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惨劇の中で
来訪ありがとうございます。
復讐の物語を彩る世界観をこれから存分に堪能して頂ければと思います。
どうぞお付き合いください。
泣き叫ぶ声を聞いた。
助けを求める声を聞いた。
それが叶わず、断末魔に変わった声を聞いた。
真夜中だというのに、窓の外は赤く揺らめく光に照らされ、不自然に明るい。それを眺めていると、兄が憔悴しきった表情で部屋に飛び込んできて、僕の腕を掴んでから駆け出した。家の裏に回り、庭に掘った小さな穴に僕を押し込み、上から蓋をした。
夜が明けるまで絶対に出てくるなよ、と兄は言った。
真っ暗で何も見えなくなったが、遠くの断末魔に交じってざざっざざっという音がする。あとから分かったが、兄が蓋を土で覆い隠そうとしていたのだ。しばらくしてその音が急に止み、誰かが勢いよく走り去り、その足音に続くように、いくつもの足音が僕の鼓膜に響いた。
それからやがて、叫び声は聞こえなくなり、ただ何かが崩れ落ちる音ばかりが小さく聞こえた。事態が何も分からない僕は、その単調な音と、自分の呼吸の音だけを耳に残しながら、糸が切れたように眠ってしまった。