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会敵

 目的地が、ない。そのことに気付いたのは、鬱蒼とした森で迷い、しばらくしてからだった。

 「なぁ、天使様ってどこに行ったら会えるんだ?」

 「そうさなぁ、我ら悪魔は魔界から来とるから、きっと天界もあるのだろう。ま、どこにあるのかなんて皆目見当もつかんがな。」

 僕の内側に取り込まれた悪魔が応える。

 「…教会とかあたってみるかぁ。」

 「一先ずこの森を抜けんことには始まらんぞ?」

 「うるさい、わかってるよ。」

 太陽はもうオレンジ色で梢を染め、長い長い影を背にして歩いた。


 「ヲォォォォ!!」

 日はすっかり落ちたが、木立がまばらになり、もうすぐ森を抜けられる頃合いになって、獣の雄たけびが耳に入ってきた。

 「近いな、気をつけろよ小僧。顔が強張ってるぞ。」

 「ああ、けど戦闘なんて初めてなんだ。緊張しない方がおかしい。」

 「それもそうだ。だが我が授けたスキルさえあればなんてことはない。いいか、イメージだ。炎を想像すれば炎を創造できる。魔法ってのはそんなもんだ。」

 アーデルでは14歳になってからしか魔法を習得できない。魔法というのは常に暴走など、意図しない被害をもたらすリスクを含む。分別のつく大人だけが魔法を使えるのだ。だから僕は魔法を使ったことはおろか、魔法のいろはなんて何も知らない。それがいきなり実戦ときた。

 草の根をかきわける音がする。音の方向を向くと、暗闇から白い牙が飛び出してきた。悪魔から授けられた身体能力のおかげで、回避は容易だった。

 フォレストウルフか、と独りごちる。群れでなくて助かった。狼はこちらを睨みつけ、毛を逆立て、己の存在を誇示している。今にも再び襲い掛かってきそうで、迷っている暇はない。頭の中で速く鋭く飛ぶ火の塊を思い浮かべ、

 「フレイアロウ!」

 まるで昔から扱っていたような熟練した仕草で放つ。目の前で形作られた、腕の太さくらいの炎が狼に向かって目にも止まらぬ速さで飛び、貫いた。狼は一瞬で炭となり、肉の焼けた匂いと静寂だけが残った。

 「最初にしては上出来だな。この世で最強の力なんだ。慣れればもっとすごいこともできるぞ。」

 「僕はそんなことには興味ない。」


 目先の障害はなくなった。森の終わりはもうそこに見えている。

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