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レイルルート

すみません、前話が長すぎたので2つに分けました。

4月21日18時以前に読んでくださった方は、続きは21時投稿になります。

その日の夜、帰宅した父に早々に呼び出された。

お前何したの?とレイルに尋ねられたので、普段の格好のまま女になってたと伝えたら大笑いされた。

間抜けなカッコだの、男装だの、動きやすければどうだっていいんだけど、なんで駄目なわけ?


父のお説教内容といえば、やはり昼のことだった。

女性としての行動がおかしいこと、もう少し髪をまとめなさいだの、男の格好をするんじゃないだの…あの、なんだか娘に対しての説教じゃないですかね、それ。



「父上、僕は息子ですよ」

「当たり前だ」

「では、こんな女性としてのレッスンなんて不要ではないですか」

「そういう問題ではない」



じゃあどういう問題だ。

と言いたいが、説教の時間が3倍になりそうなのでさすがに止めておいた。



「とにかく、アルベルト様の手前もあるから、女になっている時は女性として振舞ってくれ」



そう締めくくられて、その日は部屋に帰された。

国王陛下と僕が女になることに何の関係があるというのだ。

ざっと湯浴みをして、ベッドに寝転がる。

最初のうちは女の身体に困惑もしたが、ミツコが居たおかげで大分慣れた。



「ミツコぉ~」

――――『は~ぁい~』



いつも通り間延びした返事が返ってくる。



「昼のこと、教えて」

――――『昼?――ああ、はいはい、ゲームの話か』



こいつ、すっかり忘れてたな。



――――『忘れてませんって』

「はいはい、で?」

――――『ええと、どこから話せばいいかな。えっと、前にゲームは15歳から始まるって話はしたよね』

「うん」

――――『で、基本の流れは一緒何だけど、攻略キャラによってストーリーって大きく変わるわけですよ』

「攻略キャラっていうと、僕とレイルとバルバロッサとグリフィスだっけ?」

――――『そそ、後、ヒロインが知り合うテイマーの子がいるんだけど。その子も【ギフト】持ちだから学園に行ったら会うとは思う』

「とりあえず5人ってことだね」

――――『うん、で、たとえばシリルをメインで攻略するとするでしょ?したら、シリルのイベントが発生したり、シリルの過去とか置かれている立場とかの問題がお話の中心として進むわけ』

「僕のストーリーって?」



つい、気になって聞いてしまった。



――――『シリルはネガティブ系かな。シリルは基本的にレイルにコンプレックス持ってるから、ヒロインがシリルを励ましてだんだんラブラブになってく、凄く普通のストーリーが展開するのね。シリルの場合、基本がネガティブだから、バッドエンドに進むと最悪なんだけど、正規ルートはかなりほのぼの系なのよ』



おい、ちょっとまて、ネガティブとかバッドエンドってなんだ。

ちなみに、僕は今のところレイルに対してコンプレックスなんて感じてない。



「レイルにコンプレックスなんて無いけど…」

――――『そこはマダマダだね、本当はシリルの【ギフト】って変身とかじゃないから、レイルの【ギフト】が開花すると差が開いちゃってどうしようもなくなるって感じかな』

「レイルのギフトって?」



なるほど、ミツコに聞けばレイルのギフトを事前に知ることもできるのか。

あれ、実はミツコって存在の方が僕にとって【ギフト】より有益なんじゃないの?



「あ、ちょっとまって」



聞きたいことが増えてきたから、メモを取ることにする。

あまり使っていないカギつきの日記を取り出しペンを取る。

かなり前に父からもらった日記帳だが、日記をつける習慣なんてない僕は最初の3ページぐらいしか使ってない。



「――で、レイルは?」

――――『シリルの能力がイレギュラーだから、変わるかもしれないけどいい?』



そんなのは大前提だ。



「いいよ」

――――『レイルたんはね、魔眼だよ。効果はお父様と一緒』

「父上と一緒って?」

――――『そこは、シリルたんが知らないなら今は知らなくていいと思う』

「なんでだよ」



とりあえずメモを取る。

なんだよ魔眼って、最強能力の1つじゃないか。

父上が魔眼の能力者だったことも、今始めて知った。



「父上の魔眼って…なんだよ」



家族にも教えられていない事実に、チッとしたうちをしてしまう。



――――『こればっかりはしょうがないんだよね。お父様の立場上教えられないわけですよ』

「でも、話してよ。設定とかなんとか言い出したのはミツコでしょ」

――――『うん、そだね。こっからはレイルたんのメインストーリーになるんだけどね――』



そう話し始めたミツコの話は、何言ってんだこいつって思うぐらい大げさな作り話のようだった。



ミツコの話によると、父は宰相という立場で仕事をしながら、国の影で動く特殊部署を牛耳っているということ。

国外から持ち込まれる害になりそうなものの調査や、陛下を暗殺しようとするような者の捜査に足止め。

ヤバいヤツらに対しては、捕らえて情報を聞き出したり、謀反を起こせないように制裁を加えたりと、行動だけなら宰相としての仕事の1つだと思うが、宰相ではできないようなかなり黒い動きをするのがその部署なのだそうだ。

そして、レイルの【ギフト】こそ個別ストーリーの中心となり、レイル自信もその部隊の一員として行動させられることになるということらしい。


ちょっと待って、今の平和なマクドール家にそんな裏の顔があるとか怖いんですけど。



「うそでしょ?」

――――『うーん。わかんない』

「わかんないって何よ!」

――――『だって、ゲームだし?ルートによって全然設定が違うし、今だって設定とは全然違うわけでしょ。シリルだってゲームと違うんだから、どうなるか分からないじゃない』

「ぐぅ」



そう言われてしまうと言葉に詰まる。



――――『ただね、昼に思ったことなんだけど』

「うん」

――――『レイルルートだと、お父様はレイルの魔眼を学園の潜入調査に使わせるわけなんだけど、未だレイルの【ギフト】は開花してないから、先に能力が出たシリルを同じように育ててるんじゃないかって…』



ってことは、なに?

レイルの変わりに僕をその裏の部隊に引き入れるってことなんですかね?



「なにそれ!怖い」

――――『ま、わからないけどね、憶測だよ、憶測』



これ聞かないほうが良かった話なんじゃないか?



「やっぱ、この能力って最悪じゃないかー…」



メモを取りながらイスに背をあずけてひっくり返る。

ああ、やだやだ、なんで【ギフト】なんて開花したんだ。

なんで無くすことが出来ないんだ!



――――『で、どうする?』

「どうするって、何があぁぁあああーーー」



もう、なんもかんも嫌になってた、特訓もなんも投げ出したい。

やっぱ逃げる、逃げたほうがいい。



――――『他のメンバーのストーリーも教えるー?』



ぐあぁぁああーーーーそうか、まだあと3人もいるのか!!

聞いておかないといけない気がする!

凄い聞かなきゃ駄目な気がするんだけど、今日はもう聞きたくない!



「やだ~…もう、今日は…」

――――『やっぱり?なんとなくそう言うと思った』

「うぅ…ミツコぉ……なんで、女になたっときに中身もお前じゃないんだよ」

――――『あはは!それイイ!それめっちゃいいじゃない!そんなことできたら、リュミエール様との時間が超楽しいじゃない!見てるだけもいいけど、そっちのほうが断然いいなぁ~』



駄目だこいつ…。



「はぁ…いいよ、もう寝る」

――――『ああ、はーい』

「あのさぁ、大分慣れたとはいえ、僕は訓練の日はぐったりなんだけど。ミツコは疲れないわけ?」

――――『うん?うん。体が無いからね、別に疲れないよ』



お前の存在はいったい何なんだ…。

疲れないとかずるい。



――――『あ、でもシリルが魔力切れおこしてると力が出ないから、苦しい…のかな。話しかけられないし、あたし自身が寝てる感じ?思考とかできなくなっちゃう』



ミツコへの影響ってそんなもんなんだ、と思いながらベッドにもぐりこむ。

でも、コイツ一体何なんだろう。

そろそろ誰かに相談してみたいけど、一体誰に相談したらいいのか。


リュミエールに相談なんてしようものなら、物凄い笑顔で根掘り葉掘り聞かれそうだ。

はぁ、と、大きくため息をつく。



色々と悩む所はあるものの、それでもきっと、ミツコの存在を調べるときはあの悪魔の力を借りることになるのだろう。

そしてそれは、そう遠くないうちに実現しなければいけないのだ。

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