぞ?」

「うっさいわね!?仕方ないでしょ!こんな事なんて普通は言わないわよ」


優巳は耳まで真っ赤に染めながら反論する。

そんなに恥ずかしいのならやらなければいいのにと思う。


「でも…ちょっと新鮮だったな」


そう、確かに日常から非日常になったような感じで少しだけ面白かった。


「ふ、不公平よ!私だけこんな恥ずかしい事やるなんて……幸太郎も何かやりなさいよ」

「えぇ…」


急にそんな無茶ぶりを言われてもそんな引き出しなんて持っているわけがない。俺は何か無いかと漫画が置かれている棚を見る。すると一冊の本が目に止まった。

俺はそれを見て腹をくくり、立ち上がり優巳の肩に手を置く。


「な、何よ」

「おい、優巳…お前は俺だけの女だ。だから俺だけを見てろ。いいな?」

「……はい」


顔を手で覆い隠し、優巳は小さくそう答えた。

俺も顔に熱が帯びている感覚を味わう羽目になるとは思わなかった。


「いや、はいじゃねぇよ。どうして俺よりも顔真っ赤にしてるんだ」

「だって、急にそんな顔を近づけるから…にしても上手いわね?練習でもしてた?」

「してるわけ無いだろ!?痛すぎるわ」

「でも良かったわね…こう肉食系な感じがして」

「そうかい。まぁ、普段はガツガツ行くことなんて無いしな」

「普段からあれでもいいのよ?」

「俺もお前も多分、耐えきれないぞ?二人揃ってさくらんぼってあだ名になりたいか?」

「……それもそうね」


それからも趣味嗜好を変えて普通ではない感じに振る舞う。

例えば…。


「お兄ちゃん?いつも言ってるでしょ?ゲームは一日一時間!」

「う~ん…」

「何よ!文句でもあるわけ?」

「いや、可愛かったんだけど…ゲームは一日一時間はきついなぁって」

「そこなの!?」


妹的なキャラに振る舞ってみたり。


「ねぇ?あの子は誰なの?体育の時にずっと目で追ってたでしょ?ねぇ?私以外は見ちゃ駄目。じゃないと私、何するかわからないからね?」

「怖い、怖い」

「でも女の子の内面なんてこんなものよ」

「…え?」

「今ゾクってした?冗談よ」


優巳は笑っていたが、目は笑っていなかった。優巳が言うには少し重ための彼女らしい。…少し?

体育の時は注意しようと思う俺である。


「いつまでそこでぼーっとしてるのよ!」

「はいはい、可愛い、可愛い」

「べ、別にあんたなんかに言われたって嬉しくないんだからね!」

「テンプレな台詞だな」

「そうね。でもこれの何がいいのよ。素直に言ったほうがいいわよね?」

「素直に成れない人も居るんだよ。そこに人間味を感じるんだ」

「そういう物なの?」

「多分?」


ツンデレキャラになってみたりと様々な振る舞いをしてみたが…どうも俺にはしっくりと来なかった。

可愛いし、新鮮さはあるのだが、イマイチピンと来ない。


「どうかしら?」

「可愛い」

「そ、そうじゃないわよ!それは嬉しいけど…でも」

「いつもの優巳で良いんじゃないか?」

「でもそれじゃあ…」

「飽きる?そんなわけないだろ?」


優巳は昔からこうだった。付き合い始めた頃も同じようなことが起きた。

どこから拾ってきたんのか分からない情報を鵜呑みにして変なことをする。両手両足に数珠を付けてきた日は笑い転げそうになった。その後、不機嫌になった優巳をなだめるのに1週間はかかった。

それに、普通と言ってもそれは彼女にとっては普通なだけで他人から見たらそうじゃない事もある。


「優巳と一緒にいて飽きたことなんか一度も無いよ」

「本当!?」


彼女はすごく驚いたようにリアクションをする。


「当たり前だろ、可愛い彼女が俺の部屋に来ていきなりベッドの下を漁るんだぞ?飽きるわけがない」

「うっさい!馬鹿」

「それにな?俺のためにいろいろ頑張ってくれるだろ?それは当たり前…普通なことじゃないんだぞ?」


時々、弁当を作って来てくれる。

俺がやっているゲームを買って一緒に遊ぼうとしてくれる。ゲームパソコンを買ったのは驚かされたな。

病気の時は看病もしてくれたっけな?


「そうかしら?」


本人は納得してないようだが、これ以上頑張ってもらうと俺が困る。


「そうだ。そろそろ幸せ過ぎて死んじゃうからな?それに俺がもっと頑張らないといけなくなる」

「じゃあ、もっと頑張るわね?」


彼女は悪戯めいた笑みを浮かべ、俺にもたれかかってきた。


「お手柔らかにな」

「それはどうかしらね?」


彼女の顔は見えないが、声色は楽しげであった。

読んでくださりありがとうございます。

前に投稿した「幼馴染」をワードにしたお話が日間で40位ぐらいになってたのを知りました。

結構な方に読んでもらえていたので有り難い限りです。


今回は会話をかなり多めにしました。楽しんでいただけましたか?

もし面白かった、別の作品も読みたいなどと思ってくださればご評価をして頂けると嬉しいです。


では次の投稿を楽しみにお待ち下さい。O_0


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