5日目 戦闘チュートリアルなのかもしれない
「もーあとちょってで街道に出れたっていうのに。めんどくさいなー。」
「まぁ、俺に任せておけ。」
女の子の前に率先して前に出るなんてやはりイケメンとしての格が常人のそれとは違うな俺。ザクとは違うのだよザクとは。
これにはさすがに惚れちまっただろうな。ハハハ、罪づくりな我を許せよ。
「いや、君めっちゃ弱いよね今、僕に任せときなって。」
「別にアレを倒してしまっても構わんのだろ?」
「いや構わないけどね。構わないけどそうじゃなくてね。」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。」
このテンプレは知っているぞぉ!俺が超絶チートな格闘術を使って敵をボコボコにしてハーレムの礎を築く重要なテンプレだァ!
ドカバキグキゴキュ
「クソッ!なかなかやるじゃねぇか・・・ガクッ。」
「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない。」
「えっなに。まだ俺何もしてないんすけど!?一人でコケてそんなボロボロになることってある!?」
「いやその人はいろいろアレな人だから気にしない。」
「お、おう。」
「フッ、気をつけろ。アイツ、なかなかの使い手だぞ。手を抜くなよ。」
「え、なに肩に手おいてるの。あれだけ意気揚々と飛び出しておいて結局私がやる感じなの!?あんなにお前は下がっておけみたいな雰囲気出しておいて!?」
いやだってもう痛いの嫌だし・・・異世界怖いよぉ・・・。
「えーと。ほら、僕もいろいろ疲れちゃってさ、戦うのとかめんどくさいし今日は引き下がってくれないかなー?なんて・・・。」
「へっ、へへへっ。そうか。お前も俺の実力にビビっちまったようだなぁ。お前の後ろにいる奴みたくなりたくなかったら金目の物をおいていくんだな。」
「いや、君がやったわけじゃないよね!今日は全人類IQが3にでもなってるの!?」
「う、うるさい!御託はいいからさっさと金目の物をおいてけ!」
何回同じこと言うんだよ。最初の街の門番でももうちょっと語彙力あるぞ。
「あーもうめんどくさいなー。」
えっ何急にそんな紐取り出して。・・・まさか!
「と、盗賊も見てるのに急にそんなハードなプレイを///」
「いい加減ぶっ飛ばすよぉっ!?この状況でどういう発想なのさ!」
シュルルルルル
おお、縄を投げたと思ったら次に引っ張った瞬間に盗賊が縛り上げられたではないか。これは相当なレベルの緊縛師でないと行えない芸当・・・。こやつっできるっ!!!
「おしっと。」
あらまぁそんなにしっかり縛り上げちゃってわざわざ踏みつけてまでギュッと固く結ばないでいいでないの。
いやむしろご褒美か
「俺の番はまだですか?」
「知らないよ。」
「では私の番は?」
「もっと知らないよっ!!!」
そんな疲れた素振りをして・・・盗賊め。彼女みたいな良心的な人間に苦労をかけるなんてとんだ許さんやつだ。コイツは今後、シュークリームを食べようとしたらクリームが全部ケツからでる呪いをかけるに値する。
(ッッッッ!そんな、酷すぎますよ!いっそ殺してあげたほうがまだ優しい!)
フッ死は贖罪にはならんのだよ。彼はそれだけのことをしてしまったんだよ。
「ふぅ、やっとこれで街に行ける。いろいろ疲れるなぁ今日は。」
「まったくだ。」
おおっとなんだそのジト目は。何が言いたいんだ。そんなに見ても何も出ないぞ。
「本人自覚なしと、はぁーまぁいっか。行こ!」
「うちのバカが迷惑をおかけします。」
「君のせいでもあるからね!」
ムムッ、バカとは失敬な。これでもテストで先生に丸をつけさせないことで右に出るものはいないとまで言われるほどの神童だぞ。
(まったくです。私が迷惑をかけることなどあるはずがないのに。なんて言ったって私は超高精度AIによって制御されるライフサポートアシスタントだというのに。)
いやお前の評価は適当だっただろ。何がライフサポートアシスタントだ。サポートするどころかぶち壊しだよ。ライフブロウキングアシスタントに改名しろ。
(いえいえ、正当な評価を受けてるのはあなたの方でしょう。私が完璧な存在であることにすら気付けないとは。常に脳みそが射精しててとろけちゃってるんですか?)
「なんだと!?」
「なにか!?」
「何急に喧嘩始めてるの!?無言で通じ合うものでもあった!?」
フッまぁいい。俺は大人だからな。もう大人の階段登りすぎもはや地下にいるもんB59階だし。
(いえいえ、私こそ大人気がございませんでした。低レベルな人に合わせてもはや大人のエレベータで登りすぎてアフリカにたどり着いた私が気を使えべきでしたね)
「ハッハッハッハッハ」
「オッホッホッホッホ」
「いやナニナニ、怖いよ。もうなんでもいいから先に進もうよ・・・。」
確かに一理あるな・・・。進もう明日へ。後ろへ振り返ってる時間などないのだ。三歩歩いて全て忘れて前だけ向いて歩いていきたい。とりお
「えっ、何放置していこうとしてるんすか。いやちょちょちょちょまっちょえっっ」
「ん?どうしたの?なんでそんなところで縛られてんの?」
「あなたのお仲間に縛られたんですけども!?見捨てないでくださいよ。こんなところに一人で放置されたら無事に動物たちの餌になっちゃうよ!」
「その考えはなかった。」
「確かに、なかなか素晴らしい着眼点をお持ちですね。この盗賊。」
「へへっ。ありがとよ。」
「よしっ!行くか!」
「いや、最初に戻るなや!!!連れてってって!確かに悪い人だけど見捨てないでくださいィィィィ。ほんの出来心だったんですぅぅう。」
うおっめっちゃ泣いてる。なんて躊躇のない号泣なんだ。可哀想に。いったい誰がこんなことを・・・ハッ!
「鬼!悪魔!ケモ耳美少女!」
「まさか私より血の通ってない人間がいるだなんて・・・世も末期ですね。」
「あれぇ!?すっごい不当な評価なんですけど!もおっ!連れて行きたいなら自分たちで連れて行けばいいじゃないかっ!」
なるほど・・・確かに。担いでいくか・・・。
「じゃあ俺が担いでってやるから!ノルマンディー号にでも乗っかった気持ちで安らいでてくれ!」
「おおっ、アンちゃん見捨てないでいてくれるのかっ!ありがてぇ・・・。なんていい人なんだ。渡る世間にもアンちゃんのような聖人がいるんだなぁ。」
へへっ何を泣いてるんだよ。みずくせぇじゃねぇかまったく。
(ノルマントン号って沈む上に見捨てるやつじゃないですかって言うのは野暮ってやつなんですかねこれ)
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コヒューコヒューコヒュー
「シ、シンジャウ。胃がもう半分位口から出てるニョォォォ。」
「どれだけスタミナないんだい・・・。わざわざ担がなくたって引きずっていけばいいじゃないか。」
「エッ、ちょっまっ」
「確かに。」
「いや確かにじゃっなっ」
「完璧な作戦です。さすが私が見込んだ天才ですね。異世界にもアインシュタインはいたんですね。」
「よく分からないけど、ありがと。」
コイツッ!戦いの中で成長している!この短期間で俺たちの扱いをここまで慣れてくるとは末恐ろしい子だよぉ全く。将来が楽しみだねぇイッヒッヒッヒ。
ズリズリズリズリ
「あぶぶっべっべばあぁぁチョッっ」
なんか変な音がしたな。気のせいか。
「いやちょっっベベベッベベビビビビブッッ止まっっ」
「うわあぁぁ!どうしたぁぁ!そんなになって!!!誰にやられたァァ!」
「お前だよぉ!!!引きずったらそうなるに決まってんだろ!どうすんだよこれ!頭頂部だけ綺麗に髪の毛が消えたよ!逆モヒカンだよ!」
「なかなか先鋭的なファッションだね。」
ズリズリズリズリ
「ぶぶぶっぶっぶべっべ狂っとんのかあああっ!」
「えっ?」
「今の流れでなんでもっかい歩き出すんだよ!せめて躊躇ってくれよ!」
「いやだって、もう担ぐの無理だし・・・。既にさっきまで載せてた肩外れてプラプラしてるし。」
「うおっ!気持ち悪!どうりで利き腕で引きずらないなと思ったら!でもそこまでして俺を見捨てずに連れてってくれるなんて・・・。グスッ俺は感動したぜ。」
「いい話ですね。」
「僕が言うのもなんだけど狂ってんなこの世界。」
ズリズリズリズリ
「おっ、なんか見えてきたな。」
「あれが僕の拠点としてる街!ファウストだよ!」
「なかなか長い道のりでしたねアニキ」
「嫌なんでそんな引きずられながら喋れるのさ君、というか兄貴って何さ。」
「もうこの体制もなれましたぜ!そしてアニキとは尊敬する男を呼ぶときの最高の敬称ですぜ。アニキ以上にアニキが似合う男もそういませんぜ。」
「あー。そうだね。ははははは。」
おお、獣人ちゃんの目が綺麗に灰色に染まっていく。一体どうしたんだって言うんだ。
しかしここからとうとう始まるぞ!街についたってことはRPGならまさにゲームスタートってことさ!俺たちの冒険はこれからだ!
(このテンプレは既に一度やりましたね。)
2日目ェ!