夢世界から現世界へ
夢世界から現世界へ
鬱蒼うっそうとした深緑の里。
木人の森の中央にある円い空き地に佇たたずむ三人。
木人たちの長老と梟フクロウの貴婦人、そしてボク。
長老は手に持っている杖で東の方を指した。
『あそこに見える山々の頂きにクリスタル.ダイヤ姫がおる。』
『梟の貴婦人よ、この子を連れて今一度、頼む』
『ダイヤ姫を、この里へ呼び寄せてはくれぬか。』
『わしら、木人の足では到底、あの険しい山の頂きにはたどり着けぬ。』
梟の貴婦人は長老に会釈をして依頼を承諾した。
『ダイヤ姫とて、この夢世界の住人なのですから無下に断ることもないと思います。』
そう言うと梟の貴婦人はボクの手を取り空へと舞い上がった。
まるで風に運ばれらるように東の山の頂上を目指す。
やがて雲とも霧ともとれるような白い世界の中へと入って行く。
前が見えない……
時おり吹く風で体のバランスを崩した。
一瞬、ボクの手が梟の貴婦人から離れた。
ボクの体は浮力を失い白い霧の世界へ落ちて行く。
必死に手を伸ばす梟の貴婦人。
しかし及ばず彼女の姿は白い雲の中へと消えて行く。
『エメラルド王子!!』
『おうじーーーー!!』
……………………………………
チチチチチ……
チチチチチ……
小鳥たちの鳴き声。
子供部屋の小窓から朝日が差し込んでいる。
寝ぼけまなこのボク。
ふと、傍らをみると母が優しい笑顔でボクを起こしてくれた。
『王子、おはよう。』
『さぁ、朝の食事にしましょう。』
あれは、夢だったんだ……ボクは母の顔を見てそう思った。