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※テスト投稿。未完、大幅な改変の可能性があります。
「‥とまぁ、そういうわけでー、支給品は以上だ。全部あるかどうかチェックしとけー。」
「ハイ!全て揃っておりますわ!」
「仕事が早くて何よりだな。しかし今からこの支給品を特別にカスタマイズするぞー。」
ロジャーさんはやる気があるのか無いのかわからないローテンションな調子で説明をしている。
しかし低い声でよく通り、滑舌も良いせいか聞きやすい。
国境騎士団は荒くれ者が多いとの噂だがその中でどのように仕事をしていたのだろうか。
やはり怪我で引退したのだろうか。
見た目だけでは全くわからない。
大怪我を負い、一命を取り留めて騎士団を引退した人が一流の冒険者として活躍している話もよく聞くし、騎士団予科の講師になる人も多い。
ロジャーさんも試験官だし、騎士団というのは現役を退いてもなお引く手あまたなのだろう。
今から私が挑む本試験は、竜退治である。
退治決行から終了までの期間は予科合格日より数えて1年間以内ならいつでもよい。
一回おおよそ2週間から3ヶ月の行程で魔物を探し、そして倒す。
失敗しても期間内なら何度でも挑戦する。
むしろ何度も策を練って攻略することでレベルアップしていくのが第二の目的でもある。
装備は騎士団から全員同じものを与えられる。
試験を公平にするというよりは、入団後も国の予算の関係で皆同じものが支給されるためだ。
支給物の範囲以内で最高火力を出せる知恵が必要なのだった。
ただ個人で向き不向きがあるため、武器や防具の選択やポーションの内容は限度内なら選択可能である。
また、装備以外にも試験官の存在も重要である。
この1年は試験官が同行し、試験を平等に遂行できるよう監督する。
もちろん危険な場合は手助けもするが基本的に傍観である。
戦闘時の魔物退治の腕前だけでなく、日常の細かな適正能力や性格も観察され、のちに配属の資料となる。
ただ、1年も無駄にうろつくのはもったいないので試験官が先生、受験生が生徒となるのがならわしであった。
良く言えば、生徒のやる気次第でアドバイスを貰えたり、剣術の稽古をしてもらえるのである。
悪く言えば、学びと試験が同時進行でしかも24時間ずっと個人授業。
地獄の特訓期間。
それはもう、はちゃめちゃに、めちゃくちゃに、ハードである。
生徒の方ももちろん、試験官もできるかぎり速攻で終わらせたくあった。
「俺さー、お嬢ちゃんに的確かつ最高に実践的なアドバイスあげちゃうからさぁ、頑張ってこーね。」
「ハイッ!ありがとうございます!」
「効率よく、体力を温存して、無理なく最小限ってぇのが俺の得意なとこなんだよね」
「勉強になりますわ!みっちりと鍛えていただかなくては!1年間よろしくお願いいたしますわ!」
「えっ‥1年も試験にかけないよね‥?」
「せっかく国境騎士団様にご教授いただくのですからしっかりと学びとうございますわ!剣技の極み、精神の深み、国境騎士団の全てを吸収するのに1年とはなんと短いことでしょう?!」
「‥ええ‥俺は早く終わらせるからぁ‥そのつもりでいてね‥」
「是非!時間の許す限りご教授ねがいますわ!」
「あぁ‥噛み合わない予感がビンビンする‥」
頭を抱えてうずくまっているロジャーさん‥もとい、ロジャー先生を見て、私は引きずって移動する種類の人だと即時に判断し、支給品と共に馬屋へ引き摺っていった。
「早くまいりましょう!!!」
「なんか初回から師弟逆転してない?」
「ロジャー先生が早く終わらせるとおっしゃったのですわ!」
「こういうことじゃないんだなぁ‥」
途中、ロジャーさん‥もといロジャー先生は資料室閲覧の許可をとっていた。
過去の受験者の装備を見るのだという。
「それは、過去問の閲覧になりませんでしょうか?カンニングに値するのでは‥?」
「女性の受験者は少ないからなぁ。装備からちゃんと見直す方がいいと思うな。ホラ、防具は少なくていいと思うけど、布地を多めに持ってるみたいだぞ。」
「あ‥」
思い当たる節がある。自分で気づかずロジャーさんのような年上の男性に言われるとは。
私はスッと手を出してロジャーさんの持っている分厚い紙の束を取り上げた。
「なんか‥ロジャーさんに資料を見られてしまう女性騎士が可哀想なので、私が読みますわ。」
「ええ‥ひどぉ‥」
ええと、このページの方は‥お名前は
お名前
「ええええええ!?ルリ、ルリススススス
ルリスタリヤ様ァァァーーー!?」
あのお方!
あのお方でしたのーーー!?
私の推し騎士様!
突然の推し騎士様との邂逅ですわーーーー!?
あのお方の受験時の装備‥
懐剣に片手剣、あっ当時は飛び道具もお持ちでしたのね!
新たな情報に動揺してしまいます!
このお歳のルリスタリヤ様はきっとお肌に傷などないでしょうし天使のような可愛らしさだったに違いありません‥!
「お嬢ちゃん、どうした‥」
「どうしたもなにも、ルリスタリヤ様はわたくしの推し騎士様ですの!幼少より憧れのっ!もくひょうのっ!」
素早く紙束を取り上げられた。
「お前が読むほうが危険だな。」
「あっ!」
「よだれを拭いて、運動場10周してこい。」
「は‥!」
我に帰った。
「ハイッ!申し訳ございません!!」
20周ほど走ってから、ロジャー先生の指導のもと支給品のカスタマイズをし直したのであった。
ロジャー先生は微妙な表情で
「わからんでもないが、慎め‥」
となぐさめのような、あきらめのような声かけをしてくれた。
ロジャー先生は元国境騎士団だから、あの方をご存知なのだろう。
親しかったのだろうか。
それとも見知った程度で話をするほど近くにはいなかったのだろうか。
テンションの低い、コスパ削減された顔からはそれ以上読めなかった。