表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

新しい日常

 

 〈新たなる日常〉


「ただいま〜、帰ってきたよ」


「お帰り、お母さん……それに知海」


 知海とは俺のことだ。母親がチィーちゃんって呼ぶのもそれが関係しているだろう。


 風呂で上がったばかりだろう上半身裸のお姉さんが、腰にタオルを巻きつけ牛乳瓶を飲んでいた。


「ただいまお姉さん、それから風邪引くと行けないからちゃんと服来てね」


「あ……ああ、もちろん!」


 俺は鼻を摘みながら、ニッコリと微笑んむと、お姉さんは驚いたように目を開いていて答えたのだった。


 やばい、やばいぞ。どうなっているんだ俺の体は!?


 口から血の味が沁みる。胸はドキドキと動き、思わず息が上がってしまう。


「知海なんか、様子がおかしいが大丈夫か?」


「お、おう。それよりも服を着てくれ」


「女の身体なんて見ても、いい気がしないよな……悪い」


 いや、今現在興奮中らしいです……だから服来て!


 お姉さんは、空になった瓶をテーブルに置くとクローゼットから白いパンツを手に取り、その状態でバスタオルを地面に落とした。


「おぅ……」


「チィーちゃん!? ちょっと!」


 口から溢れんばかりの血が流れ出て、倒れてしまった。


 ああ、母親の声が聞こえる。


 この家……魔獣よりも危険じゃないか。


 そして俺の意識はそこで終わりを告げた。


 ◇◇◇


 うんん、ここは……。


「起きたか? 知海」


「知海じゃない……響だ」


「え?」


 俺は寝ぼけた顔で、目をこするとそこにはクールビューティーな美人がいた。


 おでこがベタつく、冷えピタか。


「服来たんだね、お姉さん」


「も、もちろんだ。二回も言われたのだからな!」


 お姉さんはプンプンと怒り出し、両手を組んみながら顔を逸らした。


 うん、可愛らしいぞ。


 お姉さんは少し時間を置いてから、声を出し始めた。


「お母さんに事情は聞いた、私の身体をみて気分を悪くしたのなら謝ろう」


 頭を下げ始めたお姉さん、


「頭を下げないでくれ、俺はそういうのには慣れてないんだ」


「許してくれるのか?」


「もちろんだとも」


 俺が、もし万全な状態でも、あの姿を見たらまた倒れる自信はあるからな。


「そうか! それは良かったふふ、お母さんの言う通り随分と変わったな」


「そうなのか?」


「前だったら、ゴミ女とか、デカブツゴリラとか言って蹴り出していたぞ」


 マジか……そんなに荒れていたのかよ。


「それはごめん」


「うんん、別に知海だけが例外ってわけじゃないから、大半の男は……」


 そこでお姉さんは口を閉ざした。でも、そこまで言ったら、流石に察してしまうぞ。


「私まだ、自己紹介してなかった」


 お姉さんは顔を振って、話題を変えたのだった。


「記憶が曖昧って聞いたから一応、私は福汐=美波(ふくしお=みなみ)だ。男性特殊警察官を目指している宜しく」


「じゃあ美波姉さんって呼ぶよ」


「それは……嬉しいな」


 ゆっくりと花が咲いたように、笑ってみせてくれた。この笑顔を俺は何処かで……。


 ぼーっと思い出そうとしていると、美波お姉さんが後ろを向いた。


 長い髪が一点に結ばれており、尻尾のように揺れる。


「じ、実はな、おかゆを作ってみたんだ」


「ありがとう」


「ふ、味は保証できないがな!」


 真っ赤な顔をして、強い口調だが恥ずかしそうに目を逸らし、立ち上がった。


「それじゃ私は行くからな」


「やだ、食べさせて?」


「な! なぃにを言っているんだ……」


 美波お姉さんは固まってしまっていた。


 俺は、ついつい面白くって心の悪魔が動き出し、そこの隙間に付け込む。


「じゃないと、許してあげないよ〜」


「そんな!?」


「男性特殊警察官を目指していくんなら、護衛対象の世話とかしないといけないんと思うんだ?」


「な!? そ、そんなことをすれば、夫婦みたいじゃないか!」


 ふぅふぅ、と息が上がっていた。とっても可愛いな?


「ほら! 早くして!」


「ク……しょうがないなぁ、今回だけだぞ!」


 美波お姉さんは、背を低くして正座し始めると、スプーンを持って、


「あーん……」


「暑そうだなぁ、ふぅふぅしてくれないの?」


「えぇっ、そ、それだと私の唾が付くだろう!?」


「いいよ、家族だし俺はやってほしいなぁ?」


 甘えた声を俺は出すのだった。美波お姉さんは今のうちに、弄り倒したいからだ。


「いいんだな? 本当にいいんだな?」


「うん! やって」


「ふぅふぅ……あ、あーん」


 心配そうに、スプーンを俺の方に伸ばしてきた。


 それを口の中に入れる。


 あっさりした味で漬物や野菜炒めのおかゆで、スイスイと喉を鳴らして通っていった。


「どうだ……」


 食べてないのに、美波お姉さんの唾を飲む音だけが響いた。


 もちろん俺の答えは決まっている。


「めっちゃ美味いよ!」


「そそそそうか! ふふ、それは良かった! もっと食べるか?」


 確かに美味しい——でも、やっぱり。


「そうだね、今度は俺が食べさせてあげるよ」


「お、ん? 今度は俺が食べさせてあげる?」


 片言になっていた美波お姉さんのスプーンを取り上げて、ふぅふぅと冷ましてあげ、


「あ〜ん」


「え、ふぇ!? ああーん」


 雛鳥のように口を開けたので、優しく手を添えて中に入れる。


「どう? 自分で食べてみて」


「美味ひぃです」


「俺も美味しいと感じだから、もっと自信持ってね。ふはは、でもこうしてみるとまるで恋人同士みたいだね?」


「ゔ!?」


 美波お姉さんは喉を詰まらせ、慌てて水を飲んだ。


「何を言い出すんだ! それは本当の恋人になった時に言うもんだぞ」


「じゃ恋人になろう?」


「な、なななな——私をからかうな!」


「あ、痛た!?」


 美波お姉さんはチョップをかましていってしまった。


「あーあ、もっと食べさせて欲しかったなぁ?」


 大声で不満そうに答えると、ほかの部屋から騒がしい音が聞こえた。


 同様にして倒れたかな? だと嬉しいが……。


 そうして、俺はおかゆをほうばって食べた。そして後で、口付けということに気づき頬を赤くしてしまったことは秘密だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ