朝、目覚めたらお亡くなりになりました。
あべこべ世界——。
今日、いつも通り自分の部屋で、目が覚める。俺はベット上から大きな机が見た。
隣に、透明な花瓶に挿した蕾が、カーテンの光を浴びて花が咲いている。
「魔法少女になってよ」
その綺麗な花弁をむしゃむしゃ食べながら、猫に似てキリッとした顔立ちに、兎のような長い耳を持った四足歩行の生き物がそこにいた。
「う? 聞こえなかったのかい——魔法少女になってよ」
「いや、俺バリバリの男だけど?」
俺、城田=響(しろだ=ひびき)は、今キュ◯ベーみたいな奴に言われた。
しかも、腕や足が細く、男のような筋肉の膨らみは無い。
けれど、
「どう見たって、俺は男だろう?」
「そうだね、魔法少女になってよ」
「もはや、魔法少女になってよ……ばっかだなぁ」
どんだけ魔法少女になって欲しいんだよ! って、話なんだが。
「魔法少女になってよ」
「うるせぇ、なれないって」
「ん? なれるよ。可愛くね」
「余計になりたくないわ!」
何なんだよコイツ。だいたい俺には、
「魔法少女になる意味が分からない」
「可愛くなれるのに?」
「まずはコソから離れろ」
誰が好き好んで、可愛くなんてなりたいんだよ。
四足歩行の生き物はやれやれとばかりに首を横に振った。
「何が不満なのさ。魔法少女になって人々を救う。素晴らしいことじゃないか?」
「素晴らしいこと……確かにな。でも俺じゃなくていいだろう? 適正で選んだんだと思うけど」
「いや、ドヤ顔で推測したところ悪いけど、暇でしょうセンサーに反応してね」
「お前、後で捻るぞ?」
本当に何なんだよコイツ。不本侵入だし、人間なら通報したい。
「人間じゃなくって残念だったね」
「ちゃっかりと、人の心読むな」
「あ、それから……」
四足歩行は息をためるように言い放った。
「後、三秒で君死ぬから」
「はぁ!?」
そして俺はばたりと力なく倒れ、ベットから落ちると死んでしまった。
☆☆☆
ここは……俺は?
目を開けると、いつのまにか病院の硬いベットに寝ていた。
訳がわからん、本当に死んだのか。
一瞬、とてつもなく苦しかったが、まさかの夢を落ちだったのか。
俺は手で、身体をペタペタを触ってみたみると、
手が小さくなったように感じた、それはまるで若返った幼い子供に……。
それに、なんでコスプレ用のカツラなんて被ってるんだ?
「チィーちゃん!」
「うぉ!?」
ガラリと大きく扉を開けると、女性が飛びついてきた。驚いたが、よくよく顔を見てみると美人だ。
長い黒髮がふんわりと布団の上にのると、涙を浮かべながら彼女は俺を見つめていた。
一見、凛々しいそうな雰囲気の人が、涙目で俺を見ているのだ。
「チィーちゃん、怪我はない? 大丈夫」
「はい、大丈夫です……貴女は?」
知らない彼女に優しく問いかけると、絶望したような表現を彼女は作り始めた。
「お母さんを覚えてないの!?」
「お母さん!?」
嘘だ、こんな美人で年齢を感じない女性を俺は知らない。まだ、お姉さんと言われた方が納得してしまいそうだが、
「本当にお母さんなのか?」
「ええ、そうよ。チィーちゃんのお母さんなのよ! 私を見捨てないで! なんでもするから」
また、ポロポロと涙を流す、それに対して俺はオロオロしてしまう。これじゃあ俺が、泣かせたみたいじゃないか。
「わかった、わかったから泣かないでくれ」
俺は、母親の背中をさすった。俺にはこれぐらいしかできることがないからだ。
「ああ、天使だ。癒される」
「にやけてる、にやけてるぞ?」
母親が異常じゃないほど、顔を崩して、天国に行きそうな幸せみたいな顔をする。
こんな顔、人に見せなれないと思ったら、
「あらあら、くふふ。仲良しですね」
「いいなぁ私も!」
「ダメですよ! 嫌われたら、私……立ち直れない」
扉に隠れて、三人の医者さんが顔を出していた。
俺は、苦笑いをして頭を下げる。
「キァー! 私に頭を下げわ!」
「はぁ? 私に下げたのよ!」
「結婚したい」
いや、その反応は可笑しいだろう……本当に大丈夫かここ。
言い争いを見ていると、母親が医者達に気づいてお辞儀した。
「本当にありがとうございました」
「いえいえ、こちらも仕事ですから」
結婚したいと呟いていた女性が優しそうに答える。
しかし、後の二人は少し不安そうな顔を出して、
「脳の損傷があり、記憶は時間が経てば治ると思いますが……」
「そうですか! わかりました」
母親は悲しまず、むしろニッコリと微笑み嬉しそうな顔をした。
なんでだよ!?
そうして、異常がなかった俺は母親に引っ張られ、病院を出でいった。
後ろを振り向いてみると、俺がいた病院はとんでもなくデカく、お城のようであった。
もしかして、母親は金持ちなのか?
「あんなにデカイ病院初めて見たな」
「ふふふ、チィーちゃん。あれは世界が誇る男性専用外来よ」
「そんなのが、あったのか……」
ニュースや雑誌に疎い俺は、女性専用外来なら知っていたが、男性用もあるなんて知らなかったのだ。
母親が近くにいたタクシーを呼び、乗り始めた。
「ところでさ、母さん……」
出発すると、前世の記憶しかない俺は、家族について聞くことにした。
母親は困ったような笑顔を見せながら、淡々と教えてくれた。
そして話をまとめると、どうやら俺には二人の妹さんと、上に二人の姉さんがいるらしい。
果たして他人の家族と仲良くできるだろうか……。
俺が心配しているのは、そういった部分であった。
いっそのこと、前世の話をするか? でも泣かれるのはなぁ。
いや、泣くどころでは済まないかもしれない。この母親の場合、犯罪……もしくは自殺……。
俺は頭をぶるぶると振った。流石にそれはないよな。
そんなことを考え、気晴らしに窓を覗き込む。
全てはあのキュ◯ベー野郎のせいだ。
俺は怒りに燃えていた。アイツは必ず成敗すると、
『ニュースをお伝えします。本日、女性が男性を痴漢を犯し、逮捕されました』
「はぁ?」
「また、ですか……」
ラジオを聞いた母親がため息をこぼす。それに続き、運転手さんもうんうんと首を振っているようだ。
これ、一部の男性からしたらご褒美だと思うが……。
そんなことを思いつつ、ふと何かが頭の中に引っかかった。
あべこべ小説? マジかよ。
ようやく気づいたのだ。窓を見て男性があまりにも少なかったことと、今の反応だ。
それにこの長い髪の毛のカツラ、納得ができてしまう。
あべこべ世界——通常の状態とは反対であることだ。
この場合、小説のあべこべ世界は男女の欲望が逆転する。
どこまで逆転しているか分からないが、少なくても女が、とんでもなくエッチなことが好きで、男性がそれを白い目で見始めるのだ。
そして、男性は女性を大っ嫌いとなり、男性は男性同士という恋愛関係が生まれ始める。
何これレベルである。ん……まてよ、ということは——。
ホモが圧倒的に多い世界なのか!?
人々はそれをご褒美だという——いやいや、変な思考になり始めた。
俺は頬を軽く叩いて落ち着せる。
『ニュースを続けます。先程痴漢で捕まった女性は魔獣となり、椎木県に現在行方をくらませています!』
おいおい、あべこべの次はファンタジーだと!?
母親が震えて祈るように、手を合わせている。
そんなにやばいのか……。
それに比べて運転手さんは平然としていた。
「運転手さん、魔獣って何ですか?」
「おや? お嬢ちゃんは知らないのか」
後ろを振り向いてニヤリと、口を三日月にして運転手さんは言い始める。
美人だったことに驚きつつも、俺は素直に頷いた。
「まだ小さいからわからないと思うけど、女の子って、歳を重ねるほど欲望が増していっちゃうのよ。それが原因で我慢すればするほど、細胞が活性化して魔獣になると言われているわ」
「魔獣って、こわ〜い狼さん?」
「そうだね……普通の女の子なら、関わらなくて済むんだけど、男性保護特殊警察官を目指すなら、戦わないといけない相手よ」
少女に変装していることを忘れて俺は、想像して口調を真似てみている。
しかし、あべこべ小説の馴染みの男性保護特殊警察官がいるのか。
あべこべ世界では、圧倒的に女性が多く存在する。そして欲望が強いためよく男性が被害に遭うのだ。
そこで、それらの被害を守るために国から選ばれた女性が優位つなれる男性保護特殊警察官だ。
常に一緒だと思うから、恋に発展してもおかしくないな!
「私は男性保護特殊警察官になるなんて、馬鹿馬鹿しいと思うけどね」
「え? なんでですか」
俺が聞いてみると、運転手さんの目が鋭くなった。
これは地雷を踏んでしまったか?
「私も男性との出会いを胸に男性保護特殊警察官を目指していたんだよ。で、頑張ってなってみると、男にあれやれ、これやれって命令されるのよ! ふざけるなって思いそのまま辞めちゃってわ。〈ブスの癖にこき使われて嬉しいだろうって〉って、どうせ私には縁がないんだ……」
まてまてまてまて!? 母親のようにどんどんネガティブになってきているぞ。
「男性はいずれやってきますよ……」
いやいや、こんな無責任なこと言えないし!
慌てる俺を見て、ぷすりと笑う始めると運転手さんは言った。
「大丈夫よ。今の私は魔法少女にぞっこんだからね」
「あ……はい」
アニメね。よく分かるよ俺もコレクターで部屋に色々あったから——。
そこで、もう無くなってしまったことを思い出した。
クソ悲しい!
やはり、実際に聞いてみると、この世界は随分と女性に厳しそうだ。
「チィーちゃん! もうすぐ家に着くからね。そしたら走るわよ」
「うん、分かった」
母親は手を握ると、そのまま両手を包み込んだ。
その手は微かに震えていたのだ。
『男! 男の子の匂い!』
「うわ!? 魔獣だと」
突然大きくカーブし始めると、女性が前のミラーを握りしめながら、窓にへばりついていた。
そのまま、大きく移動してドアを開けると、
「え?」
『捕まえ〜た!』
俺はまたまた腕を引っ張れてしまい、
そのまま、お姫様抱っこされて連れていかれた。
「マジで!?」
『ふふふへ、お姉さんがいっぱい可愛がってあげるからねぇ!』
顔をみると、これまた美人今まで見たことないほどのだった。
優しそうな雰囲気を漂わせている、アイドルと言われたら、むしろ納得してしまいそうだ。
青く長い髪をツインテールにして、緑色のエメナルドグリーン色の瞳に小柄な顔——そしてなりより……。
「ネコミミ!」
『んんん、どうしたのかな? お姉さんが怖くて狂っちゃったのかな?』
そもそも、動物好きの俺は——もちろんケモミミは大好きであった。
そう、大好きを通り越して、もはや大好物と言っても過言ではないだろうか?
「これからどこに連れて行くの?」
『君はこれから、私達のモノとなって回られて気持ちいいことをするんだよ』
なるほど、つまり他のケモミミも触りたい放題ってわけだな。
「パラダイス」
『この子、大丈夫かな? 目がキラキラしているんだけど……』
魔獣=ケモミミは一旦、人気のないところで俺を道に下ろしてじっと顔を見つめた。
『おかしい、本来の男の子が私を見れば、怯えて泣き出すはずなのに……まさか本当に女の子?』
「そんなわけ……」
ここでふと疑問に思う。母親は今頃心配して泣いているのではと、
「うん! 私はね。お兄ちゃんが大好きなの。だからうっかり洋服を着てしまったんだ」
『分かるよ! やっぱり男の子の洋服は着るべき物なのよね』
やべーよ、同感するなよ。
「え! お姉ちゃんもその気持ち分かるの?」
『うんうん、私はクラスの体操着を取って家に持ち帰ったこともあるんだよ』
「お姉ちゃん凄い!」
そんなこともあるのかよ。注意しておこ。
「他には?」
『他と言ったら……クラスでパシリになったことぐらいかな』
お姉ちゃんも声に張りが無くなって後からネガティブになってきたぞ。俺はこのやり取り何回やるんだよ!
「大丈夫だって、辛かったかもしれないけど。誰にでも失敗はあるものだよ」
『君……』
お姉ちゃんはうるうるし始めた。安心してよ、短時間で後悔しそうな人、二人もいたから、だから泣かないで!
「魔獣! ようやく見つけたわ」
『な……出たわね、魔法少女!』
な! この世界に魔法少女が実在するだと? 背後からお姉様口調で聞こえて、
「もう、大丈夫だわ。私が倒すんだから」
「うわ」
そこには魔法少女をしたイケメンのお兄さんがいた。
うわぁ、こりゃ酷い。
なかなかの筋肉が見えて、まるで男の尊重さを感じる。
そして、ひらひらのピンクスカート。
うわぁ、酷い。同じ男と感じたくないほどだ。
「安心すればいいわ。必ず私が倒してあげるんだから」
『やってみろよ!』
イケメンが顔面を殴ると、ネコミミのお姉ちゃんが吹っ飛んだ。
そしてそのままステッキで、剣道をするように構え始めた。
あの……持ち方違くありませんか? 絶対物理的な攻撃だよね。
「喰らえぇ!」
『ふぐ!』
立ち上がり素早く動くお姉ちゃんを正確に捉えると、頭を叩き出したイケメン……それはまるで、猫をいじめているようであった。
解せぬぞ。
「お姉ちゃん逃げて!」
「な! なぜ止める! 洗脳されているのか!?」
「イケメンは死ねぇ!」
俺は華麗な拳を、天高く振り上げると腕が光り出し、アッパーを決まる。
「ぐは!?」
まるで、バイキン○ンのように魔法少女イケメンは、大空に向かって星になり、帰って行った。
イケメンよ、さらばだ。
ネコミミお姉ちゃんの方をみると、口が開いていた呆然としている様子だ。
次に腕を目線がいく。そこにはおしゃれな手袋がされてあった。
「あ、あかんやつだ」
徐々に魔法少女になりかけてるぞ!?
急いで俺はその手袋を取り、慌てて投げ捨てた。
契約を承知してないのにもかかわらず、魔法少女にはなりたくないからな。
『き、君は一体……』
「弱いものイジメはダメって! お母さんに習ったんだからね。私がお姉ちゃんを守るよ」
よぉぉおし、話題を逸らしてやったぞ。俺も魔法少女って雰囲気壊すようなこと言いづらいからな。
『女神だぁ、うへへ』
女神……じゃない。
ネコミミのお姉ちゃんは顔を崩して、天国へ行きそうな幸せみたいな顔をした…………どっかの誰かと同じだなぁ。
ケモミミがピクピクと動いていた、めっちゃ可愛い。
「お姉ちゃん、そのミミ触ってみてもいい?」
『ふへへ、女神様……ふぇぇ!?』
「もう、我慢できない触るよ!」
俺は指先で、ミミを優しく触った。作り物ではないしっとり感!
『ふぁぁぁ、ひぃひぃ』
色っぽく涎が垂れ落ち、息が上がっている。
頬を赤く染め、実に恥ずかしそうだ。
『はひ、も、もうダメ、このままじゃ』
「お姉ちゃんのこともっと知りたいなぁ?」
『ダメ、ダメだよ君』
ぶるぶると体を震えさせる。でも仕方ないんだ。
小さくなった子供の体では、好奇心が押されられないんだ。
俺はクンクンと嗅いでみて、ペロリと、首筋を舐めてみた。
ケモノ臭さは無かった……残念。
『あぁぁぁぁ、そこは……』
「気持ちいいだろう?」
顎をくすぐる様に掻いてみたら、目をギュッと力を入れて気持ちよさを我慢しているらしい。
いつまで持つかな?
そんなことを考えていた俺だが、パトカーのサイレンの音が聞こえ、
「魔獣! 大人しく捕まれ!」
「ク、悪いタイミングで……」
そして、目を離した隙に、ネコミミお姉ちゃんは姿を消していた。
どうやら逃げられてしまったらしい。パトカーから飛び出し、女性警察官は俺に駆け寄ってきた。
「お嬢ちゃん大丈夫ですか?」
「うん! 心配してくれてありがとう」
「いえ、これも仕事ですので」
そういうと帽子を直し、女性警察官は執事の様にパトカーの扉を開けると、家まで送ってくれた。
「チィーちゃん!!」
「うわぁ!?」
豪邸だろう大きなマンションの入り口に着くと、母親が飛び出し抱きついてきた。
「お、お母さん……」
「チィーちゃん、チィーちゃん、うわわぁぁあん」
泣き崩れる母親の涙を浴びながら、俺は背中をさする。
ここまで心配してくれたのに、ケモミミとじょれまくっていた俺は少しだけ、頭を冷やしたのだった。
※この作品は、一年前の夏に書いたものです。キャラクターがぐちゃぐちゃであり、また文章のノリが変わるかもしれません。それでも宜しければ、楽しんでいただければ幸いです。更新が遅くなります。