フィジカル・コンプレックス
いつも読んでくださる方、本当にありがとうございます。
朝、布団の中。
眠いのを我慢して、時間を確認するためにスマホに手を伸ばす。
8時15分。
登校は8時半まで。
その時間を過ぎると遅刻。
昨日は学校に行こうと思ったが。
しかし、15分で支度して、それから学校へ行くなんて無謀なことだ。
今日は学校を休もう。
遅刻してゆみ先生に怒られるくらいなら、その方がいい気がする。
昨日の自分は昨日の自分。今日の自分は今日の自分だ。
今日のことは今日の自分が決める。
そのとき、ピロンとスマホから通知音がした。
スマホにもう一度目をやる。
『先輩! 学校来てくださいね! 来ないとチクりますよ』
俺のスマホには後輩からのメッセージ。
あれ、俺春前さんに連絡先教えたっけ。
まあいい、それよりも...。
パンツ事件(後輩のスカートの中に無理矢理手を入れられた)のことを周囲に知られるのはさすがにまずい。
一度頭の中で今日の予定を練り直す。
今日は学校に絶対行こう!
学校支度を5分で済ませ、家から勢いよく飛び出す。
いつもなら30分かかるはずの準備を、5分で済ますとは、我ながら自分の機敏さに驚いた。
家から学校は10分もあれば間に合う位置にある。
あとは、学校に向かって突っ走るのみ!
******
「先輩! ちゃんときてくれたのですね!しかも遅刻しないで!」
後輩は俺の手を握り、ぶんぶんと振る。
後輩こと春前さんが言う通り、俺は無事学校に間に合った。
ホームルームが終わったあと、春前さんは俺の席の目の前にやってきて、俺を賞賛してくれた。
「ああ、まあな。脅されたからな」
「先輩はこうでもしないと絶対学校来ませんから」
「失礼な。絶対じゃない、大体だ」
「大体も十分なくらいダメです。でも、まあ学校来てくれたのは嬉しいです......」
後輩はなぜか少し頬を赤らめる。
「まあ、適当に授業受けて帰るわ。あ、3時間目に体育あるから2時目終わって帰る」
「ダメです。先生にあのことチクりますよ」
「先生に言うとか春前さんは小学生かよ」
ちなみに春前さんのお胸は小学生だ。
「そんなことを言うのでしたら、今すぐ職員室に行きますよ?」
後輩がニンマリしながら、そう言う。
「ごめん、俺が悪かった。後輩の胸のサイズが小学生と同じくらいだなんて思ってしまって」
俺は春前さんの上半身をじっと見る。
「そんなこと思ってたのですか!? は、破廉恥です!」
胸を隠しながらそう言う。
やはり後輩をいじくりまわすのは面白い。
でもこれ以上刺激すると本当に先生にチクられるので、もうやめることにした。
「破廉恥って思う方が、実は破廉恥なんだぞ」
「もう、いいです。話を戻しますけど、6限までちゃんと受けて帰ってくださいね。セ、ク、ハ、ラ先輩!」
ご立腹のようだ。
仕方ない、今日のところは可愛い後輩の怒りに免じて、できる限り真面目に学校生活を送るとするか。
「わかったよ。弱みを握られた俺が早退できないのは薄々気づいていた。学校の授業を6限まできっちり受けて帰るよ」
「逃げ出さないでくださいね?」
「俺は嘘をつかない」
「本当ですかー?」
「安心しろ、俺は嘘をつかない。お胸が小学生っていうのも本当のことだ」
「それは嘘って言ってください! 」
朝からクラスメイトとこんなに話したのは随分とひさしぶりな気がする。
今日は何かいいことが起こる、そんな気がした。