10日目 葉っぱ一枚あればいい
カランカラ〜ン
「いらっしゃーってうわぁっ///なんて格好してるんだよぉ!」
お、意外とうぶな反応。ええでないのグヘヘヘおじさんのおじさんも喜んでおるわ。
・・・なるほど。
「ちょっ!ちょっとぉ!せめて何か着てから・・・なになになに!?なんで近づいてくるんだい!?」
良いではないか〜良いではないか〜
「無言で近づいてこないでよぉぉ・・・ちょっほんとに!もぉっ!いい加減にしろぉっ!」
「ぐっぐぼうぁぁあぁっっっ!」
な、なんて正確無比なボディブロー・・・
「いいボクサーにな、なるんだぞ・・・ガクリ」
「うおおおおおお、アニキぃィィィィ!」
「燃え尽きましたね、真っ白に。」
「えっ何この感じ。早く服を着て欲しいんだけど。」
「アネゴ!アニキの思いはアネゴのその右拳に受け継がれました!兄貴の彼岸だったテッペン・・・とってくだせぇ!」
「嫌だからなんのテッペン!?そんなことより君たちのそのテッペン隠してもらえるかな!?」
「実は先程までスライム討伐のクエストに行っておりまして・・・。」
「あーハイハイなんでそんな格好で来たのかわかったよ・・・。あの誰もあえてやらなかったあのクエストね。」
「いったいなんで誰もやらなかったんスカね?」
「鏡を見たらわかると思うよ・・・。ハァ・・・ちょっと待ってね。」
お、この服はまさか・・・ライネのお古・・・?
「これいくら払えばいい?」
「急に律儀にならないでいいからさっさと着て!もう・・・。」
ム、無料!場所が場所なら一生働いても返せない程の金額を請求されていただろうに・・・なんてやさしい子なんだ・・・。俺・・・いまライネをまとっているよ・・・。
「いやー助かった。このままじゃ街行く人を悩殺してセクシーテロリストとして歴史に名を刻むところだった。」
「別の意味で脳が死にそうだよ僕は。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
このテンプレは身に覚えがある・・・目があったら・・・
「え、なんだい急に黙り込んで。」
「行けっ!わらび餅!君に決めたっ!」
「わぁっ!何さ急にませきなんてとりだしt」
「ゴボゴボゴボゴボゴボ。」
「ちょっ!何やってるんだよぉ!ってうわぁっっ///ちょっまえ!隠して隠して!!!」
「なんだかこうやってみると研究室で培養されてるやばいモンスターみたいですよマスター。」
「もはや神々しさすら感じるっす。」
「ゴボゴボゴボッ!ゴボゴボゴッッッ!なんでこっちに来るんだァァァァ!」
なぜだ・・・なぜなんだ・・・。目の前に服を溶かすべき対象がいただろう・・・。なんで俺のを溶かすだけ溶かして水に戻っちゃうんだ・・・。
「もうっ!次からお金とるからね!」
「ゲフッ、あり、ありがとう・・・。」
なんたる恥ずかしめ!自らが服を脱がそうとした対象から服を貰うなんて・・・こんな辱めを受けるのは初めてだわ。
あのスライムめ・・・ちょっぴりのんじゃったじゃないのぉ。・・・ちょっと美味しかった・・・。
「っていうか、スライムの召喚なんてどうしたのさ?スキルは失ったんじゃ?」
「えーっと・・・。」
「先ほど新たに獲得しました。マスターはスキルも全て失っておりこの歳で珍しくスキル不所得者なので獲得がかなり容易になっているのです。」
「へー、確かに子供の頃ってガンガンスキル取れたもんなー。なかなか便利なスキルでいいじゃないか。」
なるほど便利と、つまり露出願望があるということか・・・。常識人ぶりおってこやつめ・・・。
「性癖は人それぞれだからいいとおもうよ。」
「さっきまでほぼ全裸で街を練り歩いてた人に言われたくないなぁ!?そんな生ぬるい視線向けられるいわれはないよまったく。そいつじゃなくて普通のスライムのことさ。」
「普通のスライム?」
「多分あれっスよアニキ。脱ぐより脱がせたいってことっすよ。」
「ああ~。」
「ああ~じゃないよ!なんで君は冒険者やってるのに知らないのさ!スライムは水分補給にめちゃくちゃ役に立つんだよ。」
「あのヌル付いた液体を食うのか・・・なかなか卑猥だな。」
「卑猥なのは君の頭だよ!きれいな水となって消えるスライムとか、それに汚れだけを食べる性質を持つスライムとかだっているから冒険しながらお風呂に入れたりで便利なんだからね!」
えっ何それ超便利じゃん。スライム浴とはなかなか・・・そそる。
(皮脂を食べられる感覚はなかなかに快感らしいですよ。体の毛穴まできれいに洗浄される感覚はなかなかヤミツキだとか・・・)
「まぁと言っても結構レアなんだけどね。えーっとちょっとまってね。ほら!この魔石がそうだよ。」
ほえ~綺麗な色だなぁ。透き通った水色に鉱石みたいなこの見た目。これだけでなかなかそそるものがある・・・なんで俺のはこんな公衆便所の水みたいな濁り方してんだ?
「あ!そうだそうだ!そういえばなんだけどそのアーティファクトのコピーってどれぐらいかかりそうなんだい?聞いてなかったからさ。」
そういえばそんな話あったな。やけにあっさり帰るなと思ったら時間がかかるって踏んでたわけだ。実際どうなんやろか、このハンターズカードみたいにスグできないのかな。
「んーとそうですねー。出来るには出来るんですけどまだ制限が掛かっておりまして・・・。」
「というと?」
「私の性能はマスターに依存しておりマスターの成長とともに機能の改善、制限の解除がなされていきます。つまり・・・」
「つまり・・・?」
「仕様上の関係で現在の段階で作成すると・・・そうですね、一日に一度だけ私が君が代を歌ってくれます。」
「うわっ使えな。」
何その能力、小学校の校長先生でももうちょっと高機能だぞ。あいつらはなんと週に一回だけ誰も聞いてない話を長々続けるという高機能まで付いているからな。
「失礼ですね!これでもかなり頑張ってるんですからね!マスターのせいでもあるんですからさっさと強くなってください!」
「そうだよっ!」
うわっ!急に顔近づけてくるやん!なんや!俺のこと好きなんか!目をつぶったほうがいい感じですか!
「いやそんなキス待ちされてもしないからね!猫はせっかちなんだから早く頑張ってレベルを上げてよ!」
ふぇぇ・・・みんなが僕をいじめるおぉぉ。すもすもぉぉただのいち男子高校生だった僕がぁ冒険者として強くなるなんてぇそんなすぐにはぁ無理だと思うんですよぉぉ!
(うわ、うざ。いい年してなにいってんですかまったく。)
はい傷つきましたーもお僕ここから一歩も動けませんー。誰かが慰めて頭よしよししてくれるまで無理そうだなー立ち直れないなーこれはチラッチラッ。
・・・っは!この優しい手つき・・・穏やかな手のひら・・・包み込むようなあったかさ・・・ライネチャン!!!
「いい子いい子っすよぉ~アニキ~。」
「くっ!なんでお前なんだ!ライネは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!その機会を奪うだなんて貴様!」
「す、すみませんっス兄貴!オレッチごときではアニキのその深いお考えを理解しきれず・・・クッこんな腕!」
「いいんだフーリル・・・。お前の気持ち・・・確かに嬉しかったよ・・・。俺が悪かった・・・だからもう一度俺の頭を撫でてくれ・・・!」
「アニキぃ!」
「フーリル!」
あぁ・・・あったかい・・・俺は思えばずっとこんな時間を求めていたような気さえするよ・・・。
ああ、フーリル・・・私はお前にバブみを感じている・・・。
「うわぁ何あのむさくるしい空間。絶対近づきたくない。」
「まさかAIのみでありながら地獄を味わえるなんて貴重な体験ですね。」
「ほら、用事が済んだならさっさと出てってよ!クエスト達成報告だってまだなんでしょ?いったいった!」
「そうか・・・達成報告とかあるのか。俺たちが出てっても寂しくて泣くんじゃないぞ!」
「泣かないよ!まったくもう!そんなことよりも早く強くなってよね!僕が困るんだから!」
そうだよな・・・俺が危険な目に合ってると考えるとライネチャンは気が気でないもんな。ヘヘッ、俺も愛する女のために頑張ってみるかな。そうと決まれば早速出発。
クエストは達成報告するまでがクエストです。
それではクエスト達成報告いってみよー!
一瞬タイトルが迷子になった気がしましたが常に迷子みたいなもんなんで実質ノーカンです