赤い自意識
私と世界は真っ赤に染まった。
人と人を別つ逢魔が時の色。
その色に染まった街を、コンクリートのフロアから一瞬見下ろす。
そこでは皆が孤独にうごめく。
しかし、私は孤独じゃない。
太陽。一億五千万キロの距離がある天体から放たれる光。
空気に触れて変質してしまった赤い光。
その電波が私に、一人じゃないことを伝えてくれる。
彼女のとなりにいると、身が震えた。
黒体放射する感情に私は焼かれた。
だけど、唐突に終わった。
彼女は私の前で、黒い車にはねられた。
ぐちゃぐちゃに広がる赤は私と混ざって、赤褐色に。
『…………のに』
なんて言ったのかな。
死ねばいいのに?
好きだったのに?
そこで黒い私とともに、彼女は永遠になった。
彼女が私の制服のスカートを赤く染めた時。
彼女の全身が、私を真っ赤にしてくれた時。
私の色は赤に決まった。
だから、今。私を赤い量子が包んでいる、今。
私の唇がやわらかいものを口にするように身じろぐ。
私の虹彩を潜って、水晶体を埋め尽くす。
私と彼女が、ほんの一瞬だけ交差する瞬間。
私は美しかった。