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2話

過去編?です

「粛に。貴公らの言い分も分かるが今は控えよ」


陛下の一言に広間は静まり父上も渋々冷気を仕舞ったようだ。

まぁ実際、こんな子供に対して陛下自身が声をかけること自体が異例なんだから仕方ない。


「ではノクスよ、昨今のクローレイク領の発展は君の存在が大きいと話す者たちがいるが、それに対して君はどう思う?」


「発言を失礼いたします。陛下のお耳にどのような話が入っているか分かりかねるため、何とも言えない所にございます。確かに私の発言により始まった政策などはございます。

ですがそれを実際に施行するまでに、多くの方々に意見をいただき形にすることが叶いました。

決して私の功績であるとは言えません」


「ほう?」


実際これに尽きる。思ったことを口に出すのは簡単だけど、形にするまでに多くの人たちに協力してもらっているのだ。なんで私だけの功績みたいに言われているんだろう。


陛下は何かを考えるように顎下を擦りながら見下ろしてくる。口元に薄く笑みを浮かべているのが壮絶に似合っている。

皇族はみんな美形だとは聞いていたけど、噂は本当だったらしい。


「時に、クローレイク領では貴族以外の子供を含めすべてに学校に通う制度を取り入れたらしいが、それは君が発案だと聞く。何故そのようなことを言いだしたのだ?」

「何故、でございますか?」

「そうだ。貴族以外となると、学費を払うこともままならない者たちもいるだろう。それに規定魔力以上であれば皇都の学園に通うことになる。通えぬということは規定以下であるということ、であるならば学業に力を入れて何になるのだ?」


うーむ、陛下の言いたいことも分からなくもないけど……。言い方というか、、考え方というか、、

持てる者からしてみれば、持たぬ者のことのことを理解できないものなのかな、、


「……私が我が領の子供全てに対して学校に通うように決めたのは、それがいずれクローレイク領の力になると思ったためです。

確かに皇都の学園に通うような魔力を持つ庶民は少ないでしょう。ですがその庶民がいなければ領が成り立たないのも事実で御座います」


「私は初め、魔力が少ないものは学校へは通わないと聞いたときに愕然といたしました。

学校へ通はないということは文字が読めないということではないですか。そのことを父上に聞いた際に、何故学校の制度がないのか、できないのかというのを聞きました。

理解はできましたが納得はできませんでした」


「何故だ?」


「魔力の有り無しは生まれてきた子供には選べないことです。たったそれだけのことで未来の選択肢がが狭まってしまうのはあまりにも不条理であると感じたのです。

確かに中には学校に通わせるだけの財力のない家庭や、働き手がいなくなることで生活が苦しくなるという意見もありました。

その大人たちのほとんどは文字が読めないそうです。簡単な計算はまだしも、少し難解なものになると解らないという者が多いです」

「知識とは力です。その知識を持つ者を育てることが、将来我が領ひいては帝国の力になると確信しております。

この制度は初め反対意見も多くありましたが、話し合いを多く重ね何とか形になりました。それは父上をはじめとした領内の有力諸侯、協力をしたいと言ってくれた学識ある者。何よりも将来のためにと通わせることを決心した領民たちの力によるものです。


私はきっかけを作っただけにすぎません」



イラっとして思わず語ってしまったが、これこそ不敬ではないだろうか。

でもこれが本心なんだよなぁ、、怒られるかな?


「(チラッ)」


下がっていた視線をあげてみる。


「……。」


そこには何か面白いものを見つけたような顔をする陛下がいた。

先ほどまでの嫌な感じは全くしない雰囲気に、思わずキョトンとした顔をしてしまった。


「なるほどな、面白い意見だ。だがそれを実施できているのだから興味深いものだな」


不興はかっていないみたいで内心ほっとする。

にしても、先ほどから広間に集まっている貴族連中の視線が気持ちの悪い。


庶民には知識という力を持たせたくないと考える貴族は少なくない。反乱分子のきっかけになったりすることもあるからだ。

しかも基本的に魔力を多く持っている貴族は、魔力の少ない庶民を見下している節がある。

奇跡的に私の両親がそういう貴族じゃなかったからこうしていられるが、一歩間違ったら私は異端視されていただろう。多分、確実に。



「貴族の子息でありながら、何故そのような考え方をするか聞いてもよいか?」


純粋に疑問であるという顔だ。、、そう見えるだけなのだろうけど。


「先ほども申し上げました通り、領民なくしては我が領は成り立ちません。幼き頃より「責任あるものはその義務を果たさなければならない」と教えられてまいりました。

私はクローレイク家の一員として領を守る義務があります。領を守るということはそこに住まう民を守ること、すなわち民の将来にも責任を持つことだと考えております」


「……なるほど、シェナザードよ面白い息子を持ったな。

ノクスよ本日は急に呼び出してすまなかったな、有意義な時間だった」


陛下は父上に対しニヤリと笑って、何とも楽しそうだ。

半分は本音だけど、もう半分が自分が快適に生活するための布石だってことはさすがに口が裂けても言えない。


「陛下、ノクスはこれにて失礼させていただいてもよろしいでしょうか」

「そうだな、良いぞ。シェナザードは一刻半後に私の執務室に来てくれ」

「かしこまりました」


やっと帰れる、、、、。

陛下に退室の礼をして、父の後を追い広間を後にする。


「また会えることを楽しみにしておるぞ、ノクス・クローレイク」


敷居をまたぐ直前に陛下に声をかけられ、一瞬びっくりする。

振り返り深く礼をする。


「(もう会いたくないけど)ありがたきお言葉、恐悦至極にございます。またお目見えが叶いますことを願っております」


本当に会いたくない。本当に。


本音を包み隠して挨拶をし、失礼にならない程度に素早く退室する。

しばらく父上の後ろを無言で歩く。

父上も話さないから大理石を打つコツコツという音しか聞こえてこない。


馬車に乗り込み、走り出した瞬間に父上と同時に息を吐きだす。


「父上、疲れました」

「僕もなんか疲れたよ。陛下もお戯れが過ぎるよ。

でも、すごく立派だったよ。帰ったらサクラに話さなくてはね」


ニコニコな父上を見て、やっと肩の力が抜けた気がする。


「まったく、陛下にも困ったものだね。本当にまた会いたい?」

「いえ、しばらくは会いたくございません」

「わかった、なら極力合わないようにしてあげる」

「そのようなことできるのですか?」

「任せてよ、こんな時くらいしか権力使うことないからさ!」


そう張り切って笑っていたのに、眼は何か燃えているように見えたのはきっと幻じゃなかったんだろう。


何故って?


そこから7年以上会うことは1度もなかったのだから。



読みづらかったりしたらすみません、、

ぜひコメントなどをしていただけたら、うれしいです!!

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