だめだめ先輩を監視したい!
「猪瀬先輩待ってください」
校門を出る手前で誰かに声をかけられた。
「先輩」と呼んでいるので後輩(年下という意味で)なのだろうと察しがつく。
振り向くとめんどくさそうだな......。
俺は家に帰りたい。
だから、前へと進むのみ。
「ちょっと! 無視しないで下さい!」
目の前に声の主が登場。
よくよく見ると、春前さんではないか。
ついに、俺を怒りに来たのか?
まあ、そうだろうな。週に2回の会合には一回も顔を出したことがないし、そもそも風紀委員としての自覚がないのだ。
真面目な性格そうな春前さんにとって俺は許せない存在なのだろう。
この学校の風紀委員は他の生徒の模範になるような生徒ばかりだ。
現に、目の前の春前さんだって、制服を学校紹介のパンフレットのようにきちんと着こなしている。
「先輩! なんで帰ろうとするんですか!」
「ん? 学校がめんどくさいから。んじゃ」
俺が春前さんの右側を通ろうとすると、すかさず春前さんは俺の進路を塞ぐ。
「待ってください。先輩をここで帰すわけにはいかないのです」
「それは、なんで?」
「私が先輩の監視役だからです。先輩が道を外れた行動をすると私が止める。それが私の仕事です。これ以上は聞かないでください」
「え?」
監視役とは? 出来の悪い風紀委員には監視役がつくのか? もしそうなら、かなりめんどくさいことになってきたな。
「聞こえませんでしたか? 私が先輩の監視役で......」
「いや、聞こえてるけど。なんでまたそんなめんどくさいことを......」
「私だってめんどくさいです。先輩がここまでダメ人間だとは思いませんでした。失望しました! 」
「じゃあ何でこんなめんどくさいことを」
「そ、それは! ふ、ふーきいいんだからですよ! 」
春前さんが言っていることが今のところ誠か嘘かわからない。
ここはちょっと揺さぶってみるか。
「俺も、一応風紀委員会だ。仕事ぐらいわかっているつもりだ。そんな仕事ないと風紀委員の友達から聞いている。
春前さんを見る限り自分から進んで俺の監視? をしているようには見えないんだけど誰かから頼まれたんじゃ...例えばゆみ先生とか」
風紀委員の友達などいないのだが。
「答えられません」
人が「答えられない」というときは大体「はい、そうです」っていう意味なんだぞ、春前さん。
だから俺は「はい」と答えた前提で話を進める。
「っていうことはゆみ先生だな。先生に俺の監視を頼まれたんだな、いや、違うなそれなら断ればいい。だったら、ゆみ先生に弱みを握られて嫌々やらされているとかかな?」
「ちちちちがいます。せ、せんせいは私の尊敬するせんせいで」
うん、この反応はビンゴだ。
「良いんだよ、ここで吐いちゃえば楽になるよ」
「絶対に言いません! 死んでも言いません!」
「8割方ゆみ先生だな。先生に何かしらの弱みを握られ、嫌々俺の監視役を引き受けたと。明日ゆみ先生に聞いてみるか。そして春前さんを監視役から外してもらって-」
「や、やめて下さい! そんなことされたら私が大変なことになります! 先輩の監視役をしないと私は卒業までいきていけないんですう〜」
「あー、やっぱり」
やはりゆみ先生の差し金だったか。
最近ゆみ先生が俺の遅刻や早退を笑顔で許してくれたのはそういうことか。
俺を風紀委員会にさせたのも、春前さんが監視しやすくするためだったのか。
「もう......いいです。ゆみ先生には弱みを握られているのですよ。先輩が更生するまで私は監視役のままなんです。だから、私に大人しく監視されて、とっとと更生して下さい」
「いやだ」
いくら監視役が可愛い後輩(年齢的に)だとしても、ゆみ先生の差し金だ。
俺を更生させるためには手段を選ばないだろう。
だから監視されてやらない。
こんなの俺に人権がない。
ゆみ先生に「監視役を外せ!」などと言っても多分無駄な気がしてきた。
教育委員会に苦情を言ってやろう。
「お願いです」
「いやだ」
「お願いです」
「嫌だ......って、えーーーーーー!」
いつの間に、俺の手が後輩のスカートの中に
そして後輩はスマホでそれを撮影。
言い逃れは絶対にできない。
しまった......後輩にやられた。
俺は春前さんに弱みを握られたのだった。
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