白い翼の少女
「貴様もこの教団の仲間か?」
そいつは人間離れして整った顔と、さらさらとなびく、首元で揃えられた髪を携え、気品を感じさせる立ち振る舞いでそう聞いてきた。けど確認する前に攻撃してきてるじゃないか!これはどう答えても無駄だな…
「フレイアロウ!」
無我夢中で僕が放った炎は、相手に届く前に霧散してしまった。
「宣戦布告と受け取るぞ、少年。」
「馬鹿小僧!天使にゃ魔法は効かねぇ!とっとと退きな!」
「天使…やっぱりこいつが天使なのか。」
悪魔の言葉は耳に入らず、何度も何度も魔法を打ち込み、その全てが打ち消された。天使はさも興味なさげにこちらを睨み、遠く離れた距離から剣を振るった。すると、その衝撃波が空気をうねらせながら向かってきた。相殺させようと魔法を放つが、意味を為さず、またしてもすさまじい風が全身を覆う。歯を食いしばり、体を屈めて踏ん張る。なんとか耐えるが、天使はもう次の攻撃に移っていた。
「弐式展開:桜花。悪いな少年、死んでもらうぞ。」
彼女の周りに淡い光の玉が無数に浮かび上がる。そして、天使のその短い髪が翻ると同時に、光の玉が一斉に向かってきた。為す術のない僕は、もろに直撃をくらい、フォレストウルフの飛びかかりと同じくらい、後ろに吹き飛んだ。
「レド!大丈夫か!レド!」
イルガンドが呼ぶ声が遠くに霞んでいく。全身が、痛い。意識が遠のく。カツン、カツンと天使が近づく音がするのに、体が言うことを聞かない。くそ、俺の復讐は、まだ、なにも…
気張っていた全身の力が抜け、瞼が落ち切ってしまった。