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「フローラ嬢‥本当に本当によろしいので?」


「ええ。よろしくお願いします!」


「昨日でしょう?デビュタントは。昨日の今日でこちらに来るとはさすがに早すぎるのでは」


「デビュタントが終われば成人ですもの!むしろ今日のこの日を待ち侘びていましたの!さあお受け取りになって。」


「その、お足元の、」


「お気になさらないで、早く手続きをお願いいたします。」


ここは騎士団詰所である。

小さいが受付窓口があり、ここで騎士団の入団応募書類を提出することができるのだ。


幼い頃からたまに見学に来るのでほとんどの騎士とは顔見知りだった。


願書はもうずいぶん前からもらっていて、丁寧な字で隅々まできっちりと書き上げている。

これを提出できる日がとうとう来たのだ。窓口が開く30分前から待機するほど楽しみにしていた。



「ううう、フローラや、今日ある分だけでいいから釣書をひと通り見てからにしておくれ」


足元の塊が泣き言をいっている。

お父様である。


受付の騎士も困り顔だ。


「釣書くらいは見てあげたらどうですか?」


「遠慮いたしますわ。あんなにたくさん見ていたら日が暮れてしまいます。」


「‥そのためにお父様はかき集めてきたんでしょう?時間稼ぎのために。一昨日は釣書を求めてこちらにまでいらっしゃいましたよ。不肖、私の釣書も混ぜておきました。」


「えっまさかの裏切り」


「いやぁ、裏切りというかなんというか」


「私に是非入団してくださいと仰ったのは嘘だったのですか!?」


「嘘じゃない、本心からですよ〜」


そんな話をしていると裏からどんどん騎士達が出てきて口々に挨拶しては不穏な言葉を告げて行く。


「俺の釣書も入れときました!」

「俺も俺も!」

「騎士団の独身のやつは全部入っていますよ」


「ナンデェェェェ!?」


何故だ。目の前の方々の言葉が本当なら、若い騎士のほとんどに婚約を迫られているということになるのでは‥


幼い頃から見学に来ていたから、良くしてもらっただけなのか。

本当は私など騎士になれないと、思われていたのか。

結婚すれば家庭に入るだけの貴族の小娘と‥?



青ざめる私と、私の足にしがみついて泣いているお父様を交互に眺めて騎士たちは言った。



「俺たち、フローラ嬢のことも応援したいけど、なーんか男爵のことも好きで放っておけないんですよねー。」


「娘の幸せを願う親心、わかりますよー。」


「無性の愛に心洗われますね。」


足繁く騎士団に通う私につきまとうお父様は、知らない間に私よりも支持を集めていた!


なんだかんだで人の良いお父様は騎士団のような厳しい部署の中では癒し系なのかもしれなかった。



深いため息を吐くと、私は言った。


「仕方ありません。皆様の父へのご好意を無にするわけには参りませんのでひととおりは拝見いたします。」

「ただし、願書に受理印おねがいしますね!」


仕方ないなぁと笑われながら、入団審査をすすめてもらうことになり、お父様を引きずりながら面接室へと向かうのだった。





憧れの入団試験なのに、まったくしまらない。







別室にお父様を待たせて、午前中は面接と筆記試験を終えた。


面接といっても私は小さい頃から見学に来ていたので、副団長さんと雑談をする程度で終わってしまった。

筆記試験はほとんど満点だったとのことで、歴代トップクラスだとお褒めいただいた。

軍師や指揮官もそうだが、遠征の折の武器及び備品管理や隣国との協定の際の法律など、頭脳派の需要は高い。

女の身でどれだけ鍛えようとも身体の作りが違うのは仕方ないので、私もできる限り筆記で点数を稼いでおきたかった。


何だかお父様と同じような仕事が振られそうでモヤッとしたが、騎士団で活躍できるのなら何でもよかった。



午後からは運動場で実技試験がある。



お父様はライザにあらかじめ頼んでいたらしく、胃もたれしないようなサラダ中心の見た目がきれいなサンドイッチランチを広げて休憩所で待ち構えていた。


入団試験に反対だ、釣書を並べてお見合いしろ結婚しろと、泣きながらお茶を差し出してくる。

言っていることとやっていることが反対である。

娘の応援をしてくれるのだから、ありがたい。


お父様の支持者が遠巻きにこれを眺めてほっこりしているのが目の端にうつっていたたまれない。




はぁ。私もお父様のこと、嫌いにはなれないわ。


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