転生したねぇ
初めまして!!!
『気づいたらそこは異世界でした』-------
なんて自分が言うことになるなんて、人生何があるか分からないもんだ。
おそらくこれは転生というやつだ。死んだ記憶は特にないけど、目線がやけに低くなっていたから多分間違いない。
急にフッと『私』の意識が浮上した感覚。ついさっきまでは五歳児の人格があったことは覚えている。実際五歳児だからね。
たった4年しか生きていなかった今の私の人格は、30年以上生きている『私』の負荷に耐え切れず『私』に吞み込まれてしまった。4年間の記憶自体は残っているが罪悪感がないわけじゃない。
「私はノクスになってしまったということなんだろうな」
口に出してみたらしっくり来てしまった。ありきたりではあるがノクスの分もちゃんと生きていこうと決意した。
-------11年後。
この世界にも四季というのは存在して、地域によっては異なるようだが私の住む場所は比較的に穏やかな場所だった。春には入学卒業など馴染みのあるイベントもある。
だが全く違う点もある。ここは魔法の存在する異世界のようで、前世で流行っていた剣と魔法のファンタジーと題されていた小説に酷似していた。
精霊もいれば魔物もいる。冒険者や騎士団もあると知った時には心が躍ってしまったのは致し方ない。
何よりも私の生家というのが帝国の辺境伯で、父は帝国唯一の魔法辺境伯と呼ばれる最強魔法師で母は隣大陸の強国・伽瑠羽皇国の将軍家の姫だと知った時には設定盛りすぎだろうと感じたのは正常だと思う。
あと、魔王も存在する。私は初めそのことを聞いたときに、あまりにもテンプレ過ぎてため息が出てしまったよ。
よくよく聞いてみたら魔王は邪悪な存在ではなく、魔族を統率している王の総称で友好的な人物らしい。
魔物と魔族は全く違う存在であるため混同してはいけないと家庭教師から何度も念押しされた。
以前にそのことを巡って争いが起きたそうな。今では同盟なども多く結ばれているので行き来も簡単にできると聞いていつかは行ってみようと思う。
魔法は生活の一部ではあるが、特にその能力が高く専門の知識を持つ者のことを魔法師と呼ぶ。
一定の年齢になると学園に通い学ぶことが義務付けられていることからも、その存在がとても重要視されていることは明白だ。
貴族に至っては帝都にある学園に通うことが必須で、卒業できなければ能力なしと見做され貴族社会で生きていくのは難しくなる。
この春から帝都から遠く離れた自領から出て学園に通う身としては面倒くさくて仕方ない。
中央自体に興味もなければ、煩わしいことも多くある帝都に出向くのは決定事項のため入学までの間何かと考えることが増えてしまった。
「ノクス様、何かお困りごとでしょうか。お顔色が優れないようですが」
少し眉を下げて心配げな顔しているのは私の側近の一人マイク。幼少期より使えてくれている兄的な人物だ。
「いや、ついに出発するのが明日になってしまったから少し気が重いだけだよ。帝都に行くのは6年ぶりくらいか」
「左様でございますね、前回は旦那様の登城の際にご同行し急遽謁見することになって以来ですから7年ぶりですね。その後からノクス様は一度も帝都には行かれていませんので」
「もう7年もたつのか。あの時の父上の顔は今でもよく覚えているよ。陛下に対してすごい目つきで睨んでいるうえに、周囲の温度がどんどん下がるものだから臣下たちが青ざめていくのだもの。忘れる方が難しいよ」
-----7年前
父上が帝都に行くことになり良い機会だと同行したことがあった。私はそれが初めて自領を出る体験だったので緊張していたが楽しみだったことは間違いない。
帝都に着いてから父上は登城しなければならないので私はマイクと帝都屋敷で待っている予定だったのだ、、、本来なら。
どこから私が同行していると漏れたのか、急遽私も一緒に登城し陛下に謁見することが決まってしまったのだ。
城からの使者がそう告げた瞬間、温厚でいつもニコニコしている父上から表情が抜け落ちて冷気が放たれたものだから使者が青ざめ挙動不審になってしまった。
「それは陛下直々の命令と受け取ってよいですね?」
「ヒッ、、、さ、左様でございます。陛下より、同行しているノクス・クローレイク辺境伯子息も必ず一緒に登城する様にとのことで御座います」
「、、、そうですか。陛下が何を考えてそう言ってきたのかは知りませんが『承知いたしました』と伝えてください」
「かしこまりました」
本当に使者の人かわいそう。仕事しただけなのに父上に怒気&冷気ぶつけられるなんて、ご愁傷さまです。
逃げるように帰っていった使者を見送ると、若干まだ怒っている顔をした父上がこちらに歩いてきた。
「ごめんね、ノクス。どこから漏れていたのかノクスが帝都に来ていることが知られていたみたいなんだ。
申し訳ないけど一緒に登城してくれるかい?」
眉を下げて聞いてくる父上は本当に僕を陛下に合わせるのが嫌なようだ。
「もちろんです父上。ですが今回私が帝都に来ることは秘密だったのですか?」
「そうだね、ノクスが来ていることが知られると絶対にアイt、、陛下は合わせろって言ってくるとわかっていたからね。全く、どこにネズミがいたのやら」
父上、今陛下のことアイツって言おうとしなかったか?確かに陛下と父上は同い年だけど一体どんな関係なんだろうか……。
それになんで陛下は私に会いたがるのだろうか?特に今まで接点など無かったと思うのだけど。
不思議に思いながらも父上と一緒に登城するとまさに針の筵。
体に穴が開くんじゃないかと錯覚するほどに視線が刺さりまくった。
帝都に魔法辺境伯がいることは滅多にないので物珍しいのだろう。しかも父上信じられないくらい美人さんなのだ。注目の的になるのも頷ける。でもチラチラと私まで見てくるのはなぜなんだ。いくら美貌の父上と母上の遺伝子がっつりな美ショタだからって見すぎだぞ。見物料でも取ってやろうか。
視線にさらされながら着いた謁見の間には少なくない人数の貴族がおり、やはりここでもじろじろ見られた。
しばらくすると陛下が登場されシンっと静かになった。
「よくぞ参った、久しいなシェナザード。此度は急に子息を同行させるように申してすまなかったな。こうでもせんとお前は絶対に合わせようとしないだろうから強行させてもらった」
「……陛下におかれましてもご健勝そうで何よりに御座います。今回は私のみの来都の予定で御座いましたが、流石陛下随分とよく聞こえる耳をお持ちのようですね。感服するばかりでございます。
して、何用があって私の息子ノクスをお呼びになったのでしょう?」
「なに、最近クローレイク領は何かと城でも話題に上がるのだ。面白い政策の実施や農業の発展、新しい産業まで、喜ばしいことだ。そして度々お前のところの次男の名前が聞こえてくることがあってな。お前や長男ではなく次男の名だ。長男が随分優秀なのは知っているがなぜか聞こえてくるのは次男の名前、気になるなという方がおかしいだろう?
だが当の次男はあまり姿を見せないどころか、領を出ようとしない。そんな時にお前に同行して帝都に来ると分かったのでな、これは良い機会だと思ったのだ」
確かに記憶を思い出してから自分の生活向上のために色々してはいたが、その結果陛下の耳に入るまでになってしまうとは……思いっきり墓穴掘っていたのか、私。
「理由は承知いたしました。それで、ノクスを呼んでどうなさるのでしょう?」
「なに、そう威嚇するな。ちと話をしてみたいだけだ」
「話ですか、かしこまりました。ですが許容を超えましたら即刻お止めいたします」
「それでよい」
「ノクスごめんね、今聞いたように陛下がノクスに聞きたいことあるみたいなんだ。話したくことがあったら答えなくていいから」
「答えなくてよいのですか?」
「うん、急に呼んだのは陛下だから。広い心で許してくれるさ」
すごいな父上、陛下の目の前なのに堂々と言い放つのにはびっくりだ。
「なんて態度だ」
「あのように言うなど、陛下に対して不敬ではないか」
「随分と息子のことを甘やかしているらしい」
「そもそもクローレイクの発展にあのような幼い子供が関わっているなどありえないだろう」
ひそひそとした貴族たちの声が聞こえてくる。まあ確かに父上の態度は私から見てもびっくりだったけど、あからさまに嫌な視線を向けてくるのはどうかと思う。
というか、クローレイクが発展したのだって私だけの功績じゃない。たった5・6歳の子供がそな大それたことなんかできやしない。
父上をはじめとした周りの大人たちあってのことだ、私のことを過大評価して勝手に貶すのはやめていただきたい。
「…………。」
ひそひそ声が父上に聞こえてしまったらしい、周囲の貴族へ冷ややかな視線を送ったと思ったらどんどん空気が冷え始めた。どうやら父上の魔力が漏れ出しているらしい。
うわ、父上めっちゃ怒ってる。
読んでくれてありがとうございます!!
亀更新です、気長に待っててください!!