風紀委員
「あなたには風紀委員になってもらいます♪」
......。
ゆみ先生は馬鹿なのではないのだろうか?
自分で言うのもあれだけど、俺は生粋の遅刻魔というか学校サボりマン。さらには学年トップクラスの頭の悪さ。
いいところといったら、ヤンキーではないところくらいだろう。
うちの高校の風紀委員会は結構な権力を持っている。
身だしなみが悪ければ、容赦なく注意してくる。
まあ注意してくるのはいいのだが、「何や、テメー調子乗ってるんのか!!!」とか言って歯向かうヤンキーなどもそう多くはない。そんな反逆者には、風紀委員権力を行使し、奉仕活動を命じることもできるのだが、それでも言うことを聞かない奴には停学処分まで言い渡すことができる。
社会でいう警察みたいなものではないだろうか。
故に、行いがあまりよろしくない俺には不相応な役職だ。
「やっぱり、引き...」
「先生と放課後勉強会したいのかな? あ! サービスに大量の宿題を出してあげますよ」
これ以上宿題を出されたら、生活に支障が出る。
「はあ......」
「いいですけど、俺は周りの目なんて気にしないんで、好き勝手やりますよ。風紀委員会だけど学校サボりますよ?」
「いいですよ♪」
「??」
意外にも、学校をサボることを許してくれて少し不思議に思った。
風紀委員になることで何の意味があるのやら。
******
高校2年生になって早1ヶ月。
桜の花はすっかりと散り、木は緑一色に染まっている。
俺は先生に半強制的に風紀委員会に入れられた。
風紀委員になるためには立候補して、先生の許可があれば誰でも入れるが、先生の許可が必要なので、俺みたいな怠慢な奴やヤンキーは決して入ることができない。
「はあ......」
何で俺なんだよ。
教室の端っこで、周りに聞こえないくらいの大きさで溜息をつく。
俺は本来ならば3年生のはずの2年生ということもあり、絶賛ぼっち中だ。
留年した先輩に絡みたい奴なんていない。
ましてや元々ぼっち気質で友達ができない俺には友達などできないのだ。
勉強もしたくない。
部活もしたくない。
だから学校がめんどくさくなるということだ。
今日も家に帰るか。2時間目終わったばっかりだけど。
カバンに手をかけると......
ジーーーーーーー
最近視線をとてつもなく感じる。
その視線の発射地点は俺はわかっている。
このクラスのもう一人の風紀委員の春前英玲奈さん。
黒髪は行儀よく結ばれていてツインテールとなっている。その髪は漆のように艶々としている。
顔立ちは童顔気味だが、冴え冴えした目を持っているせいか、固い意志をどことなく感じた。
ジーーーーーーー
彼女の視線は止まない。
何だろう、心当たりは沢山ある。
風紀委員としての自覚がない、風紀委員会の会合に一回も行ったことがない、などなど。
そんなことは些細なことだ。
たかが学校の組織、この場所を抜け出せば無法地帯なのだ。
「帰るとするか」
俺は教室を後にすることにした。
「あっ」と春前さんの声が聞こえたが、俺は無視することにした。
次回はヒロイン登場します。