紅茶と閃き
やはり甘い物は脳を活性化させるようだ。
冷蔵庫には昨日、桜を愛でながら食べようと思い買っておいた桜餅が入っていた。
それを取り出し、喉に詰まらせるとよくないと紅茶を淹れてやった。
「ほら、これでも食べなさい」
「あざーっす。 おや? ほんのりと桜の香りがするっすね」
「桜を愛でながら香りを楽しむ。 良いものだろう?」
「まあ、オイラは食べれればなんでもいいんすけどね」
そういうやいなやエドガーは桜餅を口へ放り込む。
こいつは本当に風情というものを分からん奴だ。
「エドガーよ、日本には『侘び・寂び』というものがあって……」
「うグッ!?」
詰まらせやがった。咄嗟に背部叩打法を試す。
「ゲホッゲホッ! フゥー。ヤバかったっす! 死ぬかと思ったっす」
「ほら、お茶を飲みなさい」
こいつはお約束は必ずといっていいほどやる奴だな。
「ゆっくり味わって食べないからそうなるんだ。」
「いやぁ、いけると思ったんすけどねぇ」
「だいたい桜餅の葉はどうした? 付いてないようだが……」
「え? もちろん取りましたよ。 葉っぱなんか喰うわけないじゃないっすか」
「あのなぁ、桜餅の葉は塩漬けされていて食べられるのだぞ」
「マジっすか!? 葉っぱを喰うなんて気持ち悪いっすね」
こいつはたった今、全国の桜餅の葉愛好者を敵に回したな。
「だいたい桜餅の葉は貼り付いていて取りづらかっただろう?」
「そうっすね、最初は取りづらかったっすけどなんとか取れましたよ」
ん!? くっついた物が取れる……
……貼り付く……取れる……。
そうか!!!
「おい!! エドガー、解ったぞ!! 給料袋の消えた謎が」
「えッ? どうしたんすか? 急に」
「私の推理通りなら、さっきの袋はあの引出しからもう消えているはずだ!!」
「えッ!? マジっすか?」
「ヒントは桜の木と桜餅にあったんだ!!」
「??? オイラにはさっぱり解らないっす」
「フフフ…… 紅茶を飲みながら事件を解決とは、私は探偵に向いているかもしれないな」
そう呟きながら私達はさきほどの机の引出しを目指すのだった。
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