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※テスト投稿。未完、大幅な改変の可能性があります。

私は14歳のデビュタントまでに淑女として身につけるべき教養を完璧に叩き込むことを条件に、騎士になる訓練を受けることを許された。


14歳までは自宅で師範に個人稽古をつけてもらい、デビュタントが終われば騎士団予備科試験に挑めるのだ。




お父様が出した条件は、普通の令嬢がこなせるものではない。

お父様は、普通の貴族らしく普通に令嬢として育ち平凡な男と結婚し幸せに暮らすことを娘に望んでいた。

それは私もよくわかっていた。




普通は春には森へ花見に、夏にはリゾート地へ赴きボート遊び、秋は鹿狩りのお供でピクニック、冬は温室でお茶会と、社交会に出る母に連れられて貴族の子供同士で遊び、暇な時に基礎的なお勉強をすればよく、本来なら婚約者が決まってから相手の家に合わせた知識を学ぶ。

結婚までにそこそこ釣り合えばいいのである。


人は楽な方に流れるものだ。親の選ぶ婚約者が嫌なら待てばいい。自分で婚約者を探したければデビュタントから婚活すれば良い。それまでは比較的自由なのだ。わざわざ不要な学問を詰め込んだり、ましてや女の子の身で剣を振り汗だくになることはない。早々に根を上げるのは明らかだった。そのはずだった。




ところがお父様とお兄様の思惑をガン無視して、私は過酷な日々をイキイキと過ごしていた。



そんな暇な時間とチャンスを無駄にするなどとんでもないことだった。

やりたいことがあれば全振り。それがフローラである。



毎日ライザの報告を聞いては遠い目をするお父様。

婚活をせっつかれ、風変わりな妹のせいでうまくまとまらないと責任転嫁するお兄様。

ほぼ引きこもりの弟。



なんだかんだで平和主義の家庭では特にギスギスすることもなかったが、私だけ異質なのは申し訳なかった。

お父様が私に甘いのは女だからということもあるし、母がいないせいでもある。人の良い父の性格を利用して好き勝手いるという自覚があればうっすらと罪の意識もあり、それがまた勉学に打ち込む力にもなった。




騎士になる夢は捨てないが、お父様が恥じない立派な娘でありたいのも本心であった。






私は成長するにつれさらに活発に動き、庭先の稽古だけでなく時間があれば城壁を越えて近隣の森まで走り込みまで日課に加えるようにまでなった。


体力がつけばつくほど勉強もはかどることもわかり、辛くも充実した日々だった。



いつか、騎士になるのだ。




そのための苦労なら何だってできた。




竜を倒し、姫を助ける。


城壁の外で戦い、家族を守る。


なんて心躍るすばらしい職業か。




家の中では机にかじりつき、勉強ばかりして目も肩も凝り固まった。



しかし、森の中で剣を振るっている時の心地よさは私の身体をほぐし温めてくれる。そして心をも支えていた。



木漏れ日、頬をなでる風、小鳥の囀り、獣と相対する緊張感‥



外へ、外へ行きたい。



遠く、もっと遠くに行きたい。




私はちいさかった。


学べば学ぶほど知らないものがたくさんあることがわかる。





騎士ならば強く、どこまでも行けるような気がして憧れはますますつのるばかりだった。





そうしてまっすぐに夢を追っていたつもりではいたが、最初から斜め上を選択していたからだろうか。




デビュタント前にはお父様の課題を終わらせたが、勤勉さが妙な副産物スキルまで上げていた。




国境騎士団のまねごとをするにはサバイバル技術も必要なのでは?と気付いてしまい、ここ1年ほどは冒険者から話を聞いたり図書館で昔の暮らしを参考するため古文書をひもといたり、地味に助かるおばあちゃんの知恵袋的な生活魔法を教えてもらったりして、未経験ではあるが総合すれば野宿ができるスキルも磨いてしまった。



これはさすがに家族には言えず、こそこそと独自に習得したものだった。





冒険者ギルドの常連から「いよいよ森のアイドルちゃんが冒険者デビューか?」と期待されていたり、


図書館で「パッと見は、文学少女なのにおよそ文学少女らしくない本を借りにくる謎の古代文字マスターがいる」と噂されていたり、


城門の兵士たちに「お嬢ちゃんに挨拶されるとHPが回復する」という理由で出入りの時間にかかるシフト争奪戦が行われていたり、したらしい。





全方向に努力した結果、それぞれ関係ない場所でちょっとした話題のお嬢さんとして盛り上がりをみせていた。




誰もその娘が男爵令嬢フローラとは知らないのだった。

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